トップへ

甘利氏「釈明会見」でしつこく質問した元朝日記者「ジャーナリズムの力が落ちている」

2016年01月28日 21:31  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

週刊文春に違法献金疑惑を報じられた甘利明・経済再生担当大臣が1月28日、東京都内で記者会見を開き、大臣を辞任することを表明した。記者会見には200人近い報道関係者が詰めかけ、その模様はテレビやインターネットで生中継された。


【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】



1時間10分ほどの会見の前半は、甘利氏が用意した文書を読み上げながら、報道された事実について釈明し、大臣の職を辞することを明らかにした。後半の約35分は、記者との質疑応答だった。



●甘利氏自身の「現金授受」について繰り返し質問


質問したのは、朝日新聞、読売新聞(2人)、日経新聞、テレビ朝日、フジテレビ(2人)、そして、デモクラTVの8人の記者。その中で異彩を放っていたのは、ネットメディア「デモクラTV」の代表をつとめるジャーナリストで、元朝日新聞編集委員の山田厚史さんだ。



多くの記者が秘書の行動や大臣を辞めた理由などについてたずねるなかで、山田さんは、甘利氏自身の「現金授受」に絞り込んで、何度もしつこく質問を繰り返した。



週刊文春は、甘利氏が大臣室と地元事務所で、千葉県の建設会社の総務担当者から現金50万円が入った封筒を受け取り、スーツの内ポケットに入れたと報じた。一方、甘利氏はこの日の会見で、「政治家以前に人間としての品格を疑われる行為で、そんなことはするはずがない」と否定した。



ところが、山田さんは甘利氏の説明に納得せず、「(封筒の)中身を確認しなかったのか?」「1回目は現金が入っていたのに、2回目は現金が入っていると思わなかったのか?」「無防備にもらっているが、事務所に来る人が現金を置いていくことはよくあるのか?」「秘書が無防備だったと言ったが、自分のことは無防備だと思わないのか?」といった質問を矢継ぎ早にぶつけた。



その質疑応答は8分間に及んだ。



甘利氏は、それらの質問に対して、「開けていないから、中身はわからない」「(2回目に現金を受け取ったときは)たぶんそうだろうと思ったから、ちゃんと処理をしておけと指示した」「(来訪者が現金を置いていくようなことは)ない」「(無防備だったかについては)私の不徳だ」と答えた。



●「馴れ合いの質問をしている記者は情けない」


他の報道関係者からは「長いよ」という声も出ていたが、山田さんは記者会見後、弁護士ドットコムニュースに対して、「しつこい質問」の意図について次のように語った。



「この記者会見は多くの国民が関心を持っているので、ジャーナリストがその代弁者となって追及しないといけない。そのときに、仲間の論理のような馴れ合いの質問をしていたら、ジャーナリズムの命を失う。



それなのに、ほかの記者たちは、どうしてもっと追及しないのか。事件を解明しようという姿勢ではなく、どうしてこんなことになってしまったのかとか、悪意をもった人が近づいてきたらどうすればいいのかという質問をしている記者もいた。



こういう記者会見に出て、質問を浴びせるのがジャーナリストだと思う。新聞記者がこんなことをやっていたら、本当に情けない。今回の記者会見で、権力を監視するジャーナリズムの力が落ちているなと感じた」



(弁護士ドットコムニュース)