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『科捜研の女』なぜ長寿番組に? 科学捜査 × 高いドラマ性が織り成す新鮮なストーリー

2016年01月04日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『科捜研の女』公式サイト

 テレビ朝日系の「木曜ミステリー」枠で放映中の『科捜研の女』の正月スペシャルが、本日1月3日の21時より放送される。今期の放映で第15シリーズを迎えるこの長寿ドラマは、なぜいまも人気が衰えないのか。その面白さの謎に、今回はせまってみたい。


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 『科捜研の女』は、科学で犯罪を解決するサスペンスドラマだ。京都府警科学捜査研究所の研究員・榊マリコ(沢口靖子)が、仲間と協力しながら、事件現場に残された証拠を検証し、真実を解き明かすストーリーが毎回繰り広げられる。


 本作品の面白さとしてまず上げられるのは、毎回、科捜研で行われる鑑定や実験の数々だ。


 たとえば、今シーズンの第1話では、銃弾の線条痕(せんじょうこん)のゆがみ率を割り出す実験が行われる。殺人現場で発見された銃弾は極度にゆがんでおり、線条痕が鑑定できずにいた。そんなとき、現場で使われたのと同じタイプの拳銃が用いられた過去の発砲事件のデータを持ち込まれる。それを見たマリコは、銃弾のゆがみ率をデータと比較することを思いつき、科捜研は、事件と同じ状況で銃弾をつぶす実験を実地する。


 指紋鑑定や筆跡鑑定など、よく知られる鑑定もきちんと抑えている本作だが、それに加えて、最近は「こんな鑑定があるのか」「科学技術でこんなことまでわかるのか」と驚かされることが非常に多く、まさに科学捜査の面白さ、興味深さを味わえる作品となっている。


 そして、もう一つ上げられる『科捜研の女』の魅力、それは、登場するキャラクターたちと、その関係性である。


 沢口靖子の当たり役といわれる主人公の榊マリコ。初期は明るいキャラクターだったが、現在は、行動力がありつつも冷静でシリアスな女性となっている。そして、この主人公の変化とともに、作品がよりシャープな科学捜査ミステリーへ進化を遂げたように、筆者は感じている。


 また、マリコとともに事件に立ち向かう脇役も、味のある面々ばかりだ。


 まず、科捜研の所長・日野和正(斉藤暁)。人柄のよさゆえに、部下からぞんざいに扱われがちだが、ここぞという場面では研究員たちをきっちりまとめている。日野所長の「マリコくん」のセリフは、温かみとプロの緊張感が感じられ、いつ聞いても心地がよい。


 ほかの研究員たちも、マリコを冷静にサポートする中堅・宇佐見裕也(風間トオル)、やんちゃで明るいムードメーカー的存在の相馬涼(長田成哉)、言葉使いが独特でマイペースな“不思議ちゃん”だが、コンピュータ技術に人一倍長けた涌田亜美(山本ひかる)と、個性の違うメンバーがそろっている。ちなみに、最近のシリーズでは、若手の相馬と亜美が、漫才のようなやりとりでよく笑わせてくれる。


 医大の法医学教室の教授であり、遺体解剖を担当する風丘早月(若村麻由美)も、作品に欠かせないキャラクターだ。持ち前の明るさでマリコを支えるよき友人であり、また、科捜研を訪れる際は差し入れを欠かさず、お菓子を片手に彼女が現れる場面は、ドラマのお約束のシーンとなっている。


 忘れてはならないのが、京都府警捜査一課の刑事・土門薫(内藤剛志)だ。犯人逮捕に情熱を注ぐタフでプロフェッショナルな大人の男である土門。犯罪を許さない信念を徹底して貫く彼の姿は、本作の大きな軸の一つといっていい。決して揺らぐことのない土門の正義は、そのまま作品の正義となっている。


 事件を追及するマリコを助ける研究員たち、ときに行き詰まるマリコの力になる早月、そして、マリコとともに事件を解決する土門。彼らが絆やチームワークを発揮する姿もまた『科捜研の女』の醍醐味なのである。


 このマリコたちと真っ向から対決する好敵手が、今シーズンから登場した組織犯罪対策第三課の刑事・落合佐妃子(池上季実)だ。


 銃器や薬物の犯罪で輝かしい業績を上げてきた「銃器薬物のクイーン」である佐妃子。だが、その手法は強引で、ときには平気で同僚を欺き、犠牲にすることもある。第1話でも、捜査の手を暴力団に向けさせるため、偽造したデータを平然と科捜研に持ち込んだ。目的のために手段を選ばない佐妃子を、当然マリコと土門は受け入れない。この「祖対の死神」ともいわれる佐妃子に、マリコたちがどう立ち向かうのかが、今シーズンの見どころの一つとなっている。


 1999年から現在まで、シリーズが続いている『科捜研の女』。ミステリードラマとしての骨組みは、主人公・マリコが仲間と協力して事件を解決していく…というスタンダードなものだが、事件解決のキーとして「科学捜査」をテーマに据え、最先端の科学技術が駆使されることで、切れ味の鋭さや重厚感が失われない作りとなっている。科学技術のすごさとメンバーたちがチームワークを発揮するドラマ性が融合したこのバランスのよさが、長寿シリーズとして続いている秘訣なのではないだろうか。


 2016年1月3日に放映予定の『科捜研の女』正月スペシャルで、マリコと土門は危険ドラッグが絡む殺人事件を追い、落合佐妃子は薬物の密輸ルート摘発を狙う。捜査の過程で、どのような科学捜査が展開するのか? そして、マリコたちと佐妃子の対立の行方はいかに? 科捜研の研究員と刑事たちが繰り広げる白熱のサスペンスに、新春から目が離せない。(文=田下愛(たおり あい))