大量の食品が廃棄される裏で、「カレーハウスCoCo壱番屋」が廃棄したはずの冷凍カツが横流しされた。先月13日に行われた立ち入り調査では、名だたる食品メーカーの味噌や惣菜など108品目もの廃棄食品の横流しが明らかになっている。
うち78品目は「どこから流れて来たかすら不明」だというから驚きだ。2月2日放送の「クローズアップ現代」(NHK総合)では、チェック制度の甘さにつけこまれた廃棄物処理制度の実態を取材していた。
冷凍カツは「相場の半額」で廃棄処理を依頼されていた
食品卸の「みのりフーズ」(岐阜・羽島)が廃棄食品に手を出したのは4年前。廃棄物処理業者「ダイコー」(愛知・稲沢)から原発事故の風評被害で売れ残った大量のじゃこを、弁当店などに売りさばいたのがきっかけだったという。
壱番屋のビーフカツも、そのひとつ。ダイコーは15年前から、壱番屋から廃棄物処理を請け負っており、ここ2年で60万枚のカツの廃棄処理を委託されている。ビーフカツは主に弁当店へ格安で販売され、仕入れ価格を抑えたい店側は迷わず購入したという。
なぜ不正を防ぐことができなかったのか。そこには、廃棄物処理の監視の仕組みが機能していない現実があった。国は不適切な廃棄処理を防ぐため、種類や数量、運搬・処分業者などを記した帳票を添える「マニフェスト制度」を定めている。廃棄物を処理する業者は、これに処理内容を記載し、排出事業者(ここで言えば壱番屋)に報告しなければならない。
しかしウェブ上の電子マニフェストには「堆肥として処理した」とあり、壱番屋はその嘘を見抜けなかった。排出事業者には廃棄処理の現場を確認する義務があるが、壱番屋は「これまで確認を行ってきたが問題は見つからなかった」としている。
愛知県も2014年に6回もダイコーに立ち入り調査を行ったが、不正は見抜けなかった。しかし消費者問題研究所代表の垣田達哉さんは、ダイコーが相場の半額で処理を請け負っていることから「処理能力がないことは分かったはず」と行政のチェックの甘さを指摘する。
「パッケージのまま渡した」壱番屋にも問題あり
行政側でも、廃棄物の処理をすべてチェックする体制にはなっていない。愛知県の担当者はおよそ50人。管轄するマニフェストは食品以外の廃棄物も含め、年間140万にものぼる。愛知県廃棄物監視指導室の新井室長は、硬い表情で内情を明かした。
「限られた人材で、効率的に廃棄物の適正処理の監視をしていますので、マニフェストのチェックばかりというのも難しい」
愛知県の廃棄物監視指導室では、机から胸元まであろうかというぶ厚いマニフェストを事務的にめくっていた。それでも、この帳票をすべてチェックすれば不正が見抜けるとは限らない。
番組では、手間がかかっても企業の信用を守るため、パッケージを外して厳重に分別・廃棄管理している鎌倉ハムなども紹介した。垣田さんは「本来は大企業ほど、こうした取り組みをしなくてはならない」と指摘した上で、壱番屋がパッケージのまま渡していたことを問題視。排出事業者側の廃棄や管理のずさんさを批判した。
「ゴミということと、食品ロスということは全く別ですので、廃棄をすると決まったときには分別するという形にしておかないと、商品なのかゴミなのか全く分からないということになります」
膨大な対策処理に追われる「働く人」が気になる
垣田さんは、こうした問題を防ぐには「元を断つ」ことが重要で、そのためには排出事業者の分別を義務化する法整備が必要だと強調。さらに「食品表示Gメン」のように全国にまたがって取り締まりできる組織の配備によって、もっと不正を見抜けることも指摘した。
「元を断つ」といえば気になるのは、まだ食べられる商品でも製造元や卸が大量に廃棄するのはなぜなのか。垣田さんは、日本の小売りが非常に強いことを挙げた。在庫を持たずに商品を切らせたくない小売店に対し、メーカー側は発注があればいつでも配達できる在庫を用意しなくてはならないため、どうしても余ってしまうのだ。
何かの不正が明るみに出るたびに管理体制の甘さが指摘され、企業や行政の現場で働く人が膨大な対策処理に追われることも気になった。作業に忙殺されて、本来のチェック機能を失う悪循環に陥っているのではと不安がよぎった。(ライター:okei)
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