2016年01月04日 08:31 弁護士ドットコム
家族の電気の使い方にも目を光らせ、節約レシピの研究を重ね、美容院に行くのは年に1度。主婦が家計のために日々、努力をしても、夫が同じような気持ちで家族と向き合っているとは限りません。
ある主婦は「夫の浮気で離婚が決まりました」と弁護士ドットコムの法律相談に投稿しました。「今、財産分与について話し合っているのですが、結婚後に作った『へそくり』も共有財産になってしまうのでしょうか?」とたずねました。
へそくりは、20数年の結婚で100万円まで貯まっています。「私が長年、欲しいものも買わず、コツコツと貯めたお金です」といい、浮気した夫に何も言わず「持ち逃げしたい」と考えているそうです。
でも、法的な問題はないのでしょうか? 原口 未緒弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. へそくりを持ち逃げしても問題ないが、後で清算が必要
正解を言う前に、財産分与とは何か? を整理してみましょう。
財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して得た財産を、離婚する際に分け合うことです。
夫婦の財産は、主に「特有財産」と「共有財産」に分けられます。「特有財産」とは、婚姻前から持っていた財産や、親などからの遺産分割で得た財産などです。これらは個人のものとされ、財産分与の対象にはなりません。
いっぽう、「共有財産」は、婚姻期間中に、夫婦で協力して得た財産です。具体的には、夫婦双方の名義の口座に入っている預貯金や、夫婦で協力して建てたマイホーム、車などが該当します。
また、婚姻期間中に、夫もしくは妻が働いて得た給料から個人的にした貯金についても、夫婦の共有財産です。
したがって、今回問題になっているへそくりも、夫婦の共有財産となります。
「共有財産なら、持ち逃げしてはマズいのでは?」と思いますよね。でも、共有財産は、夫のものでもあり妻のものでもある。つまり、夫婦双方が「共有者」です。へそくりの共有者の一人である妻が勝手に持ち逃げして使ってしまっても、問題ありません。
ただ、厳密に言うと、「後できちんと清算をするので、持ち逃げをしても問題がない」ということになります。
財産分与は、夫婦の共有財産を二分の一ずつ分けるのが原則です。へそくりを持ち逃げした人のほうが、二分の一の金額よりも多く持ち出していた場合には、その差額分を返さなければなりません。へそくりを持ち逃げしても問題ないですが、後でその分をきちんと清算しましょう、ということです。
ただ実際は、必ずしも清算が行われているわけではないようです。たとえば、妻が子供を連れて家を出て、別居して新生活を始めるなどの場合、何かと物入りなので、「持ち逃げ」は仕方のないことだと思います。こういうケースでは、夫も妻の事情を考慮して、むげに「返せ」とは言わないのが実情のようです。そのかわり、当面の間、養育費の支払いをなしにするなど、実質的には清算をしていると考えられるケースもあります。
もっとも今回の話は、相手がへそくりを発見するなどして、その存在を知っている場合を想定しています。現実には、へそくりを持っている方が最後までその存在を明かさず、持ち逃げしてしまうことが少なくないようですね。
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京護士会所属。ココロもケアする離婚弁護士。コーチング・カウンセリング・セラピーなどをもとに、調停・裁判をしないで円満離婚を実現する、『幸せになるための離婚』を提唱しています。
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13103/l_120986/