2016年01月30日 10:31 弁護士ドットコム
自宅を売却する際、家の中で家族が自殺したことを告知する必要はあるのか。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、そんな疑問を抱える男性が相談を寄せた。
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男性によると、4年前、自宅でうつ病の家族が自殺。男性はその家に現在も住み続けているが、結婚を機に、新たな家を購入するため売却を考えているという。男性は、売却する際に、家族の自殺について告知するべきかどうか迷っており、告知すべき期間などのルールはあるのかと質問している。
自宅を売却する際、家族が自殺したことについて、仲介する不動産会社や買い手に告知する義務はあるのだろうか。関戸淳平弁護士に聞いた。
「自殺や殺人といった事実は、物件の心理的瑕疵(欠陥)になり、原則として、売買契約上の告知義務の対象となります。
このような事実は、物件の『住み心地』に影響を与える事実であり、購入判断に影響を与えます。そのため、雨漏りなどの物理的瑕疵と同様に、物件の瑕疵とされるのです」
関戸弁護士はこのように述べる。
「もっとも、心理的瑕疵は主観的なものであり、年月の経過により薄れていくものです。一般人が嫌悪感を抱かないといえる程度まで風化した場合には、瑕疵ではなくなり、告知義務もなくなります」
どのくらい時が経てば、告知義務がなくなるのだろうか。
「どの程度の年月で告知義務がなくなるかはケースバイケースであり、事件・事故の重大性や経過年月、買主の使用目的(居住用か事業用か、建物を取り壊す予定か)等によって異なってきます。
居住用建物の売買においては、心理的瑕疵が認められやすい傾向にあります。約6年前にマンションのベランダで首吊り自殺があったことを買主に告知しなかったというケースで、売主の告知義務違反を認め、契約解除と損害賠償を認めた裁判例もあります。
おたずねの件については『瑕疵』と判断される可能性が高いため、告知しておくことが無難でしょう。その際、売却金額が減額されることもあり得ますが、契約後のトラブルを避けるためには、やむを得ないと考えられます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
関戸 淳平(せきど・じゅんぺい)弁護士
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。
事務所名:横浜ユーリス法律事務所
事務所URL:http://www.jurislaw.jp/