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SMAP稲垣吾郎はなぜ文系女子を虜にする? 姫乃たまが主演映画から魅力を考察

2016年02月03日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

『桜、ふたたびの加奈子 [Blu-ray]』

 最近、SMAPが気になっています。いや、いま国民のほとんどが気になっている(あるいは気になり過ぎて心が疲れて、半ばうんざりしている状態)と思うのですが、もっと初歩的な話で、稲垣吾郎の魅力に気が付いてしまって……もうなんだかとにかく、文系女の心に刺さるわけです!


参考:なぜ少女は“おじさん”に恋い焦がれるのか 姫乃たまが『友だちのパパが好き』を考察


 文系女子が彼に夢中になるのって、もしかして常識なんでしょうか。私はこれまで男女共にアイドルにはほとんど興味がなかったので、想像だにしませんでした。むしろ母親の友人から、「ジャニーズは急にハマるわよ」なんて、じっとり微笑まれて、その気迫に怯えていたほどです。しかし、ラジオから流れてきた『$10』がSMAPの楽曲であることを知って驚き、自ら『KANSHAして』を聴いて、うっかり興味を持ってしまったのです。90年代SMAP楽曲の格好良さたるや! しかし、しかしですよ。この二曲とも作曲が林田健司であることに気づき、そうだ私はメンバーではなくて彼が好きなんだ、ということで納得しました。


 しかし(しかし、しかし、と話は二転三転しますが、ときめきに揺れているので仕方なし)、テレビからSMAPのライブ映像が流れてきて、「あ、SMAPだ」と、つい喜んだ私の目は、完全に稲垣吾郎に釘付けになっていました。このダンス……! ほかのメンバーが踊っているのを見て、「あ、初めて見たなあ。僕もやってみよう」と言わんばかりにマイペースな、優雅な王子様のような雰囲気と動き。私は文系女として、完全に心打たれました。


 稲垣吾郎とは、どういう人なんだろう……。主にジャニーズの楽曲を流している知人のDJに聞いたところ、「音楽好きで、無人島に持って行きたい愛聴盤にThe Velvet Undergroundを入れてたよ」との回答が。運動よりも音楽が好きなのかしら……。単純な文系女なので、心打たれます。


 そして私は稲垣吾郎見たさに、彼が主演している映画『桜、ふたたびの加奈子』(2013年)を再生しました。広末涼子の美しい横顔と、微笑んでいる稲垣吾郎、桜を基調にした爽やかなパッケージデザインと、「あの子はきっと生まれ変わって帰ってくる」という心温まるコピー。ところが、この映画がすごかったのです。


 広末涼子と稲垣吾郎演じる夫婦が、小学校入学を目前に控えた娘・加奈子を不慮の事故で亡くしてしまうところから話は始まります。娘の晴れ姿を映像に収めようと、デジカメを探して、目を離した隙に事故に遭わせてしまった容子(広末涼子)は、正体をなくすほど自身を責め、信樹(稲垣吾郎)が死亡届を出しに行っている間にも、リビングでデジカメを地面に叩きつけて破壊していました。「会いたい……会いたい……」という呻きとともに、容子は縄に首を通します。途端にパッケージの「あの子はきっと生まれ変わって帰ってくる」というコピーから、重たい情念を感じます。その後も、知人の子どもを娘の生まれ変わりだと言って養子にしようとしたり、さらったり、容子の情念に駆られた行動は続くのですが、何がすごいって、終始映像を包み込む佐村河内守の組曲がもう、ものっすごいどろどろしていて、ほぼホラー映画状態なのです。


 ただ、私は映画を見ていて、どうして稲垣吾郎に心打たれるのかわかった気がします。


 食卓に“エアー加奈子”を見立てて、誰も座っていない子ども椅子に話し掛ける容子を見る時の、戸惑った視線。「僕らも新しい子どもを作ろうよ」と優しく提案しては、「あの子は帰ってくるから」と拒否されて、鈍い色に光る瞳。知人の子どもをさらった容子に置き去りにされたまま、知人達にひとりで糾弾されている時の冷めた表情。温厚とも言えるし、無意識に抑圧されているようにも見える、飄々とした魅力に、文系の女性は惹かれるのかもしれません。


 彼と同世代で、同じく板橋区で学生時代を過ごしたという男性が、「稲垣吾郎にはシンパシーを感じる」と話していました。少し上の世代がとても荒れていたため、学校の規則が厳しくなった中での学生生活だったそうです。すっかり暴力がなくなった環境下で、女生徒は伸びやかになっていきましたが、男子生徒への指導は依然として厳しく、男子生徒は大人しく飄々とした性格の子が増えていったといいます。あくまで個人的な思い出で、どこまでその通りだったのかは不明ですが、本当だったら納得してしまうような話だなあと思いました。


 はつらつと踊る男性アイドルの中で、はつらつと踊ろうとしながら、独特の柔和な魅力を振りまいている彼を、ひっそり見ていたい気持ちでいっぱいです。(姫乃たま)