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タダでは別れません!ーー9年間交際「元カノ」からの慰謝料請求

2016年01月08日 07:51  弁護士ドットコム

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恋人との別れは時に辛く悲しいものですが、相手に「心の傷を金で埋めてほしい」と言われたら、どうすればいいのでしょうか。


「9年付き合った彼女に別れ話を切り出したら、『別れるなら慰謝料を払え!』と言われました」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある男性が悩みを寄せました。男性によると、相手の女性とは同棲も婚約もしていないとのことです。


女性からの突然の申し出に戸惑う男性。慰謝料を払う必要はあるのでしょうか? 渡邊幹仁弁護士に詳細な解説をしていただきました。



A. 交際していただけなら、慰謝料を支払う義務はない


結論としては、単に交際していただけの彼女と一方的に別れても、慰謝料を支払う義務は生じません。


結婚をしていない男女の関係については、それぞれが合意していれば、どのような交際をして、どのような関係を築くのかは、当事者の自由です。裏を返せば、交際を終わらせるのも自由なのです。


婚姻届を提出し、夫婦の契りを結んだ男女については、法的な保護が与えられます。相応の理由がなければ、一方的に別れることはできませんし、どちらかに非がある場合は、慰謝料を支払う義務も生じます。逆に言えば、結婚していない以上、法的には保護はされないというのが原則です。


ただし、婚約や、内縁関係が成立している場合は別です。


婚約や内縁関係を一方的に破棄すると、慰謝料を支払う義務が生じる場合があります。話がまとまらなければ、調停や裁判に発展する場合もあります。


ところで、結納をしたり、互いの両親に挨拶をしたりしなければ、婚約したことにならないと思うかもしれません。しかし法的に言えば、婚約が成立する条件は「(将来)結婚しよう」と当事者が親権に合意することだけで足ります。


ただし、裁判に発展した場合、真剣な合意があったかが問題となります。言葉のやりとりだけでは「言った」「言わない」の話になったり、「言ったけれどもリップサービスだった」となる場合も少なくありません。


この点、客観的に見て、婚約という段階に至っていたと言えれば、婚約していたと裁判所が認める可能性が高いと言えます。具体的には、結納や婚約指輪の交換、結婚式場を予約したり、結婚式の招待状を送ったりして結婚式の準備を始めていたなどの事実が重視されることになります。


今回の件では、ご相談者は、「彼女と婚約はしていなかった」と言っています。しかし、交際期間中に、例えば、「将来は専業主婦として自分を支えてほしい」と言って、彼女にそれまでしていた仕事を辞めてもらい、代わりに自分が生活費を支払っていた、などの場合は、婚約が成立しているとみられる可能性があります。交際を終わらせるにあたり、婚約を一方的に破棄したとして、慰謝料を支払う義務が生じる可能性もあります。


なお、内縁関係とは、「婚姻届こそ出していないものの、結婚した夫婦と同様の意思や生活実態がある男女の関係」のことを言います。内縁関係も、「婚姻に準ずる関係」として扱われます。この場合にも一方的に関係を解消すれば、夫婦が離婚する場合のように、慰謝料請求が認められることがあります。




【取材協力弁護士】
渡邊 幹仁(わたなべ・みきひと)弁護士
新潟県弁護士会所属
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件を数多く取り扱っている。
事務所名:新潟菜の花法律事務所
事務所URL:http://niigata-nanohana.com/