トップへ

指原莉乃の監督挑戦、橋本環奈の初主演……アイドル映画はなぜ増えている?

2016年02月05日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』公式サイト

 HKT48指原莉乃が『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』の初監督を務めたことが注目を集めている。AKBグループのドキュメンタリー以外にも、ゆるめるモ!のメンバーが活躍する『女の子よ死体と踊れ』(2015年)や橋本環奈が初主演を務める『セーラー服と機関銃-卒業-』(2016年)など、昨今はアイドルを起用した映画が目立つ。


参考:深田恭子、綾瀬はるか、上野樹里……アラサー女優が輝き続ける「条件」


 ここ数年続いているアイドルブームの延長として、こうした作品が次々と生まれていることが伺えるが、その性質や背景は作品によって異なるという。『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者であるライターの香月孝史氏は、現在のアイドル映画を次のように整理している。


「2000年代後半からグループアイドルを中心にした女性アイドルシーンが活況を見せていますが、このジャンルは歌やダンスを基本的な活動としながらも、グループ内のダイナミズムそのものがコンテンツとして楽しまれるという側面を強く持っています。そのダイナミズムが持つ群像劇としての魅力を広く伝えるための手法のひとつとして、AKB48グループが繰り返し製作しているドキュメンタリー映画群があります。また、そのようなドキュメンタリー性が前提になっているからこそ、乃木坂46の秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未が主演を務めた『超能力研究部の3人』のように、劇映画とドキュメンタリーとを混在させたうえで、ドキュメンタリーパート自体をフェイクドキュメンタリーとして仕上げた、ひねりのある作品もより効果的なものになります。また、『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』は、自らもアイドルファンであり、被写体となるHKT48のメンバーでもある指原莉乃が監督を務めています。彼女は監督する自らの姿をも含めて俯瞰的に捉え、AKB48グループのドキュメンタリー群の中でもさらに新しい表現を提示しました。一方で、たとえばゆるめるモ!主演の『女の子よ死体と踊れ』はそうしたドキュメンタリー性の強い作品とは違うアイドル映画です。ただし、いずれの作品も、“彼女たちがアイドルグループである”ことを大前提の売りとしてプロモーションされていくし、“アイドルグループのメンバーである彼女たち”が演技をしているというところまで含めた受容がされていく。その意味で、劇映画であっても彼女たちのパーソナリティーを伝える媒体として機能する面も強いと思います」


 一方で、橋本環奈が主演を務める『セーラー服と機関銃-卒業-』は、また違った文脈の作品だという。


「もともと、アイドル映画という言葉自体は今日のアイドルブームのずっと前からあるものですよね。たとえば1980年代のアイドル映画というとき、薬師丸ひろ子や原田知世などソロとして活動する若手タレントの主演作がイメージされます。角川映画で製作されたオリジナルの『セーラー服と機関銃』は、その代表作です。今回の新作で主演を務める橋本環奈は、Rev. from DVLのメンバーという意味ではグループアイドルシーンの中にいますが、世間から見るとソロとしての活動が目立ちますし、今回もソロのタレントとしての出演というイメージが強い。また作品自体も、グループアイドルシーンの文脈よりも、角川映画の歴史に寄り添ったものです。そのため、ひとくちに『アイドル映画』といっても、グループアイドルであることを前提にした映画とは少し異なるところにある。今回の『セーラー服と機関銃-卒業-』のような企画の場合、橋本さんのようにソロとしての色を強く印象づけている人の方が似つかわしいのかもしれません」


 アイドル映画は、出演するアイドルにとっては活動の幅を広げ、卒業後のキャリアを築くきっかけになるほか、映画に出演するということ自体がブランディングに繋がるなど多くのメリットがあるが、制作側にとっても魅力はある。


「アイドルを起用することで、そのアイドルの固定ファンの動員が見込めるということはもちろんあるでしょう。また、グループアイドルシーンの活況でアイドルの数が増加しているだけでなく、メジャーからインディーズまでスタンスや活動規模も多様化しているため、映画のアイコンとしてアイドルを起用したいときにキャスティングの選択肢が幅広いというのも魅力的でしょう。製作する側の規模も様々あるなかで、アイドルというジャンルが多様であればあるほど、製作側とのマッチングの機会も増えることになる。その結果として、いろいろな文脈で多くのアイドル映画が作られているのだと思います」


 数多くのグループアイドルが活躍している昨今、さらに多様なアイドル映画が生まれそうだ。(リアルサウンド編集部)