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ベッキー不倫報道で話題になった「LINE盗み見」法的問題を想定シーンごとに分析

2016年01月28日 11:11  弁護士ドットコム

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ベッキーさんと「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音さんの不倫報道で、2人のものとみられるLINEのやりとりが流出したことをきっかけに、LINEのやりとりを「盗み見」される懸念が指摘されている。LINEは1月22日、公式サイトで第三者によるLINEアカウントへのアクセスの可能性のある3つのケースを発表した。


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今回の不倫報道後にネットで指摘されている、他のスマートフォン端末からアクセスした可能性について、LINEは「極めて限定的な状況下にない限り、起こりえません」と可能性が低いことを指摘しつつも、特定の条件を満たした場合「盗み見」が可能になることを認めている。



また、PCやタブレットなどスマートフォン端末以外でのアクセスは、ログインの際にメールアドレスとパスワードが必要になったり、スマートフォンに通知が届いたりするため、「可能性は限りなく低い」とした。



スマートフォン自体の盗難等によるアクセスについては、スマートフォンのロック機能やパスコードロックが適用されない場合には、盗み見される可能性があると警告した。



東洋経済オンラインに掲載された「ベッキーの『不倫漏えい』の原因はシンプルだ」という記事で、ITジャーナリストの本田雅一氏はLINEの発表を分析。そのうえで、「もっともシンプルな方法」として、川谷さんが、新バージョンのiPhoneに乗り換えた後に旧バージョンの機種を使わないまま放置している可能性や、初期化しないまま古いiPhoneを第三者に提供した可能性を挙げている。



LINEのやりとりを盗み見ることは、法的にはどんな問題があるのだろうか。インターネットの法律問題に詳しい清水陽平弁護士に聞いた。



●LINEを盗み見ることは、プライバシーの侵害にあたる


「公開を予定していない私的なやりとりは、プライバシーとして保護される対象です。そのため、どのような手段をとったとしても、他人のLINEを盗み見ることはプライバシーを侵害するものと考えておいたほうがよいです。



プライバシー侵害があれば、民事上の不法行為となり、LINEを盗み見られた人は、損害賠償を請求できることになります」



清水弁護士はこのように指摘する。浮気の有無を調べるような場合でも、不法行為にあたるのだろうか。



「仮に妻が浮気調査のために行ったとしても、原則として、プライバシー侵害を正当化する理由にはなりません。このような方法は自力(じりき)救済と言われ、原則として認められるものではないのです。



実際に、このような行為がプライバシー侵害として損害賠償請求されるということはあまり聞きませんが、それは、後ろめたさ等から実際に請求する事例が少なかったり、離婚事件の慰謝料等の算定の際に実質的に考慮されたりしているからだろうと思います」



●LINEが想定する3つの場面を分析


では、具体的なケースについて見ていくと、LINEが指摘する3つの場面については、どう考えればいいだろうか。



「ます、『他のスマートフォン端末によるアクセス』ですが、この方法はiPhoneをiTunesでバックアップし、別のiPhoneにバックアップデータを展開した後、元のiPhoneのLINEアカウントでログインすることによるという方法のようです。



この方法については、別のiPhoneに元のiPhoneのLINEアカウントでログインすることになるので、不正アクセス禁止法に抵触しないかどうかが問題になります。



不正アクセス禁止法は、簡単に言うと、第三者のID、パスワード等を利用してログイン等をすることを禁止しています。そうすると、これに抵触するように見えます。



しかし、不正アクセス禁止法が禁止するのは単なるアクセスではなく、あくまで電気通信回線に接続し、その電気通信回線を通じて行われるものに限られるとされています。



別のiPhoneに元のiPhoneのLINEアカウントでログインするのは、バックアップされた情報を読み込むために必要なだけで、電気通信回線に接続している必要はないと思われます。



したがって、この行為は不正アクセス禁止法に抵触するものではないといえそうです」



PCやタブレットなどスマートフォン端末以外でアクセスした場合については、どうだろうか。



「この方法だと、登録メールアドレスとパスワード、デバイスの利用初回時にはランダムなPINコードが必要となり、認証されると、電気通信回線を通じて通信が同期される仕組みです。



そのため、この方法を本人に無断で行えば、不正アクセス禁止法に抵触することになります。



ただし、他デバイスからのログイン時には、本人に通知が届くとのことなので、不正アクセスがされたとしてもすぐに気付く可能性が高いでしょう。



3番目の、スマホが盗まれた場合は、窃盗罪の問題になるでしょう。ただし、盗み出したのが配偶者や同居の親族の場合、その窃盗行為については親族間の犯罪に関する特例があり『刑を免除する』とされています。



仮に、配偶者や同居の親族がスマホを持ち去ってLINEを盗み見ても、窃盗罪に問われることはないです」



●乗り換え後の「旧バージョンのiPhone」を盗み見ていた場合は?


本田雅一氏が「もっともシンプル」と指摘する、乗り換えた後の古いiphoneを盗み見たというケースをどう考えればいいのか。



「まず、旧iPhoneが、本人の意思で提供したのでなく、無断で持ち去られたのであれば、先ほどと同様、窃盗罪の問題になるでしょう」



では、旧バージョンのiPhoneを任意で提供した場合はどうか。



「任意で提供している場合に限らず、持ち去られた場合でも、新しいやり取りを盗み見るためには旧iPhoneが電気通信回線に接続しログインされている状態になることが必要です。



iPnohe使用者は特に意識をすることなく自動でログインされてしまうため、『識別符号を入力し』たといえるかという問題があり得るものの、形式的には不正アクセス行為に当たり得ることになります。



端末に記録されている過去のやり取りを盗み見ても不正アクセスの問題にはなりませんが、新しいやり取りを盗み見ると問題になり得るということです」



清水弁護士はこのように分析していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2015年6月10日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル(弘文堂)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp