近年、交通事故全体が減る一方、高齢者ドライバーによる事故は急増している。そんな中、大手旅行会社のJTBとタクシー会社が、福岡市の一部で70歳以上の高齢者を対象に「タクシー定額乗り放題」の実証実験を始めたことを、1月28日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)が紹介した。
71歳の小金丸和子さんは、去年運転中に事故を起こしてから免許証を自主返納した。娘さんはペーパードライバーで運転できず、外出にはタクシーを利用している。乗車の際に顔写真入りの登録カードを運転手に見せるだけ。あらかじめ行き先を指定しておき、その範囲であればタクシーを何度でも使えるしくみだ。
月2万8000円で「買い物」と「お見舞い」に利用
料金は設定した距離によって、2万8000円から6万4000円まで。小金丸さんの場合、自宅から10分ほどのスーパーと、母が入院している病院を行き先にして2万8000円。かつては自家用車の維持に月に約4万円かかっていた小金丸さんは、笑顔でこう語る。
「月々の経費からするとお得。ちょっとした買い物でも、外出しやすくなった」
母親が認知症気味なので、顔を忘れないよう見舞いは毎日。通常のタクシーなら、病院の往復が週2回で約3600円。スーパーの往復を週3回で約5400円。1か月で合計3万6000円ほどになり、毎日病院に通うことを考えると月2万8000円はかなりお得だ。
このサービスは、大手旅行会社JTBが福岡市内のタクシー会社と連携し、70歳以上をモニターとして始めた実証実験だ。4月からは全国の政令指定都市20か所で本格的なサービスとして展開する予定。JTB九州の藤本健輔さんは、ねらいをこう語る。
「身近なところでJTBという名前に接してもらい、他の旅行にもつながれば」
高齢者の運転は突然の体調不良など不安材料が多いが、免許を返納すべきと思っても移動手段がなくなるのは困る。JTBのねらい通りの波及効果があるかどうかは不明だが、こうしたサービスは高齢化社会に適したとても良いサービスだと思う。(ライター:okei)
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