2014年、ダニエル・リカルドはF1の新たなヒーローとしてシーズンを終え、英国オートスポーツからドライバー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。しかし昨シーズンはレッドブルに加入したばかりのチームメイト、ダニール・クビアトを下回る結果となった。
予選順位では12勝7敗とリカルドに軍配が上がったものの、2年前に4度のチャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテルを押し出す形となった彼だが、2016年シーズンに向けて復調が必要とされる。
クビアトの強さについてリカルドは「彼には間違いなく天性のスピードがある」と評価する。
「僕はいつも高速コーナーを楽しんでいるし、肝っ玉には自信がある。でも彼はスピードで言えばかなり近いところにいる。双方とも調子がいいときには、僕の方が上だと思いたいね。けれども僕が高速コーナーで上回ると、彼もかなり拮抗してくる。僕に対抗してくるんだ。予選では多くの場合、僕は少しだけタイムを縮めることができる。だけど彼はフリー走行を通して、ためらうことなくスピードを上げていったから簡単ではなかった。けれど僕は常に自分が好調だと感じていたし、速く走るために必要なことはすべてやってきた」
2015年シーズンでは、どちらのドライバーも士気を下げたことがあった。クビアトは序盤、自らの地位を確立できずに苦悩し、チームのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコから批判を受ける。リカルドはフラストレーションが走りに影響し、前年は優勝を果たしたカナダGPではポイント獲得すらままならなかった。
リカルドは、当時のレッドブルが抱えていた問題を考えれば、クビアトがシーズン序盤につまづきを見せたことに驚きはなかったという。
「彼は、僕以降にデビューした若い世代の典型的な特徴を持っていたんだ。彼やカルロス(サインツJr)たちが当てはまる。彼らはいつも全力で、とても感性が鋭い。最初の何戦かは少し興奮しすぎていた。予選にしても何にしても、ミスが多かった。僕は結果を期待しすぎ、彼はマシンの力を過信しすぎていた。彼にとっては厳しいシーズンになりそうだと思っていたけれど、そこから好転してみせた」
レッドブル加入のチャンスを得るために、リカルドは2シーズンに渡るジャン・エリック・ベルニュとの対決に勝つ必要があり、それは現在のクビアトとの戦いに似たところがあると語る。
「JEV(ベルニュ)はいつも僕に対抗していたけれど、調子が良ければ負けることはないと感じていた。ただ、いつでも絶対に好調でいなければならなかった」
クビアトは、リカルドが当初優勢だったのはチームとの親密さによるところが大きかったと考えている。ロシア出身のクビアトは「チームと長い時間を過ごしている分、シーズン序盤は彼の方がチームのことをよく知っていた」と英国オートスポーツに語っている。
「彼の周囲にはたくさんの人がいて、それが助けとなって僕より優位に立っていた。中盤からは状況が変わり、彼は少し難しいシチュエーションに置かれることになった」
しかしクビアトは、リカルドと競うには相当な力を付ける必要があったことを認め、こう話す。
「彼のようなドライバーに対抗していると、新たな限界を発見し、より熱心に仕事をするようになり、そしていくつかのことを学ぶことになる」
これから迎えるシーズンはレッドブルにとっては過渡期となる。不本意ながらもルノーとの関係を継続すること、不確かな昨シーズンを過ごしたことが、必然的に状況を不利に導いてしまった。
新たなパワーユニット提供元を探し求めたレッドブルは一見冷酷にも見えたが、そこには競争力のためには捨て身になるという姿勢が見られた。彼らならば、すぐにでも前列のポジションに戻る確実な方法を探し出すだろう。
また他チームからの接触を避けるためにも、現在トロ・ロッソに所属するマックス・フェルスタッペンが、シニアチームであるレッドブルに昇格するのも時間の問題だ。まだ十代のフェルスタッペンのレッドブル加入が迫っていることで、リカルドとクビアトの状況はさらに切迫しているが、二人の関係は友好的であるとクビアトは言う。
「ヘルメットを脱いでいるときはいい関係にあるし、僕らの周囲やチームには明るい雰囲気がある。こういうときにこそ、それがとても大切なんだ。それでも僕らは非常にコンペティティブで、コース上ではお互いに、できるだけ相手を苦しめようとしている」
リカルドもクビアトの意見に同意しており、チームメイトへの敬意を示しているが、クビアトにはまだ証明すべき要素があると語る。
「潜在的なスピードはあると思う。あとは成熟度やレースでの技術など、次の段階で必要な要素を持っているかどうかだ」