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Fear, and Loathing in Las Vegas、初武道館で見せたバンドの集大成と今後の可能性

2016年01月09日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Fear, and Loathing in Las Vegas(撮影=小野雄司)

 Fear, and Loathing in Las Vegasが初の日本武道館公演『“Feeling of Unity”Release Tour FINAL ONE MAN SHOW at 日本武道館』を1月7日に開催した。これは昨年9月末にリリースされた4thアルバム『Feeling of Unity』を携えた全国ツアーの最終公演で、バンドにとって関東では初のワンマン公演にあたるもの。チケットは事前にソールドアウトを記録し、アリーナをブロック分けのスタンディング形式で実施された。


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 会場に入ると、ステージ真正面には横長のLEDスクリーンが設置され、その上方にてミラーボールがきらびやかな光を会場中に放ちながら回転している。観客はBGMとして流れる4つ打ちのクラブミュージックに身を委ねて、Las Vegasの記念すべき初武道館ライブに備えているようだった。そしてBGMの音量が上がり、曲の盛り上がりがクライマックスを迎えた頃に突如音が途切れ、会場は暗転。悲鳴のような歓声が沸き起こる中、ステージ前方のLEDスクリーンが上方へと移動、高揚感を煽るようなSEに導かれてステージ後方に6面の大型LEDスクリーンが姿を現す。そしてSEのBPMが加速するのにあわせて、ステージにメンバー6人が走って登場。Taiki(G)は着ていたシャツを脱ぎ、早くも半裸になって観客を煽る。そして特効による破裂音と同時に、バンドは「Cast Your Shell」から勢い良くライブをスタートさせた。


 最新アルバム『Feeling of Unity』のトップを飾るこの曲で、会場の熱気はいきなり急上昇。Tomonori(Dr)とKei(B)が生み出すグルーヴに、Sxun(G)とTaikiの鋭いギターが乗り、さらにその上にMinami(Vo, Key)がカラフルなシンセサウンドをかぶせていく。そしてSo(Clean Vo)はオートチューンを通したハイトーンボーカルを会場中に響かせ、その合間にはMinamiが激しいスクリームを轟かせる。そう、Las Vegasのライブスタイルはデビュー以来何も変わっていないのだが、今目の前にいる彼らは完全にアリーナ仕様のライブを繰り広げている。いつの間にここまで頼もしくなったのか、とライブ冒頭から度肝を抜かれたのだが、そんなこととはつゆ知らず、バンドは1曲の中で次々と複雑な展開/アレンジを繰り広げ、2曲目「Meaning of Existence」へと続ける。数百人のライブハウスだろうが1万人規模のアリーナ会場だろうが、彼らは信念を持って自身のスタイルをここ武道館でも突き通してくれた。ステージ後方の6面LEDスクリーンは時に1つの大きな映像を映し、時にメンバー6人の表情を個別に映し出す。その表情はとても晴れやかで、この初めての体験を一瞬たりとも逃さないようにと楽しんでいるように見えた。


 2曲終えるとSxunが「『“Feeling of Unity”Release Tour FINAL ONE MAN SHOW at 日本武道館』、始めようぜ! 俺たち、神戸のFear, and Loathing in Las Vegasといいます」と改めて挨拶。続けて「今回のアルバムのテーマは一体感。もっともっとテンションぶち上げていこうぜ!」と叫ぶと、「Escape from the Loop」でライブを再開させた。Soは曲冒頭で「今日はみんなででっかい声響かせようぜ!」と観客を煽ると、そのままギアをトップまで再加速。So、Minami、そしてSxunと3人の個性的な声が矢継ぎ早に飛び出すこのキャッチーな曲で会場の空気が1つになると、続く人気曲「Rave-up Tonight」でこの夜最初のクライマックスを迎える。アリーナにはブロックごとにサークルピットが発生し、曲のBPMが加速するたびに観客はモッシュの輪に加わる。アリーナ前方にはクラウドサーファーも続出。もちろんこの盛り上がりはアリーナだけではない。1階、2階のスタンド席の観客も時にジャンプ、時にダンスしておのおの自由にライブを楽しんでいる様子だ。しかも曲中ではMinamiが側転&ロンダートを披露する場面もあり、観客のみならずメンバーもこの空間を自由に楽しんでいるようだった。さらに「Swing it!!」では観客が手にしたタオルを頭上で回し、その一体感は早くもピークへと達した。


 二度目のMCではSxunが「日本武道館、初めまして。俺らは今日が来るのをすげえ楽しみにしてたけど、みんなは楽しみにしてましたか?」と観客に問いかける。会場が大歓声で沸き上がると、続けて「今日の武道館は関東で初めてのワンマンライブ。自分らみたいなスタンスのバンドが武道館でライブできるのは、特別なこと」と感慨深げに語った。そして、ちょうど1年前の1月7日にシングルリリースされた「Let Me Hear」を披露すると、客席はさらに熱い盛り上がりを見せる。1曲の中でテンポが何度も変化するこの曲では、ミドルテンポのパートで観客がジャンプしたかと思えば、ブレイクダウンパートではヘッドバンギングを激しく続ける。さらにBPMが高速化すると、今度はフロアにサークルモッシュが発生。Soが「全員で踊って、心も体も熱くしていこうぜ!」と叫ぶと、続くダンサブルな「Burn the Disco Floor with Your "2-step"!!」では観客が両手を上げて楽しそうに踊る光景を目にすることができた。さらにSxunが「そんなもんじゃないよな? もっと来いよ、武道館!」と煽り、グルーヴィーな「Ignite Your Frail Mind」をドロップ。「Thunderclap」ではMinamiがポータブルキーボードを抱えて、ステージ前方でソロプレイを披露する場面もあった。


 8ビット調サウンドが印象的な「Interlude」へと流れると、スクリーンにはYMCK制作による8ビットゲームが映し出される。そんなレトロなサウンドと映像に会場が一瞬和むものの、バンドは途中からメタリックな演奏に移行。観客の体が再度温まったところで、クラブサウンド色濃厚な「Gratitude」に突入する。ステージ上方のミラーボールが回転しながらきらびやかな空間を演出すると、武道館がロックバンドのライブ会場から巨大なレイヴパーティへと一変。会場中に飛び交うカラフルなレーザー光線や観客の自由な盛り上がりを目にするたびに、自分が今クラブに来ているような錯覚に陥ったことも、ここに記しておく。


 ライブ中盤のMCでSxunはこの1年、メンバーやスタッフの家族に不幸が続き、非常にタフな状況であったことを観客に告げる。そして、そんな自分たちを支えてくれる人たちがいたからこそ、ここまで音楽を続けることができたと感謝の気持ちを伝え、「これからもLas Vegasは信念を持って、やりたいことを続けていくので、よかったらこれからもついてきてください!」と決意表明。そんな思いを綴った「Journey to Aim High」ではスクリーンにはSoが歌う英語詞の対訳が表示され、この楽曲のエモーショナルさをより増幅させた。


 エモさが際立った「Journey to Aim High」を終えると、バンドは再びアッパーな楽曲を連発。ヒットシングル「Just Awake」を筆頭に、踊れる曲、楽しく暴れられる曲を立て続けに演奏していった。また曲の合間にはメンバー監修によるアパレルブランド『FALILV by FaLiLV』の設立や、この日の武道館公演の様子が映像化され、8曲分のMVを加えたDVD / Blu-ray『The Animals in Screen II』として4月27日に発売すること、4月末から全国4都市を回るワンマンツアーを実施すること、8月に大阪某所で主催イベントを開催することを告げ、観客を喜ばせた。そしてSxunの「今日を1つの目標として走ってきたように、これからもっと大きなステージを目指したいし、同時にライブハウスのような空間も大事にしていきたい。どんなに目の前が真っ暗でも、今、目の前にある光をみんなで掴みにいこうぜ!」の言葉に続いて、ライブはクライマックスに突入。「Party Boys」のイントロが鳴ると同時に大歓声が沸き上がり、会場は歓喜の渦に包まれる。もはやスタジアムバンドと呼ぶにふさわしい頼もしさを見せる6人は、笑みを浮かべながら今この瞬間を満喫しているように見えた。そしてSoの「ツアーファイナル最後の1曲。俺らとみんなで1つになろうぜ!」を合図に、ラストナンバー「Starburst」へと突入すると、ステージから客席に向けて金テープが発射された。さらに会場中の明かりがつき、金銀の紙吹雪が中を舞う最高のシチュエーションで、Las Vegasは初の武道館ワンマンライブを締めくくった。


 とても関東で初のワンマンライブ、しかも初の武道館公演とは思えないほどに堂々としたパフォーマンスを見せてくれたLas Vegas。彼らがこんなにもアリーナ会場にふさわしい、いや、もっと大きな会場でライブを観たいと思わせてくれるようなバンドにまで成長していたことに驚いたと同時に、こんな圧巻のライブを見せてくれるバンドが今、どれだけいるのだろうかと考えると、数えるほどしかいないことに改めて気付かされる。きっと彼らはこの先さらに進化して、まだ誰も見たことのない景色を私たちに提供してくれることだろう。この日の武道館ライブはバンドにとっての集大成であると同時に、明日への第一歩にふさわしい最高のステージだったことを、声を大にして伝えたい。(西廣智一)