2016年02月08日 11:21 弁護士ドットコム
児童ポルノの DVDや動画を所持、販売していた人が逮捕されるというニュースが相次いで報道されています。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、「児童ポルノのDVDを持っていることが妻にバレた」という男性から相談が寄せられました。男性は妻の連れ子(女児)と暮らしているそうですが、妻から「娘にも手を出す気でしょ!」と言われ、離婚を切り出されたそうです。ただ、男性は離婚する意思はありません。
そもそも所持自体が犯罪なので、男性が対応するべきは妻への説得だけではないような気もしますが・・・。児童ポルノを所持していることを理由に、離婚できるのでしょうか。山口政貴弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 離婚理由になりうる。まずは破棄し、妻に誠意を示すべき
ご相談のケースで離婚が認められるかどうかは、児童ポルノ趣味が、民法で規定されている「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかが問題となります。裁判例が蓄積されていないので断定はできませんが、夫に児童ポルノ趣味があることは、「重大な事由」と判断され、離婚が認められる可能性が高いと思います。
児童ポルノについては今まで、業者等が児童ポルノを販売した場合などが処罰の対象でした。しかし、2015年7月以降、法改正によって、個人が自己の性的好奇心を満たす目的で写真やDVD、データを「所持」している場合も違法となったのです。ご相談者が、児童ポルノのDVDや画像を破棄せず所持しつづけて、警察に摘発されれば「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科せられる可能性があります。
児童ポルノ趣味は犯罪にもなりうる行為です。夫にそんな趣味があることを知った妻はショックだったでしょうし、ましてや娘さんがいるとなれば、「娘にも性的な関心を抱いているかもしれない」と心配するのは親として当然かもしれません。
仮に、ご相談者の妻が夫への嫌悪感のあまり、「性交渉に一切応じられなくなった」「顔を見るだけで吐き気がして、同じ家で暮らしていること自体が苦痛」というような状態になれば、婚姻関係が破たんしているとして、離婚が認められる可能性があります。
セックスレスや配偶者の性癖など、夫婦間の性的趣向が原因で離婚が争われるケースは多く、裁判に発展することも珍しくありません。とはいえ、性的趣向は人ぞれぞれで、他人が強制できるものではありません。「配偶者と性的趣向が合わない」という理由だけでは、離婚は難しいでしょう。
過去には「結婚後、夫がポルノ雑誌に異常な関心を示しはじめ、そうした雑誌を買いあさっては部屋で自慰行為にふけるようになり、妻との性交渉を拒否した」というケースでは「婚姻を継続し難い重大な事由」と判断され、離婚が認められました。(1985年9月・浦和地裁)
ご相談者がまずすべきことは、持っている児童ポルノの破棄です。DVDは物理的に破壊してゴミに出し、パソコン内の画像データは「ゴミ箱」に入れて消去しましょう。摘発の恐れはかなり低くなりますし、妻にも「趣味から足を洗った」という誠意を示せるのではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
山口 政貴(やまぐち・のりたか)弁護士
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。
事務所名:神楽坂中央法律事務所
事務所URL:http://www.kclaw.jp/