1月29日、2017年の新レギュレーションの枠組みを決めるため、F1チームのテクニカルディレクターたちがヒースローで再び会合を行った。
F1ストラテジーグループが、2017年から「マシンをより速く、レースをよりスリリングに」するための計画として、新レギュレーション案を誇らしげに公表したのはもう8カ月も前のことだ。そして、昨シーズンの終わり頃には、この新しいルールがまもなく正式に決まるものと考えられていた。
ところが、12月に行われたテクニカルディレクターの会合で、新レギュレーションによるダウンフォースの増加について疑問の声が上がり、正式決定に向けた動きの歯車が狂い始めた。ダウンフォールレベルを高めればラップタイムは速くなるものの、その“副作用”としてオーバーテイクはこれまで以上に難しくなるとの懸念が示されたのだ。
全11チームのうち8チームは12月の会合で出された改定案に同意し、ひとまずその方向でまとまるかに見えた。だが、一部のチームは「中道的な」ソリューションと称されるまた別のアイデアを検討し始め、これが問題をさらに複雑化させているようだ。あるインサイダーは「より良い案を練り上げるどころか、逆にどんどん収拾がつかなくなっていく」と、この問題の先行きを案じている。
新レギュレーション決定の最終期限である3月1日は刻々と近づきつつあり、プレッシャーは高まるばかりだ。この期日をすぎると、2017年からレギュレーションを変更するためには全会一致の同意が必要となるためで、F1ではどんな議題であろうと「全会一致」が事実上不可能であることは歴史が証明している。
もうひとつの重要なテーマは、FIAが2017年からの導入を望んでいるコックピット保護策だ。
数年越しの研究の末、FIAはメルセデスがデザインした「ハロ」を進むべき道として提案したが、ここでもまた問題が持ち上がるかもしれない。ハロをFIA公認の統一部品とするのではなく、チームが自由にデザインすることを望む可能性があり、そうなると個別に強度や適合性のテストを行う必要が生じてくる。
エンジンに関する問題は、良い方向への進展を見せている。「クライアントエンジン」案は棚上げされ、今後のパワーユニットのコストと供給の方針についてもすでに合意に至った。2018年以降、4つのエンジンマニュファクチャラーは年間1200万ユーロでカスタマーチームにパワーユニットを供給しなければならない。これは供給の代価が現在より800~1300万ユーロも下がることを意味し、マニュファクチャラーは大幅なコストダウンという技術的難題を課されることになる。また、2018年からはシーズン中に使えるギヤボックスが3基までに制限される可能性もあるようだ。
車重についての議論もある。2017年からタイヤサイズとホイールの幅が拡大され、それだけで10kgほど重くなる。FIAは最低車重の規定を変えずに、その10kg分を他の部分の軽量化で相殺する形を望んでいるのに対し、チーム側はそうするとまた新たなコスト増につながると主張しているのだ。
それぞれの意見が食い違う点があまりにも多いことから、ウイリアムズのテクニカルディレクター、パット・シモンズは、先日このレギュレーション改定は2018年に先送りするのが賢明ではないかと示唆した。ただ、先送りの可能性がかなり低いことは彼自身も認めている。
金曜日の会合の後、その内容に関する正式なプレスリリースは出されていない。