FIAは今週の金曜日に開かれるテクニカルディレクターミーティングで、彼らが選んだF1コクピット保護策を提示する予定だ。
先週FIAが、以前から検討していた3種類のデザインについて再びテストを行った結果、メルセデスの「ハロ(halo:後光のような丸い光の輪を意味する)」(写真)が最有力候補となったようだ。他ふたつのコンセプトは、ノーズに設けたロールケージから柔軟性のある3枚のブレードが伸びるデザインのアップデート版(AFP-V2と呼ばれる)と、車体中心線に平行する3本のバーで構成されたロールケージがフロントバルクヘッドとドライバー頭上のエアインテークをつなぐものだった。いずれもFIAが進めているドライバー保護対策の一環として、アクシデントの際に脱落したホイールなどがドライバーを直撃するのを防ぐために考案されたアイデアだ。
FIAはテストを経て、最も優れているとの結論に達したハロ型について、金曜日の会合で試験結果の報告とプレゼンテーションを行う。
FIAは2017年から新デバイスを導入することを目指しているが、まだ克服すべきハードルはいくつもある。現時点でのハロに関する懸念のひとつとして、他のふたつのコンセプトとは異なり構造的に衝撃吸収能力を持たないことが挙げられている。したがって飛来するホイールを食い止めるには、ある程度の弾力性を持たせて作る必要がある。またドライバーたちも同デザインを支持していると言われるが、前方を見るときはそれほど邪魔にはならないものの、やや上方を見上げる場合、たとえばスパのオー・ルージュやオースティンのターン1などで、デバイスが視界を遮る可能性があることだ。
しかし、FIAは近年の度重なる事故発生を憂慮し、何らかの形でこの種のデバイスの導入を推進する考えだ。
すでにハロが装備されていたとしても、おそらくジュール・ビアンキやダン・ウェルドンの命は守れなかったと考えられ、2014年日本GPで起きたビアンキの事故の再発を防ぐために、これとはまた別の安全対策がとられている。だが、ジャスティン・ウィルソンやヘンリー・サーティースが死亡した事故については、このような保護策が効果を発揮した可能性が高い。また、過去に検討されたジェット戦闘機のようなクローズドコクピットとは異なり、ハロにはアクシデントが起きたときにドライバーの救出が比較的容易という利点もある。
金曜日のミーティングで話し合ったあと、現行のマシンにどのようにして取り入れるかはチームのテクニカルディレクターたちに任される。ハロの取りつけに関する設計上の大きな課題は、特定の位置にジョイントを設けて開閉型にするかどうか、そしてシャシー側にどのような補強が必要になるかだ。
FIAの立場から言えば、全車共通の統一デザインとするのが理想的に違いない。しかしFIAはチームが自由にデザインしたいと望むのであれば、チームの責任において個別にテストを行うことを条件に、それも認める考えだという。