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欅坂46が見せた“個性”の片鱗 観客を前にした2つのパフォーマンスを読み解く

2016年02月04日 17:22  リアルサウンド

リアルサウンド

欅坂46

 昨年8月21日に結成されてから約5カ月。欅坂46が今年1月に入ってから、ついに観客を前にしたパフォーマンスを初披露した。昨年12月16日にフジテレビ系で放送された『2015 FNS歌謡祭 THE LIVE』では先輩グループの乃木坂46らとともに、乃木坂46の代表曲「制服のマネキン」をパフォーマンスした欅坂46。この初パフォーマンスから数日後に行ったインタビュー(「欅坂46、初のメンバーインタビュー 上村莉菜・鈴本美愉・平手友梨奈が語る“これまでとこれから”」)では、「私は正直、申し訳なさのほうが大きかったです」(平手友梨奈)、「もっとできたんじゃないかと。私の中では達成感はなくて、終わった後とかも悔しさのほうが大きかったです」(鈴本美愉)と満足いく手応えを得ることなく、厳しい洗礼を受けたことを口にしていた。実際、この日のパフォーマンスをテレビで観た私も彼女たちから「欅坂46らしさ」という個性を見つけられず、あっという間に彼女たちの出演時間が終了。残念ながら共演した乃木坂46、そしてAKB48グループやハロプロ勢、スターダスト勢の個性の強さを再確認するだけにとどまった。


 特殊な状況での初パフォーマンスから約1カ月後、欅坂46はついに観客を前にしたパフォーマンスを二度経験することになる。最初は、1月16日、17日に東京・Zeppブルーシアター六本木にて開催されたイベント『新春!おもてなし会』。まだCDデビュー前でオリジナル曲は皆無、さらにイベント内容について一切告知されていなかったにも関わらず、2日間で計3公演が実施されたこのイベントはすべて定員を大幅に上回る応募数で、彼女たちへの注目度の高さが伺える結果となった。


 イベントではメンバー21名が放送部、美術部、音楽部、演劇部、ダンス部、書道部のいずれかに所属し、グループごとにパフォーマンスを披露。昨年11月に東京・Zepp DiverCityで開催された『お見立て会』以来の、ファンを前にしたイベントだったが、以前は完全に素人そのものだった彼女たちも、テレビでのレギュラー番組『欅って、書けない?』(テレビ東京・関東ローカル)で得た経験からか、少しだけ緊張から解き放たれ、トークパートでは本来の素の部分が楽しめる結果となった。


 さて、肝心のパフォーマンスについて触れていこう。『欅って、書けない?』や『お見立て会』ではすでに披露されてきた個々の特技が生かされたこのグループパフォーマンス。音楽部では上村莉菜、小林由依、菅井友香、長沢菜々香、渡辺梨加がそれぞれ、ピアノ連弾×アルトサックス、ピアノ連弾×バイオリンといった音楽的才能を見せつけ、最後に今泉佑唯と小林由依がアコースティックギターの弾き語りで大原櫻子のカバー「ちっぽけな愛のうた」を披露した。アカペラやハーモニーなどをふんだんに取り入れたこのパフォーマンスに、きっと多くのファンが驚いたことだろう。初々しさや緊張感も漂う独特の空間だったが、こういった音楽的センスに長けたメンバーが多数在籍するという意味では、先輩の乃木坂46を将来脅かすような存在になるのでは……そんなことも、ふと考えてしまった。


 またダンス部では石森虹花、齋藤冬優花、鈴本美愉、土生瑞穂、平手友梨奈が、これまで見せたことのなかった激しいダンスパフォーマンスを披露。彼女たちが踊る姿は前述の「制服のマネキン」でしか観たことがなかったわけで、ここまでバキバキなダンスができるのか!と正直驚かされた。また曲間では乃木坂46の「命は美しい」もフィーチャー。表現力という点で乃木坂46に一歩劣るのかもしれないが、それでも存在感や迫力は抜群だったと言わざるを得ない。特にグループ加入までダンス未経験だったという平手の存在感には、ただただ驚くしかなかった。


 その他にも演劇部や美術部、書道部などで個性を発揮した欅坂46。文化部感の強かった乃木坂46をさらに押し進めたようなその個性は、今後彼女たちにとって大きな武器になることは間違いない。


 『新春!おもてなし会』から約2週間後の1月30日、今度は東京・国立代々木競技場第一体育館で開催されたイベント『ニッポン放送 LIVE EXPO TOKYO 2016 ALL LIVE NIPPON VOL.4』に出演し、初めて観客を前にライブを披露した。9000人もの観客を前にトップバッターとしてステージに登場したのは、今泉佑唯と小林由依の2人。アコースティックギターを抱えてセンターステージに現れた2人は、「皆さん、初めまして。欅坂46の今泉佑唯です」「小林由依です」「2人で“ゆいちゃんず”です」と自己紹介し、「今日は欅坂46初めてのライブパフォーマンスです。本当はここでデビュー曲を披露させていただきたかったのですが、残念ながら間に合いませんでした。なので今日は大好きな大原櫻子さんの『ちっぽけな愛のうた』を披露させていただきます」と述べてから、先の『新春!おもてなし会』でも歌った「ちっぽけな愛のうた」を、弾き語りで披露した。


 当日は山下健二郎(三代目 J Soul Brothers)やT.M.Revolution、back number、KANA-BOON、高橋優といった人気アーティストが多数出演。客席には緑のサイリウムを手にした欅坂46ファンの姿も見受けられたが、全体的に見ればアウェイに近い状況だ。そんな中、今泉&小林は声をうわずらせながらも繊細な歌声とハーモニーを会場に響かせる。そして2人の好演に対して、静かに、じっくりと聴き入っていた観客の姿も印象的だった。考えてみれば2週間前の『新春!おもてなし会』は約800人程度、今回はその10数倍となる9000人と、デビュー前の新人、しかも10代半ばの女の子が踏むステージとしてはちょっと現実離れしたものだ。そんな状況を2人は(多少のミスはあったものの)見事乗り越えたのだから、素直に拍手を贈りたい。


 2人がステージを降りると、会場にはエレクトロ調のインストゥルメンタルナンバーが流れ始める。どうやらこれが欅坂46の「Overture」らしい。EDMテイストを取り入れた現代的なダンスサウンドは、初めて耳にしたファンから早くも受け入れられていたようだ。緑のサイリウムを手にした欅坂46ファンの声援が鳴り響く中、ついにメインステージにはセーラー服姿のメンバー21名が登場。いきなり平手友梨奈や鈴本美愉、石森虹花を中心にした激しいダンスパフォーマンスを披露して観客の目を奪うと、続けて乃木坂46の「制服のマネキン」を21名全員で歌い踊った。『2015 FNS歌謡祭 THE LIVE』では存在感の強い先輩たちに目を奪われてしまう結果に終わったが、この日は1人ひとりが個性をアピールするべく、激しいダンスで観客を魅了する。また曲中では一部メンバーがステージ中央から客席に延びた通路やセンターステージでパフォーマンス。本家にも引けを取らないキレのあるダンスは、デビュー前の新人とは思えないほど堂々としたものだった。そして「制服のマネキン」終了後も再び全員一丸となったダンスパフォーマンスを提示。欅坂46は知らなくても乃木坂46なら知っているという観客も巻き込み、21名が全力で挑んだ初ライブは大成功のうちに終了した。


 パフォーマンス終了後、イベントMCの山下健二郎から感想を尋ねられた平手は、「大きなステージに私たちが立たせていただくなんて、緊張と不安でいっぱいでしたが、すごく皆さんが温かかったので楽しくパフォーマンスさせていただきました」とホッとした表情でコメント。その後は「欅坂46 10秒間自己紹介リレー」と題して、メンバー1人ひとりが10秒ずつ、計210秒にわたりリレー形式で自己PRを実施。必死に喋ろうとして早口になる者、緊張で声が小さくなる者、なぜか自分が飼っている犬の名前を紹介する者などさまざまだったが、中でも平手友梨奈や原田葵といった中学生メンバーが年齢を口にすると会場がざわめく場面が印象に残った。


 持ち曲が1曲のみ、しかも自分たちのオリジナル曲ではないというハンデはありながらも、FNS歌謡祭のリベンジを存分に果たしたと言える欅坂46。現時点ではCDデビュー時期は未定だが、早くも次のステージが4月9日に国立代々木競技場第一体育館で開催される『GirlsAward 2016 SPRING/SUMMER』に決定した。この日は先輩の乃木坂46が出演することも発表されており、早くも2グループの初共演が実現することになる。まだ確固たる個性は確立できていないものの、ダンスパフォーマンス力や芸術面に長けたメンバーが多数在籍する欅坂46がこの先どう成長していくのか。もしかしたら乃木坂46と同じステージに立つ次のイベントで、そのヒントが明確になるのかもしれない。(西廣智一)