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TOKIO長瀬智也、演技と楽曲で見せる“大人”の新境地 主演ドラマ『フラジャイル』を読み解く

2016年01月24日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 TOKIOの長瀬智也が主演するドラマ『フラジャイル』(フジテレビ系)がとてもいい。まず、最近はオールバックのイメージが強かった長瀬が、ゆるふわヘアになっているのが純粋にカッコいい。そして、ご存知『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)では、自然の中でたくましく活躍している長瀬が、今作ではクールなスーツ姿で登場しており、実に凛々しい。これまでコメディタッチな役柄に当たり役の多い長瀬だが、ニヒルな医師役も新境地の開拓に繋がるのではないか。


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 原作は、現在『アフタヌーン』(講談社)で連載中の同名コミック。ダ・ヴィンチとniconicoが創設した“次にくるマンガ大賞”にもノミネートされる人気作品だ。長瀬が演じる主人公・岸京一郎は、強烈な変人だが、極めて優秀と周囲から評価される天才病理医。病理解剖や生検などから、病気の診断をする専門医師だ。彼の鑑別をもとに、いわゆる私たちが普段接している医師たちが診断を確定し、治療の方針を固める。患者とは直接関わらず、人知れず命を救い続けるのだ。


 人の命が最優先であるべき医療の現場で、時間やコストに追われ、流れ作業的に診断をしてしまう医師たちに喝を入れる岸。「君たちが医者でいる限り、僕の言葉は絶対だ」と決めゼリフをピシャリと言い放つシーンに、痛快さを覚える。


 やはり、私たちはわかりやすく正義が勝つパターンが好きなのだ。現実の社会では、どんなに一泡吹かせたい相手であっても、こんな風に気持ちよく決めゼリフを言い放てないことのほうが多い。だからこそ、ドラマを見て爽快感を得る。信念を貫き、本来あるべき姿に忠実なキャラクターが、男らしい長瀬とうまくマッチしている。


 長瀬のフジテレビでのドラマ出演は実に12年ぶり。大きな期待が寄せられていたために、視聴率が9%台と予想よりも伸び悩んでいる印象もあるが、1話完結の入りやすさとストーリーのテンポの良さで、これから徐々に火がつくのではないだろうか。


 そんなドラマの脚本やマンガの原作を読み、長瀬が書き下ろした主題歌の「fragile」も秀逸だ。長瀬による作詞・作曲の楽曲が、ドラマの主題歌になるのは、「リリック」(『泣くな、はらちゃん』・日本テレビ系)「ホントんとこ」(『クロコーチ』・TBS系)に続く3作目。番組公式HPには、本人コメントとして「大切な人を失ったり、大切な人が居なくなった悲しい思いの中、強く生きる桜の木を見て感じる“何か”を歌にしました」と綴られている。


 ドラマの舞台である医療の現場では、人の命に直面する場面が多々ある。診断名を書く病理医には重責がつきまとう。そんな岸を演じる長瀬ならではの視点で作られた楽曲は、やさしい歌い出しとギターの旋律がどこか切なく、グッと引き込まれる。


 日常でも、明日が見えなくなってしまうくらいの失望感が人生には待ち構えている。ドラマで描かれる医師たちのように、それぞれが正しいと思っていても、本質を見失うときもある。思い通りにいかない毎日だが、それでも前を向いて一歩を踏み出さなくてはならない。そんな人たちを包み込む、大人の応援歌になりそうだ。(佐藤結衣)