日銀の黒田東彦総裁は1月5日、日本労働組合総連合会(連合)の新年交歓会であいさつし、「企業収益は全体として過去最高水準にあり、労働者側にとって強い追い風が吹いている」として賃金交渉に強気で対応するよう促した、と各紙が報じている。
連合の神津里季生会長も同じ席で、収益が向上した企業では賞与ではなく「大小を問わずすべての企業において月例賃金の引き上げがなくてはなりません」と強調。しかし連合傘下の労組の中にも、大幅な賃上げに消極的なところがあるようだ。
政府も「あげろ」と言っているのに、労組の要求水準は昨年の半分
賃上げについてはこれまで労組側が「上げろ」と主張、経営側が「無理だ」と反論するのがお定まりだったが、現在はこれが逆になっている。2015年11月26日の会合で経団連の榊原定征会長は業績が好調な企業に対し、2016年の春闘で「今年を上回る水準を期待する」との意向を表明した。
しかし12月4日には、金属労協が2016年の春闘での要求を「ベースアップ月額3000円以上」と正式決定。前年春の要求水準である「6000円以上」を大きく下回るため、低すぎるという指摘も出ていた。
同日の日経新聞には、自動車総連や電機連合も横並びで「3000円以上」を要求する見通しと書かれ、ネットにはこんな冷ややかな声もあがっている。
「安倍政権が賃上げ努力して、組合費貰ってる連合が賃上げに消極的ってwww」
「下手に賃上げすると残業規制されるからな」
厚労省が1月4日に発表した調査結果によると、推定組織率は17.4%に過ぎない。労組が賃上げに慎重になっているのは、一部の大企業正社員の利益を代表する組織になっており、賃金引き上げより「組合員の雇用安定」を優先しているためと見られている。
15年11月には連合が16年春闘で「2%程度の賃上げ要求」を打ち出したが、これに対しても甘利明経済再生担当相が、「3%は目指してもらいたい」と不満を表明。来日していた国際通貨基金(IMF)副局長ジャン・フェレッティ氏も「人手不足といわれるが、もっと賃上げすれば労働者は確保できる」と指摘していた。
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