2016年02月06日 20:01 リアルサウンド
女性アイドルをテーマとした連続ドラマ『武道館』が、いよいよ本日2月6日(土)夜11時40分よりフジテレビにて放送開始される(BSスカパー!版は2月10日(水)夜9時~)。直木賞作家・朝井リョウ作による小説のドラマ化で、劇中の架空アイドルグループ・NEXT YOUを、実在のアイドルグループであるJuice=Juiceが演じるという趣向。主題歌「Next is you!」はJuice=Juiceの5人がNEXT YOU名義で歌っていて、楽曲プロデュースをつんく♂が担当。劇中のNEXT YOUと実在のJuice=Juiceどちらも日本武道館でのワンマンライブを目標にしているなど、虚実ないまぜのコンテンツとして放送開始前からすでに話題を集めている。
本記事では、放送直前のこのタイミングで、知っておけばよりドラマを楽しめるであろう3つの切り口からドラマ『武道館』の魅力に迫ってみる。
■(1)メンバーの演技経験
ハロー!プロジェクト所属の5人組アイドルであるJuice=Juiceは、今月3日にちょうど結成3周年を迎え、活動4年目に入ったばかり。歌唱やダンスの実力主義で知られるハロプロの中でも、J=Jの評価は一際高い。
(彼女たちの3年間の活動軌跡については、筆者が先日リアルサウンドに寄稿した記事「Juice=Juice結成3周年を機に、彼女たちの36カ月を振り返る」にまとめてあります)
今回のドラマ主演より以前の、メンバーの演技経験はどれぐらいのものだろうか?
【宮本佳林】
メンバー5人のうち、芸能活動のキャリアが一番古いのは宮本佳林である。2008年11月、9歳でハロプロ研修生に加入(当時の名称はハロプロエッグ)。翌2009年6月には『おじぎでシェイプアップ!』で舞台初出演。以降、2010年からJuice=Juiceが結成された2013年にかけて、『かいぶつのこども』『三億円少女』『今がいつかになる前に』『リボーン ~命のオーディション~』『1974』『B・B ~bumpy buddy~』『シュガースポット』『もしも国民が首相を選んだら』といった舞台もしくはミュージカル作品計9作に出演している。
また、2010年6月には『星砂の島のちいさな天使 ~マーメイドスマイル~』で映画初出演も果たしている。研修生としてアイドル歌手を目指してのレッスンに励む傍ら、これだけの演技経験があるのは比較的多い方といっていいだろう。
【高木紗友希】
宮本に次いで演技経験が多いのは高木紗友希。彼女がハロプロ研修生に加入したのは2009年11月だが、その直前の8月には舞台『ココ・スマイル6 ~夏色のキャンバス~』に出演している。『ココ・スマイル』シリーズは小学生~高校生をキャストの中心に据えたファミリーミュージカル作品で、過去の出演者にはSKE48の佐藤すみれ、乃木坂46の生田絵梨花、そして同じハロプロのアンジュルムの田村芽実など、のちに有名になっていく女の子が多い。高木もそのひとりに数えられる。
研修生加入後の舞台出演は『今がいつかになる前に』『リボーン ~命のオーディション~』ぐらいだが、どちらもJ=J結成前に宮本と共演していたということになる。また、2010年10月公開の映画『ほんとうにあった怖い話 3D劇場版』は5本から構成されるオムニバス作で、そのなかの第3話「誰かいる」を、やはり当時ハロプロエッグだった佐藤綾乃(現在はアップアップガールズ(仮)のメンバー)と二人で主演を務めている。
さらに2010年12月には、小学生向け道徳ドラマ番組『時々迷々』(NHK Eテレ)の一エピソード「ウソ・ウソ・ウソ」に出演。ちなみにこの回の脚本は、ハロプロ演劇への参加も多い坪田文が担当している。
そしてハロプロファンにも馴染み深いのは、2012年1~3月に放送されていた深夜ドラマ『数学♥女子学園』(日本テレビ)だろう。このドラマはモーニング娘。の田中れいな&道重さゆみをメインキャストに、各回のゲストキャラをすべてハロプロメンバーで固めるという、ファンにとっては夢のように楽しい番組であった。高木は、れいな扮する主人公ニーナに憧れる3人組のひとり・舞浜はる役で出演(ちなみに他の二人は吉橋くるみ、田辺奈菜美)。宮本は、真野恵里菜演じる白金麗子の付き人である目黒ゆう役で出演した。
【植村あかり】
今月に入ってから『ヤングジャンプ』『ヤングガンガン』といった青年漫画誌の表紙を立て続けに飾り、その美少女ぶりが世間に見つかりつつある植村あかり。彼女の演技経験は、Juice=Juice結成直後の2013年4月の舞台『もしも国民が首相を選んだら』(宮本とペアで出演)、そして後述の『恋するハローキティ』ぐらいである。
【宮崎由加・金澤朋子】
Juice=Juice活動1年10ヵ月目の2014年11月、グループの初主演ミュージカル『恋するハローキティ』が上演された。ここまで見てきた3人以外のメンバー、宮崎由加と金澤朋子はこの舞台が演技初挑戦であった。特に金澤はカツラをかぶって男子高校生役を演じ、主役の宮本演じるキティと恋仲になるというストーリーだった。
このように各メンバーごとに演技経験に多少の差はあるが、連続テレビドラマの主演を務めるという点では、今回の『武道館』が5人とも初挑戦である。
(2)演じる役柄とメンバー本人のキャラの違い
Juice=Juiceの5人が演じることになる、虚構のアイドルグループ・NEXT YOU。すでに原作で設定された5人のキャラと、J=Jメンバー本人のキャラの差が楽しめるのも本作の見どころのひとつだろう。両者にはどのような差があるのだろうか?
【日高愛子=宮本佳林】
NEXT YOUの日高愛子はメンバー唯一の素人出身で、他のメンバーはNEXT YOU結成前から研修活動をしてきている、という設定である。ハロプロ研修生時代から数えると7年のキャリアを誇る宮本とはかなり異なる。また、J=Jではセンターを務めることが多くエースメンバーと目されている宮本だが、NEXT YOUの愛子は立ち位置がセンターではなく一番人気でもないので、そこも異なるところだ。
宮本は、今回のドラマ仕事が決まったあと、他のアイドルグループの自己紹介動画などを見て、初々しさの仕草などを研究したとインタビュー等で発言している。その成果が出ているかどうかも実際のオンエアでチェックしてみたい部分だ。
【堂垣内碧=植村あかり】
NEXT YOUにおいて一番人気かつ不動のセンターなのが堂垣内碧。そしてクールなキャラ(ただしハートは熱い)なのも碧の特徴だが、普段から明るく笑顔の多い植村とは大きく異なるところだろう。ただ、真面目な表情になると一気に大人っぽく見えるので、そこは近いかもしれない。
植村は前述の『恋するハローキティ』でも、男装の金澤を巡って宮本と恋のライバル関係になってしまうというなかなかシリアスな役柄だったのだが、そこは見事に演じていた。今回のドラマではどんな演技を見せてくれるだろうか。
【安達真由=高木紗友希】
「天真爛漫なおてんば娘」がキャッチコピーの「だちまゆ」こと安達真由。これは実際の高木のキャラとは、あまりギャップが無いのではないだろうか。
また、真由はぽっちゃり体型に悩むというエピソードが本編にある。モーニング娘。の鈴木香音のダイエット→リバウンドが話題になったように、アイドルの肥満問題は人々の関心が高い。J=Jのメンバーはスレンダーなタイプが多く、その中では高木も若干ぽっちゃり気味ということになってしまい、そこは作中と現実がリンクしている部分だろう。(とはいえ、ここ数カ月の高木は明らかに以前より痩せてきているともっぱらの評判である)
【坂本波奈=金澤朋子】
NEXT YOUではリーダーなのが「はなさま」こと坂本波奈。演じる金澤は、Juice=Juiceではサブリーダーの役職に就いている。現実のJ=Jでも、しっかりとした利発なトークが金澤の持ち味であり、NEXT YOUの現場にてトーク回しを務める姿は、あまり違和感がない。
はなさまは両親が離婚しており、弟妹3人を育てる母親の手助けをしながらアイドル活動をしているという苦労人だが、金澤は5人兄弟の長女(兄と3人の妹がいる)であり、大家族なところは共通しているといえる。
【鶴井るりか=宮崎由加】
甘えん坊の妹キャラでファンの心を鷲掴みするという設定の「つるりん」こと鶴井るりか。これは、近年「あざかわ(=あざと可愛い)」キャラが定着してきた宮崎には適任の役柄だろう。「握手会での神対応でファンの心をつかむ」というつるりんのキャラ設定は、宮崎をそのまま当て書きしたのでは……と思えるほどだ。
ただ、現実の方の宮崎はJuice=Juiceのリーダーであり、責任ある立場にいるということで役柄とはギャップがある。こうした細かな違いも念頭に入れつつドラマを視聴するとより楽しめるのではないだろうか。
(3)リアリティあふれる制作体制
本作『武道館』は、まだ放送前ではあるが、漏れ伝わってくる各種情報を統合すると、かなり細部にこだわった作りになるだろうと予測される。
そもそも、架空のアイドルグループを実在のアイドルがそのまま演じるという点で、リアリティの大部分はすでに担保されている。予告動画でも使われているライブシーンは、実際にJuice=Juiceのファンを募集して、クラブチッタ川崎で撮影されたものである。事前に「NEXT YOUのファンのような格好をしてきてもらえると歓迎です」というアナウンスがあり、熱心なファンはTシャツやグッズを自作して撮影に臨んだ。また、当日スタッフの方でもNEXT YOUロゴ入りTシャツを用意し、客席前方の観客に貸し出して着用の上で撮影が行われている。
参加したファンにとっては、NEXT YOUに扮したJuice=Juiceのメンバーが実際に歌い踊っている姿を観ながらいつもと同じように盛り上がったので、あのライブシーンはそのまま現実と同じもの、ということになる。
また、握手会のシーンも、ファンがエキストラ参加した上で撮影されている。映像を見ると、普段のJ=J現場でよく見かける顔、いわゆる「おまいつ(=おまえいつもいるな、の略で常連の意)」が映っていたりして、思わず苦笑してしまうというJ=Jファンも多いのではないだろうか。
ライブ以外のシーンでも、ゲストとして真野恵里菜や矢口真里といったハロプロOGメンバーの出演がすでに発表されている。もしかしたら他にも隠し玉があるかもしれない。
なお、NEXT YOUのつるりんの家庭は裕福だが、はなさまの家庭は経済的に苦しいという対比の設定があり、このあたりの描写はBSスカパー!のみ放送のロング版でシーンが追加されるとのことである。去年12月に、番組公式Twitterで双方の家庭シーンの撮影オフショットが投稿されたのだが、その美術セットの作り込みが結構な話題となった。
話題になったといえば、第2話に水着シーンがあるのもすでに反響が巻き起こっている。Juice=Juiceは、宮本と植村が写真集などで、高木はファンクラブ限定販売のイメージBlu-rayにて水着ショットを披露してはいるが、宮崎と金澤はまだ水着になっていなかった。最初に公開されたのは、昨年12月23日に行われたファンクラブ会員限定イベント「~メリクリ×Juice×Box~」の、さらにライブビューイング参加者向けの特典である、ドラマ先行映像のなかのひとつとしてだった。
その後、BSスカパー!での放送開始前スペシャル番組でも少し使われたが、先日2月2日発売の雑誌『SPA!』の巻頭に、紙媒体としては初めて5人全員での水着グラビアが掲載された。これはドラマ第2話との連動企画でもあるのだが、現実とフィクションを自由に行き来できる本作ならではの仕掛けだろう。
全8話が予定されているドラマ『武道館』。「Juice=Juiceファミリー」と呼ばれているJuice=Juiceのファンたちはもちろん必見だが、アイドル文化に関心を寄せる人々にとっても面白く観ることができる要注目のプログラムなのは間違いない。(ピロスエ)