おしゃれな人たちが使い始めた新しいツールが話題になると、一般ユーザーが押し寄せてくる現象はよくあることだ。先行して使っていた人にとっては、居心地のいい場所を荒らされた気持ちになって、ツールの利用をやめてしまうこともしばしば。
そんな普遍的な現象が、写真に特化したSNS「インスタグラム」をめぐって起こっているようだ。有名大学を卒業した元アイドルのOLが、投稿サイトに「おばさんたちはインスタに来ないで」と書き込み、批判が炎上状態になって謝罪する事態となっている。
「リア充アピールは、上司や親戚にしてるわけじゃない」
筆者の女性は、カフェで40代くらいの主婦が「最近の、あたらしいスマホのやつ、なんだっけあれ?いんすたぐらむ??はじめたいと思ってるんだよね」と話しているのを聞き、こう思ったと記している。
「お願いー。目上の方々、おじさんおばさんはインスタやらないで」
女性は「こんなこと言える立場じゃないので、まぁいちユーザーの戯言だと思ってください」と断った上で、フェイスブックの若者離れの原因について「それっておじさんおばさんが始めたからだと思ってる」と持論を述べる。
フェイスブックは「友達とだけの世界だった」のに、そこに大人が入ってくることで「親や親戚のページ見たくないし、自分の見られたくないし」となり、利用が億劫になる。
「小学校の時の先生から申請きた時は、どうなることかと思ったよ。断れないし」
せっかくフェイスブックから逃れて「若者だけの世界」のインスタに来たのに、また居にくくなってしまうかもしれない。「親、親戚、上司に探されたくない。フォローされたくない」という筆者は、主張をこのようにまとめている。
「ネットと実社会のキャラが微妙に違っていて、SNSではネットのキャラになれたのにリアルな知り合いの目上の方々とそこで繋がると色々崩壊するんだよね。リア充アピールは、友達にしてるわけで、上司や親戚にしてるわけじゃない」
筆者は「つながる人を選択する難しさを表現」と釈明
便利なツールを排他的に使おうとする女性の主張には、激しい批判が殺到した。
「大きなお世話すぎるよね。別に関係ないやん」
「5年もすれば、お前が出てけ!と言われる側。お前中心に世界は回ってない」
「繋がりたくないなら、繋がらなきゃ良いのに…」
確かに年齢で利用が制限されるのであれば、自分もいつか使えなくなる。フェイスブックの「友達申請」を自分から承認しておきながら、「断れないし」というのもおかしい。
「Facebookで会社の上司から友達申請がきたら、承認して制限リストに放り込む、というのは多くの人が知っている基本だと思っていた(苦笑)」
など「リアルとネットの切り分けのネットリテラシーが足りないだけ」という指摘もある。
批判を受けて、筆者は追記を掲載。投稿の真意は「社会の中で、リアルとネットの境界が甘くなり、自分自身で、プライベートでも繋がる人と、繋がらない人とを選択する難しさが新しく生まれているということを、表現したつもり」だったが、「書き方によって、誰かを傷つけてしまう可能性があること」を自覚したとして謝罪した。
一方、女性の主張に「まじで、これ」「リアル関係者に見つかりたくないという気持ちは分かる」と共感する声も少なからず寄せられている。
結局は「社交に対する成熟さ」を表してしまうのか
女性の指摘に「どんなサービスも中高年層が入る頃には廃れ始めている」と賛同する声もあるが、逆に利用者が中高年に広がってこそサービスが広がるという見方もある。自称「起業家のニート」の26歳男性は、ブログで「母親にインスタグラムをやらせよう。」と提案している。
東京に住んでいる男性は、帰省した際に母親にiPadを贈った。アプリの中で母親が気に入ったのは「インスタグラム」。写真を見るだけで「世界中を旅してる気持ちになれる」「家でひとりでいること忘れられる」と語り、今では自ら「今まで見たこともない綺麗な風景や息を呑む自然の写真」をアップするようになったという。
男性は母親とアカウントをフォローしあっており、インスタグラムでの交流について、その魅力をこう語っている。
「僕が東京で見ている景色を母親は知らない。そしてまた母が実家で見ている景色も僕は知らない。文字や文化は世代を超えて共有することは難しいけれど、感性だけは世代や時間を超えて理解できる」
若い女性は、自立心を養う途上で大人世代に反発する時代がある。しかし歳を重ねるにつれて、自分とは異なる考えや立場の人たちとの交流も楽しめるようになるものだ。結局SNSの使い方は、社交に対するその人の成熟さを表すのではないだろうか。
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