青木陽の個展『Inverted Spectrum』が、2月9日から東京・銀座のガーディアン・ガーデンで開催される。
日常の生活の場をテーマに、ガーリーフォトを意識した作品『反転スペクトル、サークル』で第12回写真『1_WALL』のグランプリを受賞した青木。1990年代の作家たちの流れを取り入れつつ、その上でオリジナルの作品になっている点が審査員から高い評価を得た。
第12回写真『1_WALL』グランプリ受賞を受けて開催される今回の個展では、生活の一場面を写しながら、先行する作家へのオマージュや演出を加えた人物ポートレートなど、客観的な視線を含んだ作品を展示する。
2月18日には、青木と第12回写真『1_WALL』の審査員を務めたアートディレクターの菊地敦己によるトークイベントが行なわれる。
■青木陽のコメント
ときたま歯が痛むという人がいる。その人は虫歯があるのか知覚過敏か、その人の歯痛のわけを知り、あるいは同情する。しかしどこまでいってもその痛みはその人のものであり私の痛みにはならない。
電脳化機器の浸透による写真撮影、開示の一般化には著しいものがあり、一過性の画像、現れては消えていく膨大な数の写真に溢れています。またその前提として特に90年代以降、文脈や物語性など言語を基調とした理論に頼らない表現、ごく私的な空間の提示、一瞬の感覚の共有を目指す写真表現の試みが広く受け容れられてきました。
写真はある特定の時間、場所を画像にして定着したものです。撮影された目的に係らず、写真には自然な意味、示されたいつかのどこか、があります。写真は画面の中に限っては対象の知覚以前の視覚的な感官の共有を仮想的に実現する媒体であり、私たちの写真についての経験は、一方では非常な親密さを感じると同時に、内容の理解の点では非常に曖昧なものに留まるという矛盾を生みます。