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MACO、ポジティブなラブソングを作った理由を語る「後ろ向きな感情が一切沸いてこなかった」

2016年01月29日 15:21  リアルサウンド

リアルサウンド

MACO

 MACOが、2月3日に2016年第一弾シングル『恋心』をリリースする。表題曲はドラマ『東京センチメンタル』の主題歌として書き下ろしたもので、彼女にとっては、より幅広い層へリーチを広げることになるであろうストレートなラブソングだ。ほかにも、MACOファンにとってはお馴染みとなる“ぐっさん”こと山口隆志の手掛けた「夜明けがくるまで」や、MACO自身が作曲に携わった「出逢い」などを収録した同作について、リアルサウンドではMACO本人にインタビューを実施。躍進の年となった2015年の振り返りから、同作の制作秘話、彼女の作詞に影響を及ぼした心境の変化や、2月7日より行なう全国ツアーライブツアーなどについて、じっくりと話を訊いた。(中村拓海)


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■「男性が聴いても同じような気持ちになれるよう、<僕>というワードを使った」


――2015年は1stアルバム『FIRST KISS』のリリースやテレビ出演の増加など、MACOさんにとって、これまでよりも多くの人に自身の音楽を届けた1年でしたね。


MACO:1年ごとに手応えを感じる瞬間は確実に多くなっています。テレビ出演やCDのリリースも良いペースでできていて、付いてきてくれる方も徐々に多くなっている印象もありますし。でも、どこかでまだ足りないなという自分の反省点も1年ごとにしっかりあるので、そこは忘れないようにやっていきたいですね。


――『FIRST KISS』は、これまでの“切ないラブソング”というイメージに沿った楽曲だけではなく、音楽的な挑戦の多いアルバムでした。なので次のシングルはどうなるかと楽しみにしていたのですが……。


MACO:またラブソングなんです(笑)。


――でも、それぞれの楽曲にしっかりと色があって面白いなと感じています。作編曲に関しては、MACOさんの楽曲ではお馴染みになりつつあるMUSOHさんと山口隆志さんがそれぞれ参加しているほか、3曲目「出逢い」はMACOさんとRICKEYさんの共作曲というバランスの良さがあって。


MACO:そうですね。相性の良い方たちと再びタッグを組ませていただきました。唯一RICKEYさんだけが初めてなのですが、彼はストレートにいろんな意見をくれたので、私もそれに触発されて素直にやり取りをするようになり、セッションしながら一曲を作ったという感じです。


――表題曲の「恋心」は、ドラマ『東京センチメンタル』(テレビ東京系)の主題歌として書き下ろしたものですよね。具体的にどういうリクエストがあったのでしょうか。


MACO:主人公は同世代の女性、というわけではなく、吉田綱太郎さんが演じる和菓子職人さんなので「あまり女の子らしすぎないように」という要望をいただきました。なので、男性が聴いても同じような気持ちになれるよう、<僕>というワードを使ってみたり。実はこういう曲を今まで書いてきていないので、私にとっても新鮮な体験でした。


――実際にドラマの撮影現場を見て作詞をしたとか。


MACO:はい。舞台である和菓子屋さん『くるりや』や東京の下町を歩いて、少し懐かしい香りがすると感じたので、その要素も入っていると思います。あと、このドラマが4月まで続く作品ということもあり、発売は冬だけど、春も少し意識して作った曲なんですよ。


――たしかに先日公開したMVも、生花に囲まれている映像ですし、春らしさを強調したものになっていますね。


MACO:MVには歌詞に沿って「恋が花開くように」というキーワードを込めていて。映像はまだショートバージョンしか公開していませんが、MVのシーンの中の1つにチューリップを室内の温度で咲かせるというシーンがあるんです。最初は閉じてますけど、スタジオ内の温度を上げてどんどん花開いていく様子は素敵でした。


■「後ろ向きな感情が一切沸いてこなかった」


――レコーディングの際に大変だったことはありますか?


MACO:「恋心」は、一度しっかりとしたレコーディングを終えたのですが、家に帰って聴いたときに納得できなくて、全部録り直したんです。いつも使っているスタジオは二つあって、うち一つは自分の中で「音楽の神が宿っているスタジオ」と思っているもので。別のスタジオで録っていてあまりうまくいかなかったものが、そのスタジオだと、すごく良いテイクが上がったりする。「恋心」もそうで、他の曲を録るついでにトライさせていただいたものがばっちりだったので、そのテイクを使用しています。ちなみに「Kiss」もそうだったんですよ。


――その分、歌の強度はしっかりとパッケージングされているわけですね。「夜明けがくるまで」はしっとりと歌い上げている楽曲ですが、こちらも録音では苦労しましたか。


MACO:ぐっさん(山口氏)から曲をいただいて、聴いた瞬間に歌詞が降りてきたんですが、レコーディングは大変でしたね。プリプロは歌詞を書き上げてすぐというタイミングもあってか、かなり良いテイクが録れたんですが、本番RECではそのニュアンスを出せなくて。結果的にプリプロ音源が一番良いということで、そのままCDにしました。


――この曲は、1番はアコースティックギターのみで、2番からトラックが入ってくるという変則的な楽曲で、ライブ映えしそうだなという印象です。


MACO:すごく自分がやりたかった曲でした。ブリッジを作る必要がないくらい、言いたいことを言えた曲だと思っていて。2番の歌詞は「恋愛って矛盾ばかりだなぁ」という気持ちを伝えるような感じで、ぐっさんもMACOもお気に入りだったので、最後にもう一度繰り返すようにしたんです。「出逢い」は自分の中から出てきた懐かしい感じのサウンドをベースに組み立てていきました。


――同世代なのでなんとなく伝わるのですが、MACOさんにとっての“懐かしいサウンド”は90年代のJ-POPですよね。


MACO:そうなんです。ZARDさんとか、古内東子さんとか……。


――MACOさんの口から古内さんの名前が出てくるのは意外でした。


MACO:古内さんといえば「誰より好きなのに」ですが、あの曲を聴いたときに自分と通ずるものを感じたんです。そこからいろんな曲を聴くようになって、懐かしい感じもするけどタイムレスで、恋愛の曲が多かったりして。ほかにも杏里さんや沢田知可子さんも大好きです。その辺りのニュアンスが自分の書いたメロディでは溢れ出てきますね。


――歌詞に関しては、懐かしさとは無縁な、いまここにいる等身大なMACOさんの視点から描かれています。「恋心」を春に合わせて書いたということですが、ほか2曲も前向きな視点になっているのが印象的でした。春は出会いと別れの季節ですが、MACOさんにとっての春はポジティブなイメージの方が強い?


MACO:春に対するイメージというより、今回の3曲を作った環境において、そういう後ろ向きな感情が一切沸いてこなかったですね。いまの私はラブソングしか書くつもりがないというか。自分から湧き出るものって、何をしていても恋愛に左右されているなと自覚していますし、それをリアルに表現できるのであれば自分でも納得がいくし、ファンのみんなも求めてくれているだろうなと思います。


――歌詞は書き溜めたりもしますか?


MACO:常に書き溜めています。早く曲を作りたくて制作したくてたまらないくらい、歌詞は日頃から書いていて、騒がしい場所にいてもパッと浮かんだらトイレに行って打ち込んだり。基本的には夜に一人で書くことが多いかも。


――なるほど。歌詞を読んで、「恋心」「夜明けがくるまで」「出逢い」の3曲は書いた時期がもしかしたら一緒なのかなと思ったのですが。


MACO:同じくらいの時期ですね。「恋心」と「出逢い」は恋愛の最初にくる“恋に惑わされる”感じで、「夜明けがくるまで」はそこから少し経って、夜中に一人で思いふける様子を描いたものです。


――とくに「恋心」と「出逢い」は同じ主人公のように読めました。髪の毛を触る癖が共通していたり。


MACO:そこはあえて入れましたね。自分自身がそういう癖を持っている人間だから、等身大を表現するなら3曲中2曲に入っていてもいいでしょと思ったので。他のアーティストさんでも、何度も出てくるフレーズはあるし、今後もどんどん使っていきます(笑)。


■「自分の歌に自信があるので、そこだけは絶対に負けないという気持ち」


――ここまで話してきて、前回のインタビュー時とかなり印象が変わったなと感じています。


MACO:え、どこが変わりました?


――明るくなったというか、前回はどこか人見知りしている感じがあったので。


MACO:(爆笑)ホントですか!? まだ人見知りは治っていないですけど、たしかにメイクさんからも「最近顔つきが変わった」と言われましたし、自分でも心が強くなったとは思っていますね。


――強くなった、ですか。


MACO:打たれ強くなったというか、自分の軸がしっかりとしてきた印象で。2015年はいい年だったから、その波を途切れさせないように、あまりネガティブなことは考えたくないんです。ボイストレーニングの先生にも「意地悪されたり嫌なことを言われても、動じたら負けだからご機嫌でいなさい」と教えてもらったのですが、まさにその通りだと感じていて、反省点があってもそれを表に出さず、バリアを張って常にご機嫌でいるように。


――MACOさんの“軸”とはなんでしょう?


MACO:負けん気ですね。自分の歌に自信があるので、そこだけは絶対に負けないという気持ち。これまで自分が憧れの対象にしていたアーティストさんが、どんどんライバルになっていく感覚が自分の中にあって。すごく好きだったけど戦わなきゃいけない位置になってきたから、その人たちに負けないようにしたいんです。よく思うんですけど「MACOの容姿や行動には興味がないけど、歌はいいよね」という人が増えて欲しい。


――だからこそ、しばらくは“ラブソング”という武器を磨いていくわけですね。


MACO:はい。10代のティーンに人気と言われて、今はそういう感じなんですけど。それがもっともっと幅広い年代に響いていきたいな、という思いも2016年はあります。


――ここまで強い意志をもっているからこそ、後ろ向きの歌詞も出なくなっているんですね。


MACO:そうかもしれません。だから歌詞も前向きになるし、感じたことを一つ一つ丁寧に書けるようになりました。その反面、初心を忘れちゃダメだとも思っています。


――初心を忘れないために行なっているルーティーンなどはありますか?


MACO:これといってあるわけではないですが、必ず「ありがとう」ということですね。あとはマネージャーさんに過去の音源を聴かせて貰ったとき。恥ずかしくもなったけど、同時に「良い歌書いてるじゃん、当時の私!」という気付きもありました。


――そうやって初心を忘れずにいながらも、2015年は新たなステージへ足を踏み入れた年でした。テレビ出演やYouTubeドラマ『ラストキス』での演技、『東京ランウェイ2015S/S』や『神戸コレクション2015S/S』でのパフォーマンスに加え、「Kiss」ではモデルたちとコラボレーションするなど、ファッションや演技面へのアプローチも多かったですよね。


MACO:ドラマがあることによって自分の曲がより引き立つことを実感しましたし、モデルさんとのコラボでは、自分の曲がもっと可愛く見えました。まこみなちゃんが「ふたりずっと」の振り付け動画を作ってくれたことで違う世代に楽曲が浸透したりと、色々な人に支えてもらってもいますね。


――それらの活動を通して学んだことは?


MACO:これは『神戸コレクション』のときに気付いたんですけど、「一点を見つめて歌ったらみんなが心配しない」ということですね。ライブ中に呼びかけてくれると、すぐ反応したくなるんですけど、あまりキョロキョロしすぎると不安になっているように映るらしくて。もちろんアップテンポな楽曲ではみんなの顔を見て歌いますが、バラードに関してはなるべく視点を定めるようになりました。


――ライブの話になりましたが、2月7日からは全国ツアーもスタートします。前作『FIRST KISS』で楽曲のレパートリーはかなり増えましたが、今回の作品をライブではどのように表現したいですか。


MACO:MACOは普段のライブで声を使って“ちょい切なさ“を表現することを大事にしていて。最終的には楽しかったけど、終わったら心のどこかに切なさが残るようなライブをしたいと思います。


――今回は豊洲PITなどがツアーの舞台ですが、大会場で自身のライブをどのように見せたいと考えていますか?


MACO:細かい演出は(取材段階では)まだ決まっていないのですが、グッズや衣装、ステージなども含めて、トータルでキュートに見せたいなと思っていて。ファンのみんなと交流していても、いまは大人っぽいMACOよりもキュートな方が見たいのかなと思えることが多いんです。


――24歳って大人っぽくもティーンっぽくも振れる時期ですよね。


MACO:その中間くらいを目指したいです。カジュアルにキュートなくらいが色んな世代に届くと思うし、あと普段は喋ったらそんなにカワイイ感じじゃないので。


――クールで面白いという印象でした(笑)。


MACO:二重人格みたいなものです(笑)。ステージに立つとスイッチが入るのですが、MCのときは素の自分が出やすい。ライブではそこを隠さないようにしていますが、まだテレビなどでは出せない顔なので、今年以降は素の自分をテレビで徐々に表現していきたいと思っています。


――ちなみにライブに足を運ぶファンの方は、この1年でどう変わりましたか?


MACO:若い男性の方が増えたという印象です。ライブをしていても、これまでのような女の子の黄色い声援ではなく、はっきりと男性だとわかる声が聴こえるようになりました。SNSのリアクションに関しても同じです。


――そういう意味で、「恋心」を男性と女性の両方が共感できるラブソングにしたのは、ちょうどいいタイミングだったかもしれないですね。


MACO:そう思います。実際に「恋心」については「共感しました!」と言ってくれる男性がいたので。これからもMACOの歌詞を見てキュンキュンしてほしいし、男性目線の曲も書いてみたいですね。


――男性目線の曲を書くために、参考として聴くアーティストはいるのでしょうか。


MACO:スガ シカオさんや星野 源さん、SKY-HIさんに平井大さんなどです。男性目線から書いていることを、自身に置き換えて「あっ、こんなふうに自分の好きな人に思ってもらえたら最高だな」と感じるので、彼らのような曲を書いてみたいと思うようになりました。


――彼らから影響を受けたMACOさんの歌詞が、どのようにアップデートされていくのか楽しみです。2016年の活動に向けて、新たに挑戦したいことは?


MACO:ライブなどで私の衣装を真似してくれるファンの方が増えてきたので、それが最近すごく嬉しくて。今年はファッション方面で色んなことに挑戦して、自分の幅を広げていけたらいいなと思います。


――アーティストとしてはどうでしょう。


MACO:ずっと書き溜めている歌詞もありますし、楽曲もこれまでMACOが挑戦していないジャンルのものも用意しているんです。今年はその曲を何らかの形でリリースしようと思っているので、楽しみにしていてください。