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「SMAP解散説」は消えたのかーーもしも解散したら「SMAP」の名前はどうなる?

2016年01月20日 11:41  弁護士ドットコム

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解散説が報じられ、今後の活動に注目が集まっていた「SMAP」のメンバー5人は1月18日夜、フジテレビ系の番組「SMAP×SMAP」に生出演し、「自分たちは何があってもただ前を見て進みたい」などとして、これからもグループとしての活動を続けることを明らかにした。


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SMAPの解散説が持ち上がったのは、この放送の5日前のこと。スポーツ新聞などが、中居正広さんと稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんの4人がジャニーズ事務所から独立し、木村拓哉さんだけが事務所に残る方向で話が進んでいると報じたのだ。



テレビでのメンバーのコメントから、とりあえずグループは解散しないことになったとみられているが、苦悶の表情で「謝罪」の言葉を口にするメンバーもいたことから、従来のように団結して活動できるのか、と疑問を呈する声も少なくない。



そうなると、メンバーと事務所の契約が切れるとされる今年の秋ごろに、再び「解散説」が浮上してくる可能性もある。もしも仮に「SMAP」が解散した場合、個々のメンバーは「SMAP」と名乗ることはできなくなるのだろうか。エンターテイメント業界の法律問題にくわしい太田純弁護士に聞いた。



●「SMAP」の商標権はどうなっている?


「SMAPのメンバーが所属するジャニーズ事務所は、『SMAP』の商標登録を複数、所有しています。そこで、想定しているのは、グッズ販売と考えられます。



これらの商標権が、権利者を事務所側として登録されている場合には、原則として、その商標権者の使用許諾がなければ、事務所を離れたメンバーがその使用を継続することはできないことになります。



ただし、商標権というものは、商品や役務(サービス)について、登録した商標を使用する権利です。そのため、商品やサービスを識別する手段として登録商標を使用すること、すなわち『商標的使用』にあたらない場合は、商標権を侵害するものではないとされます。



したがって、メンバーの経歴や説明として使用するというような場合は、商標権に抵触することはないといえます」



では「SMAP」というグループ名そのものは、どうなるのだろうか?



「日本の商標登録制度では、CDやDVDなどの音楽媒体に関する商標として、グループ名や芸名が登録出願された場合、これを拒絶するのが最近の主流です。アメリカなどと異なり、日本の特許庁や裁判所は、グループ名は大雑把にいえば『歌唱者を表示するにすぎない(商品の質や内容を示すにすぎない)』と理由づけているからです。



日本の役所側の見解としては、『CDやDVDなどの媒体商品に関しては音楽レーベルが製造元として商標権者となるのは制度に合致するが、歌手名やグループ名の表示は、そのコンテンツの内容を示すにすぎないもの』という理解をしているようです。



米国の歌手、レディーガガさんの『LADY GAGA』登録出願が拒絶されたことなど、この論点は注目されております。世界的な取扱いと日本の制度が異なることが、問題視されているのです」



●鍵を握るのは「法律に基づく権利」か「契約」か


「したがって、ライブ会場で販売されているグッズなどと比較して、CDやDVDなどの音楽媒体に関しては別の取扱いがなされます。単純に商標権者だからとの理由づけだけで、音楽媒体についても、すべて権利を強行的に主張できるかは、少し微妙な問題が残されているのです。



そのため、こうした『商標権』という『法律に基づく権利』だけではなく、『契約』によって、取り扱いを規定することが考えられます」



具体的には、どのような契約なのだろうか?



「通常、事務所側とタレントは、専属マネジメント契約を結びます。その際に、芸名やグループ名の使用許諾に関して、合意による拘束力を規定することによって、事務所を離れた後に、芸名やグループ名を続用できるかについて、あらかじめ合意をしているのです。



過去には、俳優の加勢大周さんが、事務所からの独立に際して、係争案件となりました。その裁判でも、商標権ではなく、専属マネジメント契約における『芸名の使用許諾』に関する合意の拘束力が問題となりました。



仮に、あらかじめ専属マネジメント契約書で独立に関する規定がなかったとしても、タレントが事務所を独立するかどうするかの具体的な場面では、事務所とタレントの間で、独立に際しての条件交渉をして、芸名(グループ名)の続用についても、協議して書面化することがあります。



ジャニーズ事務所も、SMAPの各メンバーも、争いを好むような方ではないでしょうから、もし仮に独立ということになった場合でも、事前に、両者間で、このような協議を誠実に尽くすはずだと考えられます」



このように解説した太田弁護士は、最後に「今後のますますのご活躍に期待したいですね、彼らでなければSMAPではありませんし、彼らがそろってこそ、SMAPなのですから」と、話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
太田 純(おおた・じゅん)弁護士
訴訟事件多数(著作権、商標権などの知的財産権、不正競争防止法、名誉棄損等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与している。
事務所名:法律事務所イオタ
事務所URL:http://www.iota-law.jp/