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城田寛治✕北村亮介が考える、WEFUNKの将来ビジョン「空間全体を楽しめる“ライブショー”に」

2016年01月23日 20:01  リアルサウンド

リアルサウンド

WEFUNKが作る「音楽✕ダンス」の魅力と未来

 “ストリートダンスとライブバンドの融合”というコンセプトを掲げ、音楽とダンスの新しいエンターテインメントして注目を集めているWEFUNK。先日公開したSPEEDSTAR RECORDSレーベル長の小野朗氏との対談(「WEFUNK城田寛治✕SPEEDSTAR RECORDS小野朗が提示する、音楽とダンスの新たな関係」)に続き、WEFUNK代表の城田寛治氏と、イベントの振付とディレクション、宣伝などを手がけている北村亮介氏の対談を掲載する。WEFUNKのイベントの魅力、この先のビジョンなどについて語ってもらった。(森朋之)


・「ダンサーがとにかく楽しそう」(北村亮介)


ーー北村さんは2015年6月に行われた「WEEKEND HERO Vol.1」でショー出展後WEFUNKのイベント制作に参加。以前からクラブイベントのショーケース、学生ダンスサークルの公演の振付などを手がけてきたそうですが、WEFUNKに関わるきっかけはどんなことだったんですか?


北村亮介(以下、北村):知り合いのダンサーがWEFUNKのイベントに出演していて、それを見に行ったのが最初です。そのときは「みんな、気持ち良さそうだな」という印象でした。ダンサーのみなさんがとにかく楽しそうにやっていて。羨ましいなという気持ちもありました。


城田寛治(以下、城田):北村さんはWEFUNKのダンサーとつながりがあって、出会う数年前からfacebookでも常に“知り合いかも”の上位に表示されていたんですよね。彼は「TAP JAM CREW」という団体にも所属していて、以前から「お会いしてみたいな」と思っていたんです。


北村:「TAP JAM CREW」はミュージシャン、タップダンサー、ストリートダンサーなどによる100人くらいのグループなんですよ。ショーというよりも、セッションの要素が強いんですけどね。


城田:実際にお会いしてみたら、すごくウマがあったし、音楽にも精通していて。ぜひWEFUNKにも参加してほしいな、と。


北村:WEFUNKの取り組みはおもしろいと思いました。ストリートダンスがすごく流行っていて、ダンススクール、イベントも多いですけど、CDの音源を編集して踊ることがほとんどで、生バンドで踊る機会はまずないと言っていい。しかもこれだけ大規模にやっているイベントはWEFUNKだけです。


ーーCDの音源と生バンドでは、ダンスの感覚もかなり違うんでしょうか?


北村:違いますね。生バンドは、そのときのテンションによって演奏のニュアンスが変わってくるじゃないですか。その変化はダンサーにも影響するし、チームとしての広がりがあるんですよね。


城田:ダンサーからも「(イベントの)収録映像を見て、自分がすごく速いリズムに合わせて踊っていてビックリした」みたいな話をよく聞くんですよ。ミュージシャン的に、いい意味で「走る」という現象が、生演奏のWEFUNKではダンスにも起こるんでしょうね。


ーーなるほど。北村さんがダンサーのまとめ役でもあるんですよね?


北村:そうですね。以前はバンドマスターの方がダンサーもまとめて見ていたんです。でも、ミュージシャンが求める音楽とダンサーが求める音楽は、微妙に違っているんですよ。僕は音楽が好きだし、ダンサーが考えていることもある程度わかるので、ダンサー側のディレクションを担当させてもらって。ミュージシャンとダンサーの間をつないで、WEFUNKとしてのショーを作り上げるということですね。


城田:僕は元々シンガーとしてWEFUNKでパフォーマンスしていたので、どちらかと言えばミュージシャン側の人間なんですよね。だから「ダンサーのトップとして、どんな人がいればいんだろう?」ということがずっとわからなくて。北村さんと知り合って、やっと適任の方が見つかったという安心感がありました。ダンサーで幅広い音楽に精通する方って、なかなかいないんですよ。


北村:ダンサーが使いたがる曲はちょっと独特というか、一般の方が聴いてもおもしろくないことが多いんですよ。ずっと同じビートがループしている曲だったり。


城田:ブレイクダンスの“ブレイク”も、間奏をつなぎ合わせたブレイクビーツのことですからね。ずっと同じビートを繰り返して踊るっていう。そういう音楽のおもしろさもありますが、誰でも楽しめるものではないのかな、と。


北村:ダンサーが好む音楽と、一般の方が好きな音楽の共通項を探して、ひとつにまとめるのも自分の役割だと思ってます。ダンスが好きな人だけではなく、バンドの生演奏が好きな人にももっとWEFUNKのショーを見てもらいたいので。


ーーWEFUNKのイベントでは70~80年代のソウルミュージックや山下達郎さん、広瀬香美さんなどの楽曲も使われていて。ダンス用のアレンジも重要ですよね。


北村:そのまま演奏するだけでは踊りづらい場合もありますからね。ファンク、ソウルミュージックはやりやすいんですが、ヒップホップなどの打ち込みの楽曲はけっこうなアレンジが必要になることもあって。ダンサー、ミュージシャン、お客さんが納得できるアレンジにするのが難しくもあり、おもしろいところでもありますね。


城田:北村さんは出演する各ダンサーが選んだ曲に対し「逆にこういう曲はどう?」とライブ全体の演出を加味した提案をしてくれるんですよ。そうすることによってダンサーのクリエイティブが誘発されているところも大いにありますね。


ーーダンサーのみなさんにとっても新たな発見につながっている、と。


北村:ダンサーのみなさんの過去のショーを見れば、だいたいの好みや傾向はわかるつもりです。そのうえで「こういうやり方はどう?」と提案させてもらっています。「いまのやり方では、ダンスを知らない人には刺さらないよ」ということも言いますね。


城田:ダンスの発表会みたいになるのは避けたいんですよね。音楽のテイストはいろいろあったほうが、お客さんも最後まで楽しめると思うので。イベントを制作するときは、まず起承転結のストーリー作って、そこにハマるダンサーを選んでいくんです。


北村:流れを作ったほうが、「この場面はこういう役割だから、こういうテイストの曲で踊ってほしい」という提案もやりやすいんですよ。


城田:運営側からそういう提案をすることは、他のイベントではほとんどないと思います。たいていは持ち時間を振り当てられて、あとはそれぞれ自由にやるだけなので。


北村:ダンサーがディレクションを受けることもほぼないでしょうね。最初はどうなるか不安だったのですが、ダンサーからも「やってみたら、意外とハマった」という声を聞くことも多くて。共通項を見つけられているという手応えはあります。


・「ダンスの楽しみ方は“観る”だけではない」(城田寛治)


ーー新しいトライアルも多いと思いますが、WEFUNKのイベントを制作するうえで、いちばん大変だったことは何ですか?


城田:そうですね…。もちろん一概には言えないんですが、ダンサーはミュージシャンに比べて、ダンスイベント以外のエンタテインメントに若干疎いというイメージがあります。音楽イベント、ライブというのは音楽そのものだけではなく、空間全体を五感で楽しむものだと思うんですが、ダンスイベントのお客さんはフロアに“体操座り”した状態で見ていたりするんです。


ーーダンスをじっくり鑑賞する態勢ですね。


城田:そうですね。応援している出演ダンサーの名前を呼ぶなど大声を出してはくれる一方で、踊ったりせず直立したままダンスをガン見しているという。ステージに立っているミュージシャンからすると、少しやりづらいこともあって…。最近のWEFUNKではダンサーのお客さんもほぐれてきて、いっしょに盛り上がってくれるようになってきましたけどね。


ーー音楽のライブとダンスのイベントは、もともと文化圏が違ってますからね。


城田:音楽の楽しみ方が“聴く”だけではないのと同じで、ダンスの楽しみ方は“観る”だけではないので。そこは乗り越えていかないといけないと思っています。そのために必要なのはやはり「どういう目的で選曲して、ダンスを踊るのか」という意識ですよね。


北村:WEFUNKのイベントはダンスだけがメインでもなければ、歌だけがメインでもなくて。空間全体を楽しめる“ライブショーイベント”にすることが大事だと思います。


ーーこれまでのイベントで、オーディエンスから支持されているパフォーマンスはどんなものが多いんですか?


城田:これは自分のフィーリングでしかないのですが、WEFUNKでは一般的にわかりやすいものがウケている印象はありますね。コアなダンスイベントの場合はダンスのスキルが高いほど会場が湧くのですが、ぼくみたいなダンサーではない人間からすると、どこがすごいのかついていけず、寧ろ疎外感を感じてしまったりします。それに比べるとWEFUNKはダンサーでない人が見ても伝わる演出が盛り上がりやすいですね。


北村:難しいテクニックよりも、派手なバック転のほうがウケることもありますからね。


城田:逆に言うとWEFUNKは、技術を重視するような部分は担いきれないと思っていて。ダンスの裾野を広げて、より多くの人に楽しんでもらうことが自分たちの役割と思っています。


ーーWEFUNKに参加したダンサーは、ダンスの技術をエンターテインメントに結びつける意識が強くなっていくでしょうね。それが広がっていけば、ダンサーの活動範囲もさらに大きくなってくだろうし。


北村:ダンサーを職業として成り立たせるのは、すごく大変です。振付には著作権がないし、それをパッケージにして売ることもできない。つまり本番のステージを踏み、作った分しか稼げないんですよね。WEFUNKの名前がもっと知られて、イベントの規模が大きくなっていけば、ダンスの価値も上がっていくんじゃないかという期待もあります。


・「WEFUNKではダンサーも主役になれる」(北村亮介)


ーーメジャーレーベルと組むことも、大きな意味を持ちそうですね。


北村:そうですね。音楽的にすごいことが出来るんじゃないかという期待はダンサー側にもあるんですよ。ビクター所属のアーティストの方に楽曲提供やサウンドプロデュースしていただいてもおもしろいと思いますし。ダンサーって“いちばん大きい舞台がバックダンサー”みたいなところがあるんです。WEFUNKではダンサーも主役になれるし、そのうえでメジャーのアーティストと一緒にやれる機会があるとすれば、こんなにすごいことはないですよね。


ーー最後にこの先のWEFUNKの展望について教えてもらえますか?


北村:コンセプトやテーマに関しては、イベントのたびに考えていけばいいと思っています。そのうえでWEFUNKをどういうブランドにしていけばいいかというと、たとえば劇団四季、シルク・ドゥ・ソレイユのように、出演者のネームバリューよりも、その団体の名前でお客さんが来てくれるようにしたいんですよね。「WEFUNKのイベントだから行きたい」というのが前提で、出演者や内容はそのたびに違うという。


城田:加えて、劇団四季や宝塚には、メディアにはあまりでてこないのに、大ファンがたくさんいるというスターがいます。外からはわからないけど、いざ知ってみるとタレントの中に大きなヒエラルキーが形成されていて、そのトップに君臨しているスターがいる。WEFUNKもその形を作っていくために魅力的なキラーコンテンツを作ることが必要だと思います。現状、WEFUNKには“ダンスと生バンド”しか切り口がないんですよね。劇団四季さんの「ライオンキング」のように、誰もが知っているキラーコンテンツを作ることが大事なのかな、と。


北村:一般の音楽フェスに出たり、WEFUNK名義で他のエンターテインメントの関わっていくのもおもしろそうですよね。あとは“アイドルの曲”“アニソン”みたいにテーマを決めるイベントがあってもいいだろうし。


城田:ハロウィンをテーマにしたイベントのアイデアも出ているのですが、一般のお客さんも楽しめる空間を作って間口を広げていけたらなと。去年のイベントは過去最多の8回で、「WEFUNKもりあがっているな」という感じを出せたと思うんです。内容をどんどん更新していって、連続して集客できるようになることがいちばんの目標ですね。


ーーその最初のアクションが1月31日にZepp Tokyoで行われる「WEFUNK WORLD FSETIVAL vol.1」ですね。


北村:2015年度のシリーズの総まとめ的なイベントになります。WEFUNKならではのフェスにしたいですね。(取材・文=森朋之/写真=竹内洋平)