正社員として働いて、年収は600万円以上。職種はバックオフィス(事務・管理業務)で、結婚して子育て中――。転職サービスを運営するLibがキャリア女性会員298人に「理想の働く女性像」を調査したところ、こんな結果が出た。
理想をあらわしたイラストも添えられており、トレンチコートを着こなしてメイクはナチュラル。ボブスタイルの髪型も決まっており、まるで女性誌から抜け出してきたような姿だ。しかしこの「理想」が、あまりにも高すぎはしないかと話題を呼んでいる。
「身の丈知らずもいいとこ」など批判コメントが多数
LiBz CAREERが展開するのは「過去の最高到達年収が400万円以上のハイキャリア女性」を対象とした正規雇用の転職支援サービス。いまや400万円でハイキャリアか、と驚く人もいるかもしれないが、これが現実というものだろう。
しかし会員の夢は、これでは収まらない。「理想にどんな姿を描いても自由」ではあるものの、これを実現する人は稀なので非現実的すぎるという声が殺到している。
「誰でもできるような仕事内容で9時5時仕事で600万円?身の丈知らずもいいとこだよね」
「バックオフィス職はアウトソーシングの時代だぞ。金融系以外は250万でも雇わない」
「まあ、妄想はタダだしいつでもだれでもできるしね」
バックオフィスを望むのは、ノルマなどに追い詰められずキツすぎない仕事をイメージしているのかもしれない。しかしこれにも「会社が求めてるのは営業だけ。事務は営業ができなくなった年配者や契約社員で回してたりする」とツッコミが入る。
違和感を訴える女性が続出するのも無理はない。国税庁の「2014年分民間給与実態調査」によると、女性正社員の平均年収は359万3000円。年収600万円を達成するためには、この1.7倍ほど稼がなければならない計算になる。
実は「マミートラック」に入ったキャリアウーマンの姿?
仕事最優先でも難しい水準なのに、結婚・出産までして達成している女性はごく少数。ネットにも「現実見よう」「世の中そんなに甘くない…」「夢見すぎ」という声のほか「煽り過ぎ」といった批判めいたコメントが後をたたない。
その一方で、「この理想像はマミー・トラックっぽい気がするのですが」と指摘する人もいた。周囲から見れば羨ましいかもしれないが、本人にとっては望ましい状態ではないおそれもあるというのだ。
「マミートラック」とは一般的に、自らのキャリアを追い求めて頑張ってきた女性が、育児休業明けに不本意ながらキャリアを諦めざるをえない「ママ専用の非出世コース」に配属されてしまうことをいう。
カラーズ社長の経沢香保子氏は、この現象について「会社側としては、時短であり、子供の事情でいつ休むかわからない母親への配慮という意味合いもあるのでしょうが」としつつ、優秀な女性たちが「(子どもを)保育園に預けてまで、この仕事に向き合うべきなのか」と悩んだあげく、労働市場から消えていってしまう問題を指摘している。
確かに営業職や企画職として出世を果たしてきた女性が、復職後に高収入のままバックオフィスに押し込まれてしまう場合、イラストのような状態になっているおそれもある。しかし収入と育児を両立させるとしたら、通常はネガティブな意味合いで使われる「マミートラック」であっても、結果的に一番都合よいと考える人が多いのかもしれない。
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