マクラーレンの新CEOヨースト・カピトが実際にチームで仕事を始めるのは、4月か5月以降になるかもしれない。フォルクスワーゲン世界ラリー選手権チームのボスとしての責任を果たすためだ。
マクラーレンはチーム再編の一環として、1月14日にフォルクスワーゲンのモータースポーツディレクター、カピトと契約を交わしたことを明らかにしたが、彼はただちにチームに加わるのではなく「適切な時期に」仕事を始める見込みだ。カピト自身もWRC現チャンピオンチームのボスにふさわしい後継者の就任を見届けるまでは、フォルクスワーゲンを離れないと明言している。
「マクラーレンへの加入を正式に発表して世間に知らせたのは、発表前に噂が広がるのを防ぎたかったからだ」と、カピトは英国オートスポーツに語った。
「これで、ようやく落ち着いて後継者探しを始めることができる。そのプロセスにどれくらい時間がかかるか分からないが、納得できるかたちで後任が決まるまで、私は現在の職を離れない。モンテカルロにはチーム(フォルクスワーゲン)の一員として参加するし、その後3、4戦は続けることになりそうだが、実際にはもっと長くかかるかもしれない。いまのところは何とも言えない」
マクラーレンはカピトの立場に理解を示し、チーム合流は4月ないし5月になると予想している。それまでの間はカピトの加入に伴いマクラーレン・テクノロジー・グループへの異動が決まっていたジョナサン・ニールが引き続きCEOを務めることになる。
これまでカピトが率いてきたフォルクスワーゲンのWRCチームは、2013年の参戦開始以来、圧倒的な強さで選手権を支配してきた。
「しばらくフォルクスワーゲンでの仕事は、これまでどおりに続ける」とカピトは言う。「ある意味、子育てのようなものだ。赤ん坊から育てあげた子供たちを、ある時期が来たら手放して、独立させなければならない。親としては、子供たちにしっかりと将来への準備をさせたい。それと同じことをフォルクスワーゲンにもしたいと思っている」。
彼にとって、マクラーレンで仕事をする機会はたいへん魅力的で、断ることなどできなかったという。
「この業界で働く者なら誰もが知っているように、マクラーレンはフェラーリと並んでF1には欠かせない存在だ。そのチームを率いるチャンスがめぐってきたら、誰もノーとは言えないだろう。この業界で生きる人間にとって断るなんてありえないことだ」
「とはいえ、それはとても難しい決断でもあった。(フォルクスワーゲンを離れるのは)最高に難しい決断だったし、新しい仕事が私にとって最大のチャレンジになることは間違いない。なにしろマクラーレンだからね……。そして私自身、大きなチャレンジは見すごせない人間なんだ」
カピトがF1に関わる仕事につくのは、今回のマクラーレン加入で3度目になる。彼には以前ザウバーでCOO(最高執行責任者)を務めた経験があり、フォードがジョーダンにエンジンを供給した2000年代初めには、同社のモータースポーツ活動を統括する立場にあった。