世界ラリー選手権(WRC)に参戦するフォルクスワーゲンは、開幕戦で観客をはねてしまったヤリ-マティ・ラトバラ(フォルクスワーゲン・ポロR WRC)を擁護し、接触に気づかなかったというラトバラの主張を支持した。
ラトバラはWRC開幕戦モンテカルロのSS11でコースオフ。コースへ復帰する際に男性観客1名と接触してしまった。幸い男性に大きな怪我はなかったものの、スチュワードはラトバラにはコースへ復帰する前に観客へ被害がなかったか確認する義務があったとしたほか、ラトバラが事故を認識していながら競技を続行した可能性もあるとして、執行猶予付きの1戦出場停止処分を言い渡している。
ラトバラ自身は泥やエンジンルームからの白煙によって視界を遮られていたと主張しており、フォルクスワーゲン・モータースポーツ代表のヨースト・カピートも、この主張を支持している。
「フロントガラスには大量の泥が付着していて、煙も大量に出ていた」とカピート。
「彼はなにかを見ることはできただろう。しかし、ファンがボンネットに衝突する場面は見ていないと確信しているよ。ヤリ-マティは誰かにぶつかって、そのまま走り去るような人間ではない。フロントガラスに虫がぶつかっただけでも、気に病んでしまうような性格なんだ」
スチュワードの発表した声明では、SS11完走後にラトバラがWRCオフィシャルリポーターのジュリアン・ポーターに対し行った発言と、チームが発表したコメントに相違があるとも指摘されている。
ポーターはラトバラがマシンの修理を行っている際にインタビューを行い、「観客と接触したけど、軽くだったからそのまま走り去った。彼が大丈夫か、僕が誰かと接触していないか確認してほしい」とコメントしたとスチュワードに報告している。しかし、ラトバラは観客にぶつかったかどうか定かではないという旨の発言をしたとしている。
この件について、チーム代表のカピートは「ラトバラの人間性を表す事例だ」と応じている。
「ラトバラはマシンを修理しながら、誰かと接触していないか、接触していた場合、相手は無事なのかを確認しようとした。スチュワードには、彼がマシンとラリーだけでなく、観客に対してもしっかりと注意を払っていたことを分かってもらいたい」
ラトバラの主張を支持しているカピートだが、執行猶予付きの出場停止処分については正しいペナルティであると語ったほか、この一件がラトバラのメンタルに影響することはないとも述べている。
「故意にしても偶然にしても、間違ったことをしたという事実は変わらない。彼は間違った対応をしてしまったんだ。もし観客がいるところへコースオフしてしまったら、マシンを停めて怪我はないか確認するべきだ。それが正しい対応の仕方だよ」
「しかし、彼はプロフェッショナルだ。アクシデントに対するチームの対処法にも感謝してくれている」
「すべての状況はPR面やテクニカルな部分だけでなく、人道的観点から見ても完璧にコントロールされている。ラトバラは安定した精神状態で(第2戦)スウェーデンを迎えるだろう」
また、カピートは事故にあった男性と連絡を取ろうと試みたが、失敗したことも認めている。
「フェイスブックやソーシャルメディアを通じて、事故にあった男性と接触を試みた」
「残念ながら連絡を取ることはできなかったよ。しかし、事故現場にいた人々からなんの問題もなかったと聞くことができた」