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『おそ松さん』エンディングテーマは広義のシティ・ポップ? 話題の楽曲を音楽的に検証

2016年01月11日 23:31  リアルサウンド

リアルサウンド

VOICE by イヤミ feat.おそ松×カラ松×チョロ松×一松×十四松×トド松(cv.鈴村健一、櫻井孝宏、中村悠一、神谷浩史、福山潤、小野大輔、入野自由)『SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~』

参考:2015年12月28日~2016年1月3日のCDシングル週間ランキング(2016年1月11日付)(ORICON STYLE)


 2016年1月11日付の週間CDシングルランキングは、テレビで音楽特番が多い年末年始ならではのランキングで、昨年10月29日発売のCDから今年元旦発売のCDまでが混在する状態になりました。どうすんだよこれ……。


 そんな中で今回取りあげたいのは、「VOICE by イヤミ feat.おそ松×カラ松×チョロ松×一松×十四松×トド松(cv.鈴村健一、櫻井孝宏、中村悠一、神谷浩史、福山潤、小野大輔、入野自由)」による『SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~』です。長いアーティスト名に心が多れそうになりましたが、アニメ関連の楽曲でよくあるキャラクター名と声優名を併記しているパターンです。そう、『SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~』は現在放送中のアニメ『おそ松さん』(テレビ東京系)のエンディング・テーマ曲(第1話~第12話)のCD化です。


 『おそ松さん』は、赤塚不二夫の『おそ松くん』を原作とするアニメで、大人になった6つ子が全員ニートになっているという作品です。『おそ松くん』の6つ子たちも、イヤミやデカパン、チビ太も現役で『おそ松さん』では活躍中なので、ちょっと不思議な感覚になります。


 放送開始直後から、Twitterのタイムラインでやけに話題になっているので気になりだしたのですが、最近では多くのアイドルも放送中に見ながらツイートしています。アイドルが見ていると、『おそ松さん』第2話での地下アイドル現場のやけにリアルな描写が思い出されて心にしみますね……。あのとき、握手は1回20秒とされていました。リアルで胸にしみます。


 さて、「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」はTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが作詞作曲編曲を担当。アニメ畑で活躍する石川智久、松井洋平、フジムラトヲルによる3人組です。テクノ方面では、細野晴臣が音楽監修をした2007年の『EX MACHINA ORIGINAL SOUNDTRACK』に、彼らの「LOST SECOND」が収録されていたことで知られているでしょう。「LOST SECOND」で、彼らはエレクトロニカなアプローチを展開していました。


 ところが「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」では、サウンドのアプローチはソウルに一変。コーラス・ワークも流麗なソウルフルなトラックに6つ子たちのセリフが乗り、サビはイヤミが歌っているという構成です。


 この「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」を聴いて最初に連想したのは、AKB48の2010年の「マジジョテッペンブルース」でした。ドラマ『マジすか学園』から生まれた「マジジョテッペンブルース」は、サビ以外はほぼ歌がなく、ドラマのキャラクターのセリフをカットアップして構成したかのような楽曲でした。キャラクターの個性を押しだしていた作品で、「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」もまたサビ以外はほぼセリフ。ともに「キャラクターソング」の機能性を最大限に活用している楽曲です。


 2010年代も半ばに、イヤミがメイン・ヴォーカリストの楽曲を聴くとは思いませんでしたが、歌詞の「SHAKE!」とイヤミの決めゼリフである「シェー!」が掛けられており、実はイヤミありきの楽曲でもあります。


 CD化された『SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~』には同曲が10トラックも収録されていて、40分ほど聴き続けて気が変になるかと思いました。オリジナル・ヴァージョンとインストルメンタルに加えて、6つ子それぞれのヴァージョンのほか、 「イヤミ ver.」、さらには「テクノボーイズ ver」も収録されています。「テクノボーイズ ver」、つまりTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDによるヴァージョンでは、パーカッションの音が前面に出ると同時にテクノポップ色が増していて、もっとも1980年代ディスコ色が強いサウンドになっています。


 それにしても、これだけ「シティ・ポップ」という言葉が拡大解釈されて濫用されている現状では、この「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」をシティ・ポップと銘打っても何の問題もないのではないでしょうか。「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」は、そのぐらい洗練されたサウンド・プロダクションとコーラス・ワークによる楽曲です。1960年代にルーツを持つアニメから生まれた、まさかのシティ・ポップ。「SIX SAME FACES ~今夜は最高!!!!!!~」にはそんな驚きもありました。(宗像明将)