メルセデスAMGのエンジン部門のマネジングディレクターであるアンディ・コーウェルは、過去のV8あるいはV10時代よりも現在のパワーユニット規則の方が、自動車メーカーにとってははるかにF1に参戦しやすいと語った。
2014年にF1に1.6リッターV6ターボハイブリッドシステムが導入され、それ以来メルセデスは圧倒的優位に立っている。新エンジン規則の下で新たに参戦したエンジンマニュファクチャラーは今のところホンダのみで、開発を厳しく制限する規則も影響し、初年度の2015年は信頼性とパフォーマンスの両面で苦戦した。
しかしホンダ、そして同じく苦労しているルノーは今後大きな進歩を果たすと予想しているコーウェルは、昔と比べると現在のエンジンレギュレーションの方が自動車メーカーがF1に参戦しやすいのは間違いないと断言した。
「V10やV8はかなり特殊だった。自然吸気で20,000rpmや19,000rpmの高回転というのは、F1独特のもので、他のモータースポーツカテゴリーでももちろん市販車でも使用されていない技術だった」とコーウェルが語ったとCrash.netが伝えた。
「(今は親会社の)ダイムラーから学ぶことができる。(V6ターボの開発を始めたころ)ダイムラーと技術に関する関係を立ち上げたが、そのコミュニケーションは今も存在し、双方向の意見交換が行われている」
「技術を採用し、技術をフィードバックする。それがうまく機能している限り、今の規則のF1はワークスマニュファクチャラーによって興味深いものであるはずだし、自動車メーカーの参入を促すと思う」
「彼らは参戦を考えるだけでなく、勝つのに何が必要かと考えることだろう。だが(今のエンジンには)“アンオブタニウム”(非常に希少な素材)は使用されていない。火星に行くような苦労をする必要はないのだ」
「鋼鉄は航空宇宙の分野や市販車に使用されているものだ。アルミニウムも同様だ。締め具も特別なものではない。形状は進化しているものの、誰もが作ることが可能なものだ。魔法の磁石など全く使われておらず、Wikipediaやマニュファクチャラーが提供する情報で知ることができるようなものばかりだ」
「すべてが実行可能だ。実現するには適切な野心と姿勢を持ったスタッフが必要であり、4機か5機のダイナモ、適切なサプライヤーとのコネクションも必要だ。だが不可能ではない。V8やV10時代に比べれば容易だ」
「2000年にはレギュレーションは1ページに収まっていた。今は18ページにわたり、細かく規定されている。20年前はボアをどうすべきか、シリンダーをいくつにすべきか、決断するのに時間を要した。だが今はレギュレーションで決められている」
「従って今の方が(自動車メーカーがエンジンマニュファクチャラーとしてF1に新たに参戦するのが)容易だと思うし、そうなることを願っている」
FIAとF1パワーユニットマニュファクチャラーは、パワーユニットのコストと供給の問題への対策法に関して合意に達し、これにより現在の1.6リッターV6ターボハイブリッドシステムを少なくとも2020年までは継続することが保証されたといわれている。
またF1は2017年に現在のエンジン開発トークンシステムを廃止する見込みだ。これが実現すればエンジンマニュファクチャラーに開発の自由が与えられるため、より一層自動車メーカーがF1への新規参入を検討しやすくなるものと考えられる。