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back number、西野カナ、三代目JSB、岡村靖幸……動画共有サービスで流行する音楽の傾向を探る

2016年01月07日 19:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 instagramやvineなどの動画や写真をアップロードして楽しむサービスや、TwitterやFacebookなどのSNSでも動画を投稿できる機能が日に日にアップデートされ、動画を楽しむプラットフォームが増加している。


(参考:YouTube再生回数は楽曲ランキングにどう反映? ビルボード総合チャートの新指標導入を読む


 そんな中で、現役中高生に人気を誇り、今後も大きなプラットフォームとして成長しそうなのが『MixChannel』だ。同アプリは、スマートフォンで簡単に10秒の短編動画を撮影・編集出来る動画共有アプリ。また、MixChannelで多く見られるほとんどの動画には、BGMとして楽曲がそのまま使用されているのが特徴的だ。


 MixChannel上では、ユーザーの性質からか、恋愛をテーマにした動画が多く作成されている。たとえば、KANA-BOON「ないものねだり」の歌詞に合わせて、恋人同士の2人が自らMV風の動画を撮影・編集。ほかにも、西野カナや阿部真央をはじめ、MACOといった若者の等身大の心情を歌ったラブソングは、写真や文字を歌詞に合わせて編集している動画が投稿されていた。


 また、使用されている恋愛ソングとして目立っていたのが、フジテレビ系月曜9時枠のドラマ主題歌だ。2015年7~9月にかけて放送された『恋仲』の主題歌である家入レオの「君がくれた夏」は、Twitter上でも投稿動画が多くみられた。そして、2015年10~12月の『5→9~私に恋したお坊さん~』でback numberが担当した主題歌「クリスマスソング」は、MixChannel内で特集ページが組まれているほど、人気を博しているようだ。


 back numberの楽曲は、同主題歌のリリース以前にも数々の楽器がBGMとして使われており、テレビ朝日番組『ミュージックステーション』に登場した際も、“女子高生のカリスマ的存在”と紹介されるほど。ほかにも、メンバー全員がモデル出身で、ファッションカルチャー面でも原宿を中心に女子中高生に人気が広がっているSilent Sirenの楽曲も、幅広く使用されている。この発展形として、現役女子高生シンガーの井上苑子は、自身の曲である「大切な君へ」をペアになって手の振付をした一般ユーザーの動画をみて、自らも同じように動画を撮影・投稿するなど、アーティスト側からのリアクションも起こるようになった。


 MixChannel内には、ダンス動画も多く投稿されており、そのなかでもEXILEや三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの楽曲は人気のようだ。また、彼ら側から、同サービスを用いたキャンペーンも行なっているのも特徴的で、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEは、グリコポッキーのCMソング「シェアハピ」を使った「ポッキーシェアハピダンスコンテスト」として、ダンス動画を一般からYouTube上で公募。EXILE もサントリーザ・モルツのCMソングに起用された「Ki・mi・ni・mu・chu」の発売を記念して、MV内でメンバーがパフォーマンスしている“ゲット・ダンス” をしながら、Twitterやinstagramに投稿するキャンペーンを実施するなど、本人たちも各サービスの拡散性を理解し、自ら聴くだけではない、音楽の楽しみ方を提供していた。


 また、MixChannelで見られるダンス動画で1番多く見られていたのが“ランニングマン”の振り付け動画だ。これは「第56回 日本レコード大賞」にも選ばれた、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」のダンス中に取り入れている振りで、二人以上のグループが多く投稿していた。


 ここまでMixChannelに関連するアーティストとその音楽について取り上げてきたが、全インターネット人口の約3分の1を占めるといわれるユーザー数を持つYouTubeでは、MixChannelで見られた振付動画ではなく、音楽を自ら演奏したり、替え歌にして投稿した動画が目立つ。その中でも、2015年は西野カナ「トリセツ」の替え歌動画が多かった。「トリセツ」は、MixChannel上だと、手の振付をしたり文字と写真で編集したものが多かったが、長尺の動画が投稿できるYouTube上では、自らがアーティストとして映り、歌詞を変えて歌ったものが半数以上を占めていた。「女ゴコロの取扱説明書を歌詞にした」というテーマから、自分流に歌詞を変えやすいところを掴んだユーザーは、自身に歌詞を置き換え、対象の性別を変えたり、血液型や方言など、多くのシチュエーションを用いて、オリジナルソングを投稿していた。なかには、お笑い芸人・楽しんごが自身のことを歌った「オネエのトリセツ」といったように、芸能人が参加しているケースも存在する。


 基本的にはどの動画共有サービスでも、投稿された動画を見るユーザーの属性に近いジャンル・世代の楽曲がBGMとして使用されることが多い。しかし、なかにはサービスのメインユーザー層とは違った世代の楽曲が拡散され、視聴するユーザーたちから「この曲の名前なんていうんですか?」と質問が殺到するケースもある。これに該当するのが、岡村靖幸の「ぶーしゃかLOOP」だ。同楽曲はMixChannelと、6秒尺の動画を投稿できるvineで激しい顔の動きによる「口パク動画」が多く投稿されており、音楽の新たな広がり方をみせている。


 MVは、今や新曲リリースには欠かせないものとなっているが、このような動画共有サービスの活用が普及することで、聞いて見て楽しむだけでなく、自分なりに音楽を表現する新しい音楽の楽しみ方・知り方が広がっていくのかもしれない。(大和田茉椰)