2016年01月20日 19:11 弁護士ドットコム
司法試験の合格者が「無給・原則バイト禁止」の状態で、弁護士や裁判官になるための司法修習を受けなければならない問題について、日弁連は1月20日、修習生に資金を「給付」する支援制度をつくることに、過半数を超える国会議員の賛同メッセージが集まっていると発表した。東京・霞が関の弁護士会館で記者会見を開き、「国会は法律を改正して、修習生が経済的支援を受けられるようにしてほしい」と訴えた。
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難関の国家試験として知られる司法試験だが、合格しただけでは、弁護士や裁判官、検察官の資格は得られない。実務トレーニングである1年間の「司法修習」を受ける必要がある。修習中の生活費などを支援するため、2010年の合格者までは、国が給与を支給する「給費制」がとられていた。だが、国の財政面の理由で、2011年の合格者からは、修習のための資金を貸し付ける「貸与制」に移行した。アルバイトは、原則として認められていない。
その結果、法科大学院の奨学金と合わせて数百万円の借金をかかえて弁護士になる人も少なくなく、こうした経済的負担が、法曹を志望する人口が激減している原因の一つだと考えられている。司法試験に受かった人でも、司法修習の経済的負担を重く感じて、修習をあきらめて、別の道に進む人もいる。
昨年11月に修習を終え、弁護士になったばかりの服部咲弁護士も、奨学金と修習中の貸与金を合わせ、1000万円近い借金があるという。「修習中は、交通費が捻出できなくて、地方で行われる勉強会を諦めたことがあった。勉強のためにほしいと思っても、法律の本を買うのをあきらめることもあった」と修習時代の体験を語った。
若手弁護士や法科大学院生などでつくられる給費制の復活を目指す団体である「ビギナーズ・ネット」代表の萱野唯弁護士は、「今の制度では、平気でリスクをとる変わった人か、親から十分な援助をうけられる裕福な家庭の人しか法曹を目指せない」と指摘。「弁護士になりたくても、その選択肢を諦める人が日々増えている。これ以上時間をかけずに、早急に裁判所法を改正して、給費制を復活してほしい」と訴えた。
(弁護士ドットコムニュース)