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店に予約キャンセルの連絡がつながらず、支払い要求が来た! こんな理不尽許される?

2016年01月21日 10:51  弁護士ドットコム

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「何度電話しても、つながらなかったのに・・・」。東京都内で働くIさん(30代・女性)は、予約をキャンセルしたレストランから、キャンセル料の支払いを求められて悩んでいる。


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Iさんは昨年暮れに開かれた会社の忘年会の幹事に任命された。忘年会の約1カ月前にイタリアンレストランに電話して、20名分の席とコース料理を予約した。その際、店側からは「予約をキャンセルする際は1週間前までにお願いします。それ以降だとキャンセル料がかかります」と伝えられていた。



その後、忘年会当日は、出張などで急遽予定が入る人が続出したため、日程は再調整することに。お店の予約はキャンセルすることになった。



ところが、Iさんが何度お店に電話をかけても、着信音が延々となるだけで、一向に電話はつながらない。ようやくつながったのは、予約した日の5日前だった。店側は「あらかじめ伝えていたのだから、キャンセル料を支払え」という。



電話がつながらなかったことについてIさんが抗議しても、「年末だし、小さい店だから電話をとる暇もなかった」「すでに食材の調達も進めていたし、当日他の予約を断っているのだから損害が出ている」と一歩もひかない様子だ。



Iさんは、連絡するのが遅れたのは店側が電話を取らなかったからであり、自分たちに非はないと考えている。Iさんがキャンセル料を支払う必要はあるのだろうか。消費者問題に詳しい福村武雄弁護士に聞いた。



●キャンセル料は、法的にどんな位置づけなのか


「今回のケースのキャンセル料を法的にみると、民法420条3項の『違約金』に該当すると考えられます」



福村弁護士はこのように切り出した。



「違約金は420条1項で、『損害賠償額の予定』と法的に推定されます。当事者が予定した損害賠償の額は裁判所も変更することはできないので(420条1項)、予約をキャンセルした客は、店側の規定するキャンセル料を支払うことが原則となります」



今回のケースでは、キャンセル料の額は示されていなかったようだ。店側の言い値を支払わなければならないのだろうか。



「キャンセル料が法外な金額にならないように、同種の事業者に生じる平均的な損害を超える場合には、超える部分について無効となるルールがあります(消費者契約法9条1号)。



たとえば、旅行契約の標準約款では、出発日の前日から起算して1週間以内のキャンセルの場合、『平均的な損害』は、旅行代金の30%を上限としています」



●電話がつながらなかったことは影響するのか


今回のケースについては、どう考えればいいだろう。



「12月下旬の忘年会の5日前にキャンセルの意思表示をしていますが、繁忙期のレストランでは、その後、別の予約が入る可能性は旅行の場合より高いでしょう。また、食材を他の顧客に転用できる可能性もあります。



そのため、レストランに発生する平均的損害額は、旅行契約標準約款と比較しても、それほど高額とは認められないと思われます。



よって、店側の設定しているキャンセル料がコース料理代金全額であれば、その一部は消費者契約法により無効となると思われます」



Iさんは、キャンセル料が発生すると言われた期限までに、店側に何度も電話をかけている。そもそも、支払う必要はあるのだろうか。



「一定期間を経過すればキャンセル料を徴収する旨の契約をしている以上、レストラン側はキャンセルのための連絡方法を確保しておくべきでしょう。それを怠ったレストラン側がキャンセル料を請求することは、『権利の濫用』として認められない可能性もあります。



一方で、レストランが職場から近かったり、店舗のメールアドレスやSNSでの連絡が可能であったといった事情がある場合には、レストランに直接出向いたり、メールやSNSで連絡してキャンセルの意思表示を行うことも可能であったといえるでしょう。



そうした事情があった場合には、権利濫用とまでは認められないことも予想されます」


福村弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
福村 武雄(ふくむら・たけお)弁護士
平成13年(2001年)弁護士登録、あすか法律事務所所長
関東弁護士連合会・消費者問題対策委員会元副委員長、埼玉弁護士会消費者問題対策委員会元委員長、安愚楽牧場被害対策埼玉弁護団団長

事務所名:あすか法律事務所
事務所URL:http://www.asukalo.com