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青文字系モデル・青柳文子が恋愛群像劇『知らない、ふたり』に出演して気づいたこと

2016年01月05日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

©2015 NIKKATSU, So-net Entertainment, Ariola Japan

 映画『サッドティー』などの作品で海外からも注目されている今泉力哉監督の最新作『知らない、ふたり』が、1月9日より新宿武蔵野館ほかで順次公開される。韓国アーティスト・NU'ESTのメンバーであるレン、ミンヒョン、JRのほか、日本からは10才から映画界で活躍する韓英恵、人気青文字系モデルの青柳文子、独特の存在感で映画ファンから注目される芹澤興人、実力派女優として評価される木南晴夏が参加し、日韓の枠を越えた恋愛群像劇となった本作。レン演じるキム・レオンに思いを寄せる女性・小風秋子を演じた青柳文子に、現場の模様や今泉監督作品の魅力、自身の恋愛観まで語ってもらった。


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■「片思いで、いつも追いかけていたいんですよ」


ーー今作『知らない、ふたり』は、今泉監督らしい繊細な恋愛群像劇でした。青柳さんはこれまでも今泉監督作品に出演していますが、今作はどんな印象でしたか?


青柳:今作でもまた、今泉さんはご自身の世界観を深めているな、という印象でした。こうしたオフビートな作品を商業映画でやろうとするところが、すごく今泉さんらしいし、恋愛の機微を描いていくところも、いままでの作品の延長線上にあるのかな、と。ただ、今回は韓国の俳優さんたちが参加していて、そこが大きく違いましたね。脚本を見せていただいた段階で、「韓国語しゃべれる?」と訊かれたんですけれど、ぜんぜんしゃべれないって応えたら、あまりしゃべらない役柄になっていて、そこは少し面白かったです(笑)。


ーー監督はどんな人柄の方でしょう。


青柳:わたしの周りは変わった人が多いので、それほど気にはならないけれど、とても繊細な方だとは思います。すごく優しくて、気遣い屋で、知識豊富で、おしゃべり上手で、とても魅力的な方です。少し猫背なところも、親しみやすくて好感を抱いています。キリスト教徒だからか、考え方も慈悲深くて、不思議なオーラを放っている人です。


ーー現場ではどういったやりとりを?


青柳:あまり細かい指示を出す方ではないですが、シーンの状況などはピンポイントでしっかりと教えてくれます。「こういう状況でこういう風に言われているから、こういう気持ちで応えて」という感じで、演技に関しては比較的、自由に考えて動いている部分も少なくないですね。ただ、恋する相手をみつめるシーンなどは、「もっと好きって気持ちを込めて」って言われました(笑)。


ーーたしかに、青柳さんの“恋する目線”は、記憶に残るものがありました。


青柳:みなさん、そういう風に言ってくださいます。ただ、自分で映像を観た時は「あんな目で見ていたなんて!」って、なんだか気恥ずかしさを覚えて、見ていられない気分でした。ちょっと気持ち悪くないですか?


ーー気持ち悪くはないですよ(笑)。でも、本当に恋をしているような眼差しでした。


青柳:相手のレオン役を演じたニューイーストのレンさんは、実際にアイドルでカリスマオーラがある方なので、感情移入はしやすかったです。自分とは違う世界に生きる人という感じで、憧れを抱きやすいというか。キラキラした王子様に憧れる気持ちというのは、わたしももちろん理解できるので、役に入りやすかったかも。


ーー青柳さんが演じる小風は、おとなしそうに見えて積極的な面もありますよね。レオンが帰宅するのを付けてみたりとか。


青柳:わたし自身は、あまり行動に移すタイプではないと思うんですけれど、結局のところ、相手に思いを伝えないというところは、似ているかもしれません。もっとも、わたしの場合は単純に伝えられないだけで、小風の場合はあえて伝えないのかもしれないけれど。たぶん彼女は、相手に自分の気持ちを伝えることで、いまの状況が壊れてしまうのは嫌なんだと思います。自分のことなんか気にも留めない相手だからこそ、憧れを抱いているというか。もし自分が気持ちを伝えて、相手が振り向いたとしたら、それはそれで冷めてしまうタイプなのかなって。なかなか複雑なタイプですよ(笑)。


ーー小風のそういう性格は、演じる中でそう感じたのですか?


青柳:そうですね。もともとそういう設定だと言われているわけではないです。ただ、演じていて、「きっとそうなんだろうな」という確信のようなものはありました。今泉監督自身も、そういうところがある人なので。ウディ・アレン監督は「私を会員にするようなクラブには入りたくない」という格言を残していますが、たぶん、今泉さんも同じような考えを持っていると思います。片思いで、いつも追いかけていたいんですよ。


ーー青柳さん自身も、そういう考えを持っている?


青柳:多少はありましたね。小学生くらいの頃なんかは、好きな人を追いかけて、でもいざ相手にも好きって言われると、その瞬間に嫌いになっちゃったりして。大人になってやっと、「自分みたいな人間を好きになってくれてありがとう」って、素直に思えるようになったかも。


ーーなんだか猫みたいですね。逃げると追うけれど、追われると逃げる。


青柳:もちろん、いまはそんなことないですからね(笑)。


■「後々になって思い出して、響いてくる言葉がきっとあるはず」


ーーお酒を飲んで酔っぱらっているシーンなどは、すごく堂に入っているというか、「普段からよく飲むのかな?」と思わせるようなリアリティがありました。いつもあんな感じですか?


青柳:あのシーンはリアリティを出したかったので、本当に飲みました。でも、あんなにガラ悪くは飲まないですよ。もう少し、お上品だと思います(笑)。小風は一見するとおしとやかな印象だけど、レオンくんの前ではぶりっ子しちゃうんですよ。


ーーただ可愛くておとなしいだけじゃないのが、キャラクターとして魅力的ですよね。


青柳:自分のことを好きな相手には、強く出てみたり(笑)。


ーーラブレターをもらうシーンも印象的でした。


青柳:職場のみんなの前で渡されたら、素直に喜べないですよね。よく、ショップで働いている子とかはお客さんから携帯電話の番号を渡されたりするらしいけれど、男性は相手のこともちゃんと考えて渡さないと。


ーー小風も困った顔をしていました。韓国の恋愛観だと、少し事情は違うのでしょうか?


青柳:でも、試写会であのシーンが流れた時、海外の方も笑っていたから、やっぱり万国共通して、あのアプローチは唐突すぎるんだと思います(笑)。


ーー韓国のキャストの方は、一緒に演じてみてどう感じましたか?


青柳:みなさん、すごくカメラ慣れしていてどう動くかをわかっていらっしゃるので、わたしより全然上手だったと思います。今泉監督の自然な演出にもうまく対応していて、ちゃんと日常の延長にある感じが出ていました。


ーー全体として落ち着いているトーンは、見ていて心地よかったです。青柳さんが考える、今泉監督作品の魅力ってどういうところでしょう?


青柳:登場人物ひとりひとりのキャラが立っていて、それぞれにハッとさせられる台詞があるのは、すごく素敵なところだと思います。だから、ちゃんと言葉を聞きながら見てほしいですね。「あの人はこういう風に言っていたな」とか、「そういえばこういう意見もあったな」って、後々になって思い出して、響いてくる言葉がきっとあるはずなので。


ーー青柳さんの心に残っている台詞は?


青柳:木南晴夏さん演じる加奈子が、彼氏役の芹澤興人さんに「わたしの“好き”の方が、あなたより大きいんだけど、わかってる?」みたいなことを言っているのは印象的でした。芹澤興人さんは足が不自由で車椅子生活を送っているから、一見すると、加奈子が一緒にいてあげている、という風に映ってしまいがちだけど、そんなこと、本当は他人からはわからないですよね。やっぱり、恋愛は当事者にしかわからないものだし、そこに正しい答えはないんだと思う。


ーー恋愛に正解はないというのは、本作のテーマのひとつかもしれません。


青柳:ただ、自分が主体的にひとを好きになれるのは、それだけで素晴らしいことだと思いました。小風も片思いだけど、たぶん幸せなんだろうなって、演じていて思えましたから。この作品を見て、ひとを好きになるということがどういうことなのか、改めて考えてもらえたら嬉しいですね。(松田広宣)