2016年01月15日 12:02 弁護士ドットコム
俳優の小栗旬さん(33)と妻の山田優さん(31)の住宅をめぐり、「ご近所トラブル」が起きていると、週刊ポストが報じた。
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町内会の役員が山田さんに町内会費の支払いについて相談したところ、山田さんから、「町内会費はマンションの管理費に含まれているので、こちらでは払う必要がないと主人(小栗さん)から聞いております」と返答があったそうだ。
しかし、実際は、マンションの住人は誰も町内会に入っていないため、管理費で町内会費を徴収していないそうだ。ある町内会役員は「町内会への加入は任意なので強制はできません。ただ、困った時にご近所で助け合えるのに残念だなと思います」と語っているという。
この地域の町内会費は年間2400円で、会費は防犯・防災訓練や敬老会、子どもたちの音楽会などに使われるそうだが、マンション住民が町内会へ加入する義務はあるのだろうか。林朋寛弁護士に聞いた。
「町内会は、地方自治法でいう『地縁による団体』です。地縁による団体は、その区域に住所を有する個人の加入を、正当な理由なく拒むことはできません(地方自治法260条の2第7項)。しかし、地縁による団体は、その区域内の個人の加入が義務付けられる『強制加入団体』ではないのです(最高裁平成17年4月26日判決参照)」
林弁護士はこのように語る。では、加入を強制することはできないということか。
「もし、法律で町内会等への加入を義務化することになれば、結社の自由(憲法21条1項)の侵害が問題になるでしょう。町内会は、加入した者の利益のための団体ですから、そこに加入するかどうかは各人の判断によるべきです。加入していないのに利益だけを受けている状況であれば、受益分の費用を請求することを認めるなどの方法も考えられますので、強制加入は行き過ぎとなると思います。
町内会が親睦や住環境の維持管理などを目的とした団体だとしても、個別にみると団体の活動内容や会員となる住民の範囲も多様ですから、一律に強制加入とする制度を作るのは、難しいでしょう。
また、町内会の目的は正当であるとしても、役員が団体を私物化していたり、加入者の生活に過度に干渉しようとしたりなどのトラブルのおそれもありますから、加入しないという意思は尊重されるべきです。
芸能人であろうと一般の人であろうと、町内会に入る義務はありませんので、今回の俳優ご夫婦の件は、『ご近所トラブル』などと問題にされるようなものではないと考えます」
林弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
林 朋寛(はやし・ともひろ)弁護士
北海道出身。大阪大学卒・京都大学大学院修了。東京弁護士会や島根県弁護士会を経て、平成19年から沖縄弁護士会所属。日本弁護士連合会・弁護士業務改革委員会委員(企業コンプライアンス推進PT)。経営革新等支援機関。『スポーツ事故の法務-裁判例からみる安全配慮義務と責任論-』(共著)。
事務所名:カフー法律事務所
事務所URL:http://oki78.biz/