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長くて読まれないネットサービス「利用規約」 分かりやすい内容に統一できないの?

2016年01月23日 10:51  弁護士ドットコム

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ITジャーナリストの神田敏晶さんが昨年12月、「フェイスブックの診断アプリで、個人情報が永久に悪用されるのか?」と題した記事をヤフーニュース個人で公開した。その内容は、診断系のアプリにOKをすることで事業者に情報を取得されることについて、広く注意を促すというものだ。


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神田さんは、フェイスブックの診断アプリは、公開プロフィールや友達リスト、タイムライン投稿、写真など、取得する情報を明示しているとして、「そこを、ホントよく読んでから『OK』を押してほしいものだ。ほとんどのユーザーがここを読まずに、すぐに『OK』してしまう。何よりも、友達リストを利用されるということは友達にまで迷惑がおよぶことを想像してみてほしいのだ」と警告している。



さらに神田さんは、このような気軽な「OK」が広がっている背景として、インターネットの利用規約が長いことを指摘している。「長ったらしい難しい事業者にとって都合のよい文章を読まされ、それを承諾しないとサービスを利用できないというのがすでに定着化している。しかも、その利用規約がそれぞれの事業者によってバラバラだ」として、統一した利用規約が必要ではないかと問題提起している。



神田さんの提案は、ユーザーの負担が少ない順に5段階くらいに分けた統一利用規約を作って、事業者が提示した規約に賛同する人に「承諾する」のボタンを押してもらうという考え方だ。神田さんのこの指摘をどうとらえればいいのか。統一利用規約のようなものは実現可能性があるのだろうか。近藤暁弁護士に聞いた。



●モデル規約の策定は可能だが、事業者に強制することは困難


インターネットサービスといっても多種多様であり、神田氏が問題視する診断系コンテンツにもいろいろなものがあるため、これらに対応できる「統一利用規約」の策定・運用の可能性には疑問があります。



利用規約は、多数の契約関係を画一的に処理するためのものとはいえ、内容の異なるサービスまで十把一絡げにするわけにはいきません。あくまでも事業者やサービスごとに定められることにより、実態にあったルール作りとその運用が可能となるものです。その意味では、利用規約が事業者によってバラバラであることは、むしろ自然なことといえます。



また、利用規約は、各サービスを提供する事業者と利用者との間の契約であり、事業者がどのような内容を定めるのも自由であることが原則です(契約自由の原則)。モデル規約のようなものを策定・公表することくらいは可能でしょうが、統一利用規約の採用を事業者に強制することは困難でしょう。



消費者にとって理解しやすい利用規約にすべきという神田氏の提言の趣旨には賛同しますが、その手段として「統一利用規約」を設けるというのは現実的でないと思われます。



さまざまな法令・ガイドラインで消費者保護が強化され、民法改正案でも「定型約款」に関するルールが整備されていることなどを踏まえ、利用規約をよりわかりやすくするために、事業者の努力がなされることに期待したいところです。



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007 年弁護士登録(東京弁護士会)。主に企業の立場から、消費者法務(消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、PL 法、個人情報保護法など)を中心として、IT法務、労働事件、債権回収など幅広い分野を取り扱う。

事務所名:近藤暁法律事務所
事務所URL:http://kondo-law.com/