2016年02月07日 16:01 リアルサウンド
参考:2016年01月25日~2016年01月31日のCDシングル週間ランキング(2016年02月08日付)
2016年の始まりは、とかく芸能スキャンダルのニュースが過熱気味に吹き荒れた1カ月だった。
こういった報道と実際のチャートアクションが結びつくことはなかなかないのだが、今回印象的だったのは、SMAPの解散危機の報道を機にファンの間でシングル『世界に一つだけの花』の購買運動が広がったこと。結果、同作はオリコンの1月22日付シングルデイリーチャートで1位を記録し、2月1日付週間ランキングでも週間4万7千枚を売り上げて3位にランクイン。12年ぶりのオリコンTOP3入りを記録した。そして今週も8位となり、異例の2週連続TOP10入りとなっている。
おそらく、今回このシングルを買ったSMAPファンのうち、すでにCDを持っている人はかなりの数を占めるだろう。収録アルバム『SMAP 015/Drink! Smap!』やベスト盤『SMAP AID』も含めるならば、「世界に一つだけの花」という楽曲自体を所有している人はその大半と言っていいのではないだろうか。つまり、そう考えるならば、今回、数万枚規模のCDが純粋なる「意思表示」として買われたことになる。
そのこと自体をどうこう言うつもりはないが、ヒットチャートを分析してきた身からすると「ついにここまで来たか」という感慨はある。
特にここ数年、音楽チャートを巡っては、特典商法や複数枚購入に関する話題がネガティブな角度から取り沙汰されることが多かった。ゴールデンボンバーがシングル「ローラの傷だらけ」であえて特典なしのCDを発売し話題を呼んだこともあった。
その時に鬼龍院翔が意図したのは、「果たしてファンは本当に“音楽”を買っているのか?」という問題提起をすることだった。が、ここに至って、状況はさらにその先を行っている。グループの存続を願ったファンは、「解散を阻止しよう」と一致団結。オフィシャルな情報とは一切関係なく、SNSのタグを通じて自主的にポジティブな購買運動を盛り上げた。すなわち、彼らが買ったのは“音楽”でも“特典”でもなく、いわば“心意気”にお金を払ったわけである。
ダウンロードや定額制ストリーミング配信が普及した2016年、いろんな意味で、CDシングルチャートの意味がさらに変わりつつあることを痛感する。
というわけで、今週のシングルランキング。1位にGLAY、2位にGENERATIONS from EXILE TRIBE、3位にlolという結果となったのだが、実は1位となったGLAYのシングル『G4・IV』も、シングルというフォーマットに対しての問いかけを内包したものになっている。
本作は、GLAYのメンバー全員がそれぞれ書き下ろした新曲が収録される「G4」シリーズの第4弾。それぞれ大きなタイアップも獲得した「勝負曲」が4曲収録された、ミニアルバム的なボリューム感を持った一枚なのである。ミュージックビデオも4曲全てに作られている。
HISASHI(G)が作詞作曲を手がけた「彼女はゾンビ」は『王様のブランチ』エンディングテーマにも決まった軽快なデジタル・ロック。ポップなメロディとゾンビ映画のタイトルの数々を引用した歌詞が印象的だ。
そしてTAKURO(G)が作詞作曲を手がけた「Supernova Express 2016」は北海道新幹線開業イメージソング。情熱的なサウンドに乗せて〈Welcome Back To My Hometown〉と歌うこの曲は、函館出身の彼らが故郷である北海道への愛を込めたナンバーだ。
テレビアニメ『ダイヤのA -SECOND SEASON-』のオープニングテーマとして書き下ろされた「空が青空であるために」は、TERU(Vo)が作詞作曲。野球をモチーフに『ダイヤのA』の世界観に沿って作られた熱い一曲。
そしてJIRO(B)が作曲を、TAKUROが作詞を担当した「Scoop」は、直情型のパンキッシュなナンバーだ。こちらはテレビ朝日系『お願い!ランキング』エンディングテーマソングとなっている。
というわけで、メンバーそれぞれの個性が発揮された4曲入りのシングルは、カップリングという概念のない作品。「収録曲が4曲以下ならシングル盤扱い」ということを逆手にとり、アルバムとしても聴けるような充実度を持った内容のものをシングルの価格で発売しようという作品になっているわけだ。
ちなみに『G4・IV』というタイトルの通り、「G4」シリーズはこれで4作目。2006年にリリースされた『G4』は当時続けていた週間チャート連続1位記録が途切れるきっかけになってしまったのだが、今回の『G4・IV』では2008年の『VERB』以来7年8カ月ぶりとなる1位も獲得した。
4人それぞれがクリエイティブを手掛けることに加え、10年前からシングルというフォーマットの変化を見据えた手を打っていた先見性も、GLAYの衰えない人気の理由の一つと言えるだろう。(柴 那典)