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マイナンバーカードとポイントカードが連携? リスクはないのか

2016年01月28日 12:12  弁護士ドットコム

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今年から運用が始まったマイナンバー制度。そこで使われる「個人番号カード(マイナンバーカード)」に、民間企業のポイントカードや図書館カードなどの機能も追加して、それらのカードを一本化する制度案を総務省が検討している。


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「個人番号カード」は、公的な個人証明書としても使える顔写真入りのICカードで、希望者全員に無料で配布されている。



高市早苗総務大臣は、総務省の仕事始め式で、個人番号カードの活用方法に言及した。「個人番号カードのICチップの空き領域を活用して、民間企業のポイントカードやクレジットカードなどそれぞれのサービスに連携できる仕組みを総務省で構築してみたい」。総務省内に新たに検討チームを発足させ、民間企業の要望を聞くなどして、新たなサービスの具体化を進める考えを示した。



総務省の担当者は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「検討チームはすでに発足しており、実際に動き出すのは今年2月以降になりそうだ。平成29年度を目処にシステム作りができれば」と答えた。



今回のニュースについて、ネット上には「カード複数枚持たなくていいから助かる」という声がある一方、「情報流出リスク高すぎ」「なんか話が全然違ってきてないか?税務と社会保障のみとか言ってなかったか?」と不安や疑問の声があいついでいる。このような動きをどう見たらいいのか。福本洋一弁護士に聞いた。



●個人番号「カード」の利活用の問題であることに注意


「今回の検討案は、個人番号カードを広く普及させるための施策といえるでしょう。しかし、利便性が高まれば高まるほど、利用者にとっても、また民間企業にとっても、リスクも増加すると考えられます」



福本弁護士は、このように話す。



「個人番号カードには、表面に本人の身元を証明する機能、裏面に本人の個人番号を証明する機能があります。個人番号を提供する際に求められる本人確認手続(身元確認+番号確認)が、これ一枚で完結するという点に大きな役割があります。



もっとも、そのためだけに個人番号カードを発行しても、あまりメリットはないでしょう。



そこで、個人番号カードに埋め込まれるICチップの空き領域を民間にも開放し、機能を追加することで、個人番号カードを広く普及させようという取り組みがされているのです」



民間に開放することによって、どのようなリスクが考えられるのだろうか?



「今回の検討案が報じられた後、事業者の方から『個人番号』の民間利用が解禁されたそうだが、どこまで使えるのかといったご質問を受けることがありますが、それは誤解です。



あくまで、個人番号『カード』の利活用の問題であって、『個人番号』自体は、現在も税と社会保障分野での限定利用が前提とされ、厳格な管理が求められる方針に変わりはありません。



たとえば、個人番号『カード』を民間で利用する場合に、カードの裏面の『個人番号』をコピーしたり書き写したりすると、番号法に違反します。事業者は、本人確認の証拠として個人番号を記録することのないように注意する必要があります」



個人番号カードと民間のポイントカードが連携した場合、どのような注意が必要になるのだろうか?



「個人番号カードは、印鑑登録カードのような厳重な管理を要する機能が最初から付加されていたり、オンライン取引などでの認証機能も用意されています。



そのため、個人番号『カード』の利用が広がれば、『なりすまし』などに利用される危険性も高まるといえます。結果的に、『個人番号』そのものの漏洩よりも経済的損失を受ける可能性が高いと思われます。発行を受けたいと考えている人は、そういったリスクを踏まえて判断する必要があるでしょう」



最後に、福本弁護士は、連携よりも前に取り組むべき課題を指摘した。



「行政としては、広く安全に普及させるために、発行を受ける側が、印鑑登録カードの機能などの、個人番号カードに組み込むことを望まない場合、その機能を除外できるようにすべきと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
福本 洋一(ふくもと・よういち)弁護士
弁護士法人第一法律事務所パートナー弁護士、システム監査技術者。2002年同志社大学大学院修了、03年弁護士登録。個人情報・マイナンバー等の情報管理・漏洩対応等を取り扱っており、日本経済新聞社の2015年度「企業が選ぶ弁護士ランキング・情報管理分野」にも選出されている。
事務所名:弁護士法人第一法律事務所
事務所URL:http://www.daiichi-law.jp/