ある少年が全米を騒がせていると、1月8日のフジテレビ「とくダネ!」が伝えていた。彼の名はイーサン・カウチ。彼は2013年6月15日、泥酔して猛スピードで運転していた自動車で、4人の男女を死亡させ、9人を負傷させる大事故を起こしている。
当時、彼は16歳。裁判で検察側は禁固20年を求刑したが、判決はなぜか「10年間飲酒と運転を禁止する保護観察処分」という極めて軽い処分のみ。弁護側の証人として出廷した心理学者は、こんな主張を展開したという。
「この少年は、裕福な家の子どもが親から過剰に甘やかされ、物ごとの善悪が分からなくなる『金持ち病(affluenza、アフルエンザ)』に罹っている」
同じ裁判官が貧しい子どもに「20年の禁錮刑」の判決
彼は事故当日、自宅のパーティーで大量に酒を飲んだ上、酩酊状態で父親の車を運転。父は製鉄会社を経営する大富豪だ。裁判長は「金持ち病」は正式に認められた精神疾患ではないとして「判決には影響していない」と述べたというが、これに米「スター・テレグラム」紙が疑問を呈した。
記者は、この裁判長が以前、裕福でない家の子どもが犯した同様の犯罪に、20年の禁錮刑という判決を下していることを暴露し、こう糾弾している。
「親が裕福かそうでないかだけで、判決が明らかに違ったのです」
この判決には、全米で「金持ち少年が親の金で罪を免れた」と非難が集中したものの、判決が覆るわけではなかった。ところがその2年後、去年11月にアップされた1本のネット動画によって事態は急転する。
若者たちがビール瓶やコップの並んでいるテーブルにダイブする、よくある悪ノリ動画の中に、酔ってはしゃいでいる様子のカウチ少年が写っていたのだ。保護観察処分で10年間飲酒禁止だったはずの金持ち少年が、と当然ながら再び大非難の的になった。
メキシコのリゾート地に逃避行。高級ホテルにも宿泊
騒動の中、カウチ少年は母親と共に姿をくらました。地元警察は「保護観察違反にあたる」として指名手配。18日後、2人は拘束されたが、なんと車で国境を越えてメキシコのリゾート地に逃亡していた。
最初は高級ホテルに潜伏していたものの、捜査を逃れるためか古びたアパートに移り住んでいた。近所の店の防犯カメラには、金髪を黒く染めて黒い髭を生やしたカウチ少年が、店員に気軽にあいさつしながら買い物をする場面が映っていた。
母親のトーニャ容疑者(48)は直ちにアメリカに送還され、先月31日空港で国外逃亡を助けた容疑で逮捕された。一方の少年は、アメリカに強制送還しないようメキシコ政府に要求。トーニャ容疑者の弁護人も、こんな言い訳で彼らの行動に理解を求めている。
「彼女の身になって考えてみてください。もしあなたの息子が全米一の嫌われ者だったら、親としてどうやって息子を守るのか」
ネットは「ワイも金持ち病にかかりたい」
しかし息子が本当に「金持ち病」だとすれば、この母親は逃亡ではなく全力で「病気」を治そうとしなければならなかったはずだ。
日本の視聴者も同じように考えたようで、「とくダネ!」の放送後、ツイッターには「金持ち病」というワードが一時トレンド入り。批判はもちろんのこと、あまりにも身勝手な造語に呆れた声が多く見られた。
「4人殺しておいて保護観察処分とは金持ち病ってすごい病気だね~」
「全米一の嫌われ者とか人四人も殺めておいて嫌われない方がおかしいだろ(笑)」
「ワイも金持ち病にかかりたい」
なお、今回拘束されたカウチ容疑者はまだ18歳。たとえ強制送還されても、最長で120日間少年刑務所に収監される程度とみられるとのことだ。(ライター:okei)
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