映画監督・山本政志が主催する映画塾「シネマ☆インパクト」の特集上映『13監督 全15作品 シネマ☆インパクト 再起動記念上映』が、3月5日から東京・新宿のK's cinemaで開催される。
2012年と2013年に実施されたシネマ☆インパクトは、一般から募集したスタッフと出演者が、映画監督と共に実践的に映画作りを学んでいくプロジェクト。同プロジェクトではこれまで、山下敦弘、瀬々敬久、熊切和嘉、橋口亮輔、大根仁、ヤン・イクチュンら13人が監督を務めた15作品が制作されている。
『13監督 全15作品 シネマ☆インパクト 再起動記念上映』は、シネマ☆インパクトの再始動を記念して開催。これまでに同プロジェクトで制作された、大根仁監督作品『恋の渦』や、山本政志監督作品の『水の声を聞く』など15作品を、AからHのプログラムに分けて上映する。
なお、3月22日からスタートする「シネマ☆インパクト2016」では、『症例X』『トーキョービッチ,アイラブユー』の吉田光希、『青春墓場』シリーズや『東京プレイボーイクラブ』の奥田庸介が「映画制作コース」の講師を担当。「ワークショップコース」の講師は、石井裕也、真利子哲也、冨永昌敬、山本政志、武正晴の5人が務める。同プロジェクトの参加方法は、オフィシャルサイトをチェックしよう。
■瀬々敬久監督のコメント
始まりは、詩を書き、その朗読で競い合う「詩のボクシング」。映画のヘソも彼らの声である、その詩。制作受講者はそこから脚本を書く。すべてが化学反応の場所。今、ここで起こることだけで映画を作る。疲れは尋常でなかった。なにせ皆、こちらのパワーを吸い取ろうと野心満々なのだ。それでいて良いのは各人バラバラなこと。てんでバラバラでまだ何者でもないデタラメな集団で生み出した映画、冗談でなく少し誇りに思っている。
■山下敦弘監督のコメント
限られた時間の中、集ったメンバーの能力を出し切り“新宿”という街でなんとか映画にしてみた。というのが自分の実感です。観る人によって“映画のようなもの”として映るかもしれません。が、そのグレーゾーンこそが自分の最大の武器なのだと思っています。ひとつよろしくお願いいたします。
■熊切和嘉監督のコメント
せっかくこういう機会なので、型にはまらない、むきだしの俳優と出会えたらいいなと思っていました。そしたらいたんです、凄いのが。彼女をいかに追いこみ、ぶっ壊し、どれだけ本当の感情を引き出すことが出来るか?――それだけを考えて一本の映画を作ってみました。撮ってて泣けたのは久しぶりです。
■松江哲明監督のコメント
初回の自己紹介から異様な雰囲気だった。「自己開発セミナーかよ」ってくらいに皆が自分をさらけ出して来た。困った。ふわっとした青春ドキュメンタリーを撮るつもりだったのに。こりゃいかん、予定変更。結果フィクションとはいえ極私的な内容となり身も心もボロボロな二週間だった。ただ受講生の「映画やってみよっかなー」なんて幻想はぶち壊せたと思う。で、作品は僕の中で最もへたっぴなモノになった。それが嬉しい。
■鈴木卓爾監督のコメント
今回の企画を受けた時、「よし群像劇だ」と思った。制作者側が一切キャストを選ず、自発的に参加した全13人の俳優と7人の制作志望者と共に、脚本もなく手探りで映画は作られた。物語の人物達が住む架空の町の名前を「ポッポー町」と名付けた。ポッポー町は日本中どこにでもあるような町で、この町の時間軸は2011年3月11日から一年後の未来だ。これは現実の撮影日でもあった。現実の響きを映像と音響に記録しつつ、どこまで我々のフィクションとグルーブが持ち堪え、ファンキーに弾めるか?が試された。
■ヤン・イクチュン監督のコメント
『しば田とながお』は誰でもが生きていく間に経験できる、日常の小さい物語です。もしかして、あまりにも日常の一断面だけが映画を通して観えるのではないかと気にもなりますが、その小さい断面が一つ一つが繋がってまた大きい一つの全体の人生に帰結されるはずなので、それらを生の大切な一部分として思いたいです。皆さんの人生の中の記憶の断面とこの物語がどのように繋がるのか気になりますね。
■深作健太監督のコメント
参加した受講生達の笑顔と心意気に打たれた。いま邦画ブームを支えるのはTV局主導の作品ばかり。本当の映画人が消えかけている今、日本映画に新しいムーヴメントを作るのは、自ら現場に飛び込み、表現する、体験参加型の映画なんじゃないだろうか。シネマインパクトに「希望」が見えるのは、そこに集まる受講生の真摯な明るさにある。これからも傑作と、素敵な笑顔が生まれ続ける事を切に求めてやまない。
■大森立嗣監督のコメント
放射能が地上に降り注いで故郷を奪った。映画からはフィルムがなくなろうとしている。そんな瓦解しそうな世の中に、ほぼ発狂した‘シネマインパクト’が忽然と現れ、僕は映画を作った。誰にも望まれてない映画を作る覚悟を自分自身に、そして参加者に問いました。無力な自分への怒り、壊れかけの社会へ抗い、傷つき、ひねくれ、憎しみ、それでも笑い、もう一度立ち上がる覚悟です。僕は暴動の映画を作りました。シネマインパクトは映画の暴動になればいい。
■廣木隆一監督のコメント
全員が出るアルトマンのような映画にしたかった。全員を福島に連れて行きたかった。津波から3年目のいわきを見せたかった。皆がどう感じ、演じるか見たかった。役者と言うよりも一個人的な人間として感じて欲しかった。そして、自分もどう感じるか、撮影して見たかった。彼らの中に俺の中に吹き付けるような冬の風と雪と海と雨と夕陽に試されてるような不思議な感覚と静かな感動があるはずだと信じたい。
■橋口亮輔監督のコメント
崖っぷちの人々の怒涛の群像コメディ!撮影現場も怒涛のごとく、スタッフ、出演者、必死になって撮り上げた!
■いまおかしんじ監督のコメント
何やっていいか分からず、まず“ねるとん”やって、カップル作って、エチュードやって、芝居見て、そうやってる内に、何となく“セックスしたいけどなかなかできない人たち”の話をやったらいいんじゃないかと思って、一日でシナリオ書いて、その場しのぎで撮影しました。歩道橋でセックスするシーンを撮影してたら警察が来て、ビックリした。公然ワイセツだと。うるせえ!バカ!
■大根仁監督のコメント
「現場は地獄になる。だが地獄からしか作品は生まれない」久々にこの言葉を思い出しました。初めての自主映画、2時間20分を4日で撮影、限りなく0に近い制作費、撮影前日に役者が逃亡、山本プロデューサーの恫喝…だがしかし、間違いなく面白い作品ができました。ご期待下さい。
■山本政志監督のコメント
『アルクニ物語』について
他の全作品で、いずれも偶然か必然か「地震」が直接的、間接的に描かれていた。そこで、俺も入り口は「地震」らしきものにしてみよう、と思った。さらに、低予算の王道“密室モノ”で、閉塞状態の“今”を寓話的に捉えてみる。出演者は、すでに他の監督コースでワークショップを経験済みなので、省略し、いきなり撮影に入った。怒涛の無理難題を克服し、超絶現場を乗り切った演技+制作コースの面々のエネルギー。それは、確実に作品に練りこまれた。シネマ☆インパクト、かなりイイ。
『タコスな夜』について
前回『アルクニ物語』は、話を作り込む方向性だったので、今回はいい意味で緩くて軽く、作りこみ過ぎないものをやってみようと思った。作品の冒頭とラストだけを決めて、中間は、受講生から演じたいキャラクターを募り、その役柄を採用し演じてもらったりしながら構成していった。新宿らしい、グワッチャァ~感が出せたはず。