2016年02月03日 15:01 リアルサウンド
シングル『It's OK』(2011年)でメジャーデビューしてから5年。Ms.OOJAのボーカルの魅力は2015年、さらに幅広い年代のリスナーに浸透したと言っていいだろう。その理由はまず、計20本以上に及んだ音楽番組への出演。『水曜歌謡祭』(現『Love Music』・フジテレビ系)の準レギュラーオーディションで合格、和田アキ子や郷ひろみなどの大御所歌手からCrystal kayや秦基博などの実力派シンガーまで数々のアーティストとコラボレーションを実現させ、その実力をしっかりとアピールすることに成功したのだ。この番組内で転機となったのは、やはりカバー曲。特に「最後の雨」のソウルフルな歌唱は大きな話題を集め、彼女の知名度を一気に引き上げた。さらに『新・BS日本のうた』(NHK・BS)にも出演。北山たけし、伍代夏子、前川清、山内惠介、山本譲二などの演歌勢との共演により、年配の音楽ファンの認知度を高めたことも記しておきたい。
そして、Ms.OOJAの最初の集大成であるベストアルバム『Ms.OOJA THE BEST あなたの主題歌』がリリースされる。100万ダウンロードを記録した「Be…」(ドラマ『恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方~』主題歌)をはじめとする代表曲、そして、彼女のライフワークとも言えるカバー曲「First Love」(宇多田ヒカル)、「最後の雨」(中西保志)などを「LOVE」「COVERS」「LIFE」のテーマごとに収録した本作は、シンガーとしての彼女の魅力を余すことなく伝えている。
Ms.OOJAの歌声の魅力とは、何だろうか? 音楽プロデューサーの大野裕一氏 (sound breakers)は「切ない歌を切なく唄いこなすことは割と簡単だと思いますが、彼女のリリカルなボーカルはその先にあり、いつも心を震わされます。切ない歌はもちろんのこと、嬉しい気持ちや暖かい気持ちをもしっかりと表現できることも彼女の素晴らしい魅力です。それが相手を選ばずコラボレーションすることを可能とする要因だと思います」と語る。その豊かな表現力を紐解くうえで欠かせないのは、彼女のシンガーとしてのキャリアだろう。10代後半から名古屋のクラブシーンで歌い始めた彼女は当初、洋楽のR&Bをメインにした活動を展開していた。しかし、決してマニアックな趣味にこだわることなく、インディーズ時代には沢田知可子の「会いたい」をカバーするなど、当時から幅広い音楽性を志向していた。その音楽的な視野はメジャーデビュー後にさらに広がり、主にカバー曲を通して、彼女のボーカルの汎用性の高さにつながっているのだ。
また、ヒット曲「翼」(松山ケンイチ主演映画『天の茶助』主題歌)の作曲・編曲を手がけたCOZZi氏は「人の心の深い部分に歌声を届ける力が彼女には備わっているということだと思います。彼女の優しい人柄やこれまでの生き様がきっと歌声ににじみ出てるんですね」とコメント。Ms.OOJAのインディーズでの活動は約10年に及び(メジャーデビュー時は29歳)、その間、デパートの店員として働きながら歌手の道を目指していたという。そのときの葛藤や苦悩、そして、それでも自分は歌いたいという意思は、現在の彼女の歌のなかにある強い説得力と溢れんばかりのエモーションに直結しているのではないだろうか。前出の大野氏は「楽曲制作で意識しているのは、Ms.OOJA がその歌を通して何を伝えたいと考えているのか、それをしっかり共有してメロディとサウンドを構築していくこと」とコメントしているが、この言葉からも、彼女が持っている「歌を通して、自分のメッセージ性を伝えたい」という意思がはっきりと感じられる。
数々のミュージシャンから支持される歌唱力と、聴く者の心を揺らす歌心を併せ持ったMs.OOJAのボーカルは今後、さらに幅広い層に受け入れるはず。最初の集大成とも言えるベストアルバム『Ms.OOJA THE BEST あなたの主題歌』は、その大きなきっかけになりそうだ。(森朋之)