2016年01月16日 11:01 弁護士ドットコム
妻から毎日のように暴言を浴びせられ、ほとほと参っているという男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに悩みを書き込みました。
「自分の思い通りにいかないと、暴言を吐いて八つ当たりしてくる妻。毎日のように『元々好きじゃなかった』『未亡人になりたい。死ね』などと言われ、精神的に限界です。妻と離婚できますか?」
妻の暴言を理由に離婚することができるのか?山口政貴弁護士に、詳細な解説をしていただきました。
A. モラハラによって「婚姻関係の破たん」が認められるかがカギ
ご相談者の妻の言動は、最近注目されている「モラハラ」だと思われます。
モラハラ、すなわちモラル・ハラスメントとは、身体的な暴力を伴わずに、言葉や態度で相手を精神的に傷つけることです。
「元々好きじゃなかった」「死んで」といった発言は、冗談と言い逃れのできない言葉の暴力と考えられます。
ただ、「モラハラがあれば離婚できる」という法律はありません。裁判では、モラハラが「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかが問われることになります。
では、ご相談者のケースは、裁判で「重大な事由」だと認められるのでしょうか。
夫婦の一方によるモラハラが、正当な理由なく、相当な長期間にわたって執拗に行われ、その内容も、人格を完全に否定するような常軌を逸したものである場合には、重大な事由があるとして、離婚が認められる可能性があります。
ご相談者は、毎日のように妻に暴言を浴びせられて精神的に傷つき、限界だと感じているということですから、離婚が認められる余地はあるでしょう。
暴言の内容や期間を証明するためには、「証拠」が必要です。裁判に備えて、暴言を浴びせられた日時や場所、内容などをなるべく具体的にメモしておきましょう。録音もおすすめです。暴言によってうつ病になったなど、体調に影響が出ているなら、診断書も用意すると良いでしょう。被害の深刻さを立証する材料になります。
ところで、モラハラという言葉が注目されるようになったのは、この数年かと思われます。モラハラにあたるのは、例えば次のような言動・行動です。
・話しかけても無視する
・相手のやることなすこと全て否定する
・外出を禁止するなど、相手の行動を管理しようとする
・「バカじゃないの?」など相手の自尊心を傷つける発言を繰り返す
・「死んでやる」などと言い、相手を不安な気持ちにさせる
精神的な暴力であるモラハラは、殴る、蹴るなどの身体的な暴力とは違い、身体に傷が残りません。
しかも、モラハラの加害者は世間的には「いい人」で通っているなど、2面性があることも少なくないようです。他人に相談しても「あんなにいい人がそこまで怒るわけがない」「気に障ることをしたあなたが悪いんじゃない?」と言われ、余計に傷つくことも。
家庭という密室で何が起こっているのか、外の人にはわかりません。実際に被害を受けていることを証明するために、客観的な証拠は不可欠なのです。
【取材協力弁護士】
山口 政貴(やまぐち・のりたか)弁護士
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。
事務所名:神楽坂中央法律事務所
事務所URL:http://www.kclaw.jp/