2016年01月12日 15:51 弁護士ドットコム
リクルートホールディングスは2016年から、雇用形態にかかわらず、全従業員約440人を対象にしたリモートワークを本格的に導入している。自宅やカフェ、コワーキングスペースなどで、ネットを使って自由に仕事をすることができるようになる。
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同社によると、従業員だけでなく、派遣社員についても、会社間の合意や本人の希望があった場合には適用する。さらに、ノートパソコンや携帯電話などのセキュリティ対策を施した機器を支給。上司による実施判断があれば、上限日数なしでリモートワークが可能になる。
多様な働き方を目指すという点で、歓迎すべき制度のように見える。もしこの制度を他の会社が導入しようとした場合、どんなことが課題になるのだろうか。藤井総弁護士に聞いた。
「課題は3つあります。(1)労働条件の見直しや変更、(2)労働時間の把握、(3)セキュリティ対策です」
では、(1)労働条件の見直しや変更については、どう考えればいいだろうか。
「就業場所は労働条件の一つであり、リモートワークを適用させる=労働条件の変更になる以上、対象者本人の同意を得ることが必要です。人事管理・業績評価の制度は、対象者と通常の社員とで不公平感が出ないよう、導入にあたって全体を見直したほうがよいでしょう。
通常の社員とは違う賃金制度にするなら、就業規則の変更が必要です。通信費や機器等の費用も、誰が負担するか決める必要があり、社員に負担させるなら、これも就業規則の変更が必要になります」
(2)労働時間の把握については、どんな課題があるのか。
「会社は社員の労働時間を把握する必要がありますが、リモートワークの場合はそれが難しくなります。『みなし労働時間制』を採用すれば、所定の時間、労働したとみなされるので、労働時間の把握からとりあえずは解放されます。
ですが、みなし労働時間制を採用してもしなくても、深夜労働や休日労働が行われた場合は割増賃金が発生します。そして、リモートワークによって平日の日中でなくても働きやすくなる分、深夜労働や休日労働が行われやすくなってしまいます。
深夜労働・休日労働は原則禁止、例外的に行う場合は事前に上司の許可が必要、と就業規則を変更し、実際そのように運用することが必要です」
(3)セキュリティ対策は、どうすればいいのか。
「もし私物のPCやスマホを業務利用させる場合、ウィルス感染や紛失等での情報流出リスクがあります。セキュリティソフトを導入させたり、セキュリティに関して常に最新の教育を施したほうがよいでしょう。
さらに、セキュリティを施した機器をはじめから支給したほうが、いざというときのことを考えれば安くつくかもしれません」
藤井弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
藤井 総(ふじい・そう)弁護士
「世界を便利にしてくれるサービスを生み出すIT企業をサポートする」ことをモットーに、IT企業に特化したリーガルサービスを提供している。顧問先は90%以上がIT企業・IT関連機関。
事務所名:弁護士法人ファースト法律事務所
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