2016年01月07日 11:11 弁護士ドットコム
幼稚園や学校で開かれるバザーに、親や子どもの手作り作品が並ぶことは珍しくない。子どもが通う東京都内の保育園で、クラス役員を務めるカオリさん(30代)は、来月に開催予定のバザーに関して、ある心配ごとを抱えている。
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「先日、バザーの打ち合わせがあったのですが、『今年度は、手作りのコップ袋を作って、収益にしましょう。妖怪ウォッチや、アナと雪の女王の柄が入った布を使えば、売れるんじゃないかしら』という提案があったんです」。その場で結論は出なかったが、打ち合わせを終え、カオリさんは不安になってきたという。
「ネットでみると、 『売られている布であっても、キャラクターのついた作品として販売してしまうのは、法的にアウト』といった注意を呼びかけるブログがありました。バザーという内輪の場であっても、販売するのはいけないのでしょうか?」
キャラクターのイラストがプリントされた布で作ったものを、バザーで商品として販売することは、法的に問題があるのだろうか? 著作権に詳しい唐津真美弁護士に聞いた。
「アニメのキャラクターは著作物として保護されており、キャラクターを無断で複製すると、原則として著作権侵害になります。
もっとも、今回のケースではキャラクター自体はすでに布にプリントされた状態で市販されており、これを利用してバッグなどを作成しても、キャラクターそのものを複製したり改変を加えたことにはなりません」
唐津弁護士はこのように説明する。
「著作権の中には『譲渡権』という権利があります。著作物やその複製物を譲渡によって公衆に提供することについては、著作権者が独占的な権利を持っています。しかし、譲渡権を持つ人や、その権利を持つ人から許諾を得た人が他の人に一度譲渡した後は、譲渡権は働かないとされています。著作物の流通が過度に制限されないようにするためです。
つまり、一度買った物を転売したり他人に譲ったりしても、譲渡権の侵害にはなりません。このことから、権利者からライセンスを受けて制作された正規のプリント生地を購入していれば、問題は生じないのが原則です」
ということは、正規のプリント生地で作った商品であれば、バザーなどで販売しても問題ないのだろうか。
「ただ、生地のネット販売では『商用禁止』と注意書きがある場合があります。幼稚園や学校の通常のバザーは、一般的には商行為に該当しないと思われますが、販売数が多く、多額の利益を上げたりしているような場合は、注意が必要です。
さらに、注意書きに『学校等でのバザーでの販売も禁止』と明記されていて、これに同意して購入したとみなされる場合は、今回のようなケースでも問題になる可能性があります。
また、キャラクターによっては商標として登録されている場合があります。登録商標でなくても、購入者が正規のオフィシャルグッズ等と混同する可能性もあります。そのような場合は、商標権侵害や不正競争防止法違反が問題になる可能性があるので、手作り品であることを明記するなどの注意が必要と思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
唐津 真美(からつ・まみ)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。アート・メディア・エンターテイメント業界の企業法務全般を主に取り扱う。特に著作権等の知的財産権及び国内外の契約交渉に関するアドバイス多数。第一東京弁護士会・法教育委員会副委員長、東京簡易裁判所・司法委員、第一東京弁護士会仲裁センター・仲裁人。
事務所名:高樹町法律事務所
事務所URL:http://www.takagicho.com