2016年01月26日 15:51 弁護士ドットコム
カレー専門のチェーン店「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋が廃棄物処理業者に処分を委託したビーフカツが、スーパーマーケットの店頭に並んでいたことが判明し、騒動になっている。この事件で、廃棄カツを不正に転売したとされる「みのりフーズ」の実質的経営者の男性が、「違法性があるとは全然思っていない。タダでもらって売ったのならともかく」「私ら昔食べる物が無いもんだから腐ったご飯も洗って食べた」など、開き直りともとれる発言をしたことが物議を醸している。
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報道によると、壱番屋は、愛知県内の工場で製造した冷凍ビーフカツに異物が混入したおそれがあるとして、約4万枚を廃棄処分するよう廃棄物処理業者「ダイコー」に依頼した。しかしダイコーは、壱番屋に「すべて堆肥化した」とウソの報告をして、冷凍カツを食品として製麺業者「みのりフーズ」に横流しした。さらに、みのりフーズから複数の業者を介して、愛知県内のスーパーマーケットなどで販売されていた。
みのりフーズの実質的経営者は違法だと考えていないようだが、実際はどうなのだろうか。冷凍カツを横流ししたダイコーと、横流し品を購入・転売したみのりフーズは、法的にはどんな責任を問われる可能性があるのか、徳永博久弁護士に聞いた。
「報道されている事実を前提とすると、ダイコーやみのりフーズが行ったことは、廃棄物処理法や食品表示法、食品衛生法に違反する可能性があります」
徳永弁護士はこのように切り出した。
「まず、ダイコーは、廃棄カツを横流ししていたのに、壱番屋から委託を受けた際に交付された産業廃棄物管理票(マニフェスト)に、『すべて堆肥にした』とウソの報告を記しています。
これは、廃棄物処理法29条6号の虚偽記載にあたるので、ダイコーの代表者は、6月以下の懲役または50万円以下の刑事罰を受ける可能性があります。法人であるダイコー自身も、罰金刑を受ける可能性があります(同法32条)。
次に、横流し品を転売したみのりフーズは、『CoCo壱番屋』のダンボールから箱を入れ替えた上で、品名と賞味期限しか表示のない状態にしたということです。
これは、食品表示法4条が求める『食品名・保存の方法・消費期限・原材料』といった一定項目の表示義務に違反していますので、みのりフーズの代表者は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられるか、場合によってはその双方に処せられる可能性があります(食品表示法18条)。
さらに、横流しされた冷凍カツには、異物混入の疑いがあったとのことです。実際に異物が混入していた場合、みのりフーズの代表者は『異物の混入などにより人の健康を損なうおそれのあるもの』を販売したこと等を理由として、食品衛生法71条1号により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
法人であるみのりフーズ自身も、罰金刑が課される可能性があります(食品表示法22条、食品衛生法78条)」
「廃棄カツを食べてしまい、その結果、体調不良などの害悪が発生した場合には、ダイコーやみのりフーズに対して、不法行為に基づく損害賠償請求として、治療費などの損害や、場合によっては慰謝料を請求することが考えられます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
德永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検検事等を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。訴訟では「無敗の弁護士」との異名で呼ばれることもあり、広く全国から相談・依頼を受けている。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/