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凄腕キーボーディストたちの宴! 渡辺シュンスケ生誕祭で奥野真哉、伊澤一葉、カメダタクらとコラボ

2016年02月06日 15:11  リアルサウンド

リアルサウンド

渡辺シュンスケ生誕祭「シンシュンシュンチャンショー2016」(写真=大出丈仁)

 渡辺シュンスケ生誕祭「シンシュンシュンチャンショー2016」が1月30日、shibuya duo MUSIC EXCHANGEにて行われた。毎年形を変えて行われているこのイベントは、様々なゲストミュージシャンが迎えられ、渡辺シュンスケとゲストの絶妙なコラボレーションが見所となっている。今回のゲストは、奥野真哉(ソウル・フラワー・ユニオン)、 伊澤一葉(あっぱ、the HIATUS)、カメダタク(オワリカラ)。すべて凄腕のキーボーディストという構成に、期待で胸が膨らむ。


 SEとともに登場した渡辺シュンスケを大歓声が迎える。まずはcafelonの「コーヒー」から幕を開け、続いて、
Schroeder-Headzの初作表題曲「Newdays」。先日発売されたアルバム『特異点』が記憶に新しいSchroeder-Headzのナンバー「Singularity」~「Surface」へ。スモーキーでソウルフルな弾き語りから一転、美麗でエモーショナルな鍵盤演奏に集中する。様々な特色を持ち合わせているアーティストならではのカラフルな曲構成だ。その後も、cafelonやSchroeder-Headzの楽曲はもとより、渡辺シュンスケ自身の思い入れがある楽曲カバー等がバランスよく配置されながら続いていく。


 一人目のゲスト、カメダタクが登場。「lake bed」ではカメダによる心地よいエレクトロサウンドが映える。続く「micro cosmos」ではカメダが発するスペイシーな残響音の上を渡辺シュンスケによるミニマルな音律が走る。非常にミステリアスで耳に残るサウンドメイキングだ。そしてカメダが所属する「オワリカラ」のナンバー「ロールシャッハ」ではダフトパンクを彷彿させる仮面を二人が身につけ、ダンスを披露。会場がユーモアに包まれる瞬間だった。


 二人目のゲスト、伊澤一葉が登場すると、大学時代からの付き合いだという出会いのエピソードが語られた。その頃二人で弾きまくっていたというメロウなアーバンソウルナンバー「LOVE is all」では、様々なタイミングで入り乱れながら主旋律を弾き合う。とてもスリリングながらも、スルスルとすり抜ける美麗な音階に心を奪われてしまう。一転、「absence of absolutes」では非常にパワフルな演奏。同じ音色の連弾というスタイルだが、音圧や表現力が2倍ではなく10倍くらい膨れ上がったような印象だ。そして伊澤が所属する「あっぱ」のナンバー「奇跡の顔」では美しいハモリが生まれ、二人のボーカリストとしての実力も垣間見ることができた。


 そして三人目のゲスト、奥野真哉が現れると、一層大きな拍手で出迎えられた。渡辺と奥野の絶妙な「間」のセッションが、演奏にもトークでも繰り広げられる。「ローリングストーンズに入るつもりだから。ミックとシンヤ」と会場の大爆笑を誘いながらも、2人ともサポートの経験がある小泉今日子「サミダレイン」(上田ケンジ作詞作曲)のカバー、フラワーカンパニーズ「深夜高速」カバーでエモーショナルな演奏と歌声を聴かせる。奥野によるエレクトロニクスやアコーディオンが、渡辺のピアノ弾き語りをより哀愁深くさせているのだ。そして奥野の曲である「ベトナムゴスペル」。70年代のキースジャレット即興演奏を彷彿させるミニマリズムとクラシカル、そして奥野節ともいうべき歌謡のメロディーをブレンドした唯一無二の世界で幕を閉じる。


 最後はこれまでのゲストが全員集結。4人のキーボーディストが一列に連なっている様は圧巻だ。穏やかに浮遊するエレクトロニカの中に「みんな夢の中」を歌う渡辺シュンスケの牧歌的な声が広がる。そしてここでシークレットゲストKie Katagi(jizue)が登場し、Schroeder-Headzの「sketch of leaves」を5人で演奏。美しい旋律の中、なんとVAN HALENの「JUMP」名リフが織り交ぜられながら終了。アンコールではピアニカとアコーディオンが美しい音色をつける「abide with me」、そして鍵盤が打楽器のように扱われる「Nut Rocker」で大団円へと向かった。柔らかなようでソウルフル、安堵がもたらされるかと思えばスリル満点、嬉々と鬼気が折り重なった渡辺シュンスケのライブ。来年はどのような形で自らを表現するのだろうか、今から楽しみでならない。


 そして、渡辺シュンスケのポスト・ジャズ・プロジェクト<シュローダーヘッズ>が3rdフル・アルバム『特異点』を1月20日にリリース。同作は人類が未だ見ぬ宇宙の彼方<特異点>に想いを馳せた疾走感あふれる情景音楽。アコースティック・ピアノの鮮やかな響きを包み込む生ドラムとプログラミングドラムのグルーヴが核となり、アナログ・シンセサイザーの温かなサウンドが彩りを添え、テクノロジーの中にもヒューマニティが感じられるインストゥルメンタル・ミュージック。


 4月から行われる『特異点』のリリースツアーには、Keishi Tanaka、jizue、rega、Reiの出演が決定。5都市は、ゲストアーティスト有の対バン公演。11都市は、ワンマン公演。計16本の全国ツアーが行われる。
(取材・文=イワモトリョウ)