多くの日本企業にとって人件費を抑えることは最優先事項です。一部の正社員をパートや派遣に切り替えたり、最近では「代行サービス」を利用して業務を外注することで手間やコストを抑える企業もあります。
一般的によく耳にするのは秘書や経理、電話の代行でしょうか。個人が利用するものでは、オンラインゲームの「経験値稼ぎ代行」や、「友達代行」なんてものまであり、今後代行業がますます盛んになっていきそうです。
先日、中国のネットで変わった代行サービスの求人広告が話題になっていました。この代行サービスは、なんと依頼を一件受けるだけで、クライアントから数千万~1億円以上の報酬がもらえるようです。では、この一生分のお金が稼げる代行サービスは一体何でしょう。説明する前にまずその求人広告をご紹介します。(文:ラ ガイシュン)
「25~35歳の男性、前科がなければ誰でも応募可能です」
代わりに刑務所に入ってくれる人急募
刑務所に2年6か月(途中交代も可能)入ってくれる人に、260万人民元(約4800万円)を入所前に支払います。刑務所関係者には根回しをしておいたので、中は安全です。犯罪の前科がなければ誰でも応募可能です!
別の求人広告では、四川省の刑務所に5年7か月入ってくれる人を募集しています。入所日が近いのか、かなり急いでいる様子がうかがえます。
800万人民元(約1億5000万円)を支払います。場所は四川徳陽市です。25~30歳の男性で、かつ前科がない方は、お早めに連絡ください! 本当に早く見つけたいので、電話でお問い合わせください!!
この恐ろしいサービスは「囚人代行」といいます。中国だけでなく、世界で見ても有数の稼げる代行サービスでしょう。もちろん日本やアメリカなど法律制度が整っていて、国民のモラル意識が高い国なら、こんな仕事はあり得ません。
しかし、ワイロ問題や汚職事件が頻発の中国だったら、状況は全然違います。政府の要人や有名人は犯罪を起こしても、法律の裁きから逃げる方法はいくらでもあります。残念ながら、広告の番号に電話をしても誰も出ませんでしたが、実際にこうした仕事が存在している可能性は十分あるでしょう。
中国政府を賛美する「コメント代行員」、書き込み1件7.5円
次に私が紹介したい代行サービスは、一発で1億円稼げるような犯罪っぽいサービスではありません。逆に一件一件は7.5円しかもらえない地味なお仕事です。
実は十数年前から、中国政府は世論誘導のためにインターネット工作員を使っています。いわば「コメント代行員」として雇われた、彼ら彼女ら毎日のお仕事は、様々なブログや掲示板、SNSへアクセスし、政府を批判する書き込みを発見したら、コメントで当事者を中傷する、というものです。
もちろん中傷以外にも、政府を賛美したり、国民の考えを誘導したりするコメントを書き込むこともあります。コメントを1個書くと0.5人民元(約7.5円ぐらい)がもらえるのですが、中国では0.1人民元を「毛」と言うので、彼らインターネット工作員は「五毛党(ごもうとう)」とも呼ばれています。
その存在は海外でも知られていて、BBCニュースも五毛党に関して、「ネット上の不利益な情報をなくすために、政府は彼らを起用している」と指摘していました。もしこのインターネット工作集団がいなかったら、すでに革命の炎が中国全土に広がっていたかも知れませんね。
【プロフィール 】
ラ ガイシュン 香港出身。2009年に来日し、現在は都内IT企業セブンコードにデザイナーとして勤務している。本業以外にも、英語・中国語の通訳や雑誌コラムの執筆、海外貿易アドバイザーなど多岐にわたる分野で活動中。【Facebook】
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