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小泉今日子と薬師丸ひろ子が共演 人気脚本家・木皿泉最新作『富士ファミリー』に期待すること

2016年01月04日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『富士ファミリー』公式サイト

 2015年11月、NHK新春スペシャルドラマ『富士ファミリー』の制作開始のニュースが発表された(放映は2016年1月2日21時~)。注目は、小泉今日子と薬師丸ひろ子のダブル主演だ。小泉今日子と薬師丸ひろ子と言えば、2013年に放映されたNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』での共演が記憶に新しい。


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 1978年映画『野生の証明』でデビューした薬師丸ひろ子、そして、1982年『私の16歳』で歌手としてデビューした小泉今日子。2人は1980年代アイドルの代表的存在となり、以来、互いに歌手として女優として功績を収め、その活躍はご存知のとおりだ。ほぼ同時期にデビューした2人だが、初共演はデビューから30年を経た『あまちゃん』だった。小泉は主人公・天野アキの母親であり、現在はアキの芸能事務所を営む天野春子を、薬師丸はアキが憧れる大女優・鈴鹿ひろ美を演じた。『あまちゃん』ファンでなくとも、2013年の紅白歌合戦にて『潮騒のメモリーズ』を歌う2人の姿を目にし、印象に残っている人も多いだろう。


 そして2人は今作『富士ファミリー』を手がけた脚本家・木皿泉作品をとおして、近年新たな魅力を打ち出したという共通点もある。


 木皿泉は、2003年にテレビドラマ『すいか』、2005年『野ブタ。をプロデュース』、2007年『セクシーボイスアンドロボ』、2010年『Q10』などを手がけた、和泉務と妻鹿年季子による夫婦共同脚本家だ。どこにでもある日常を舞台に、軽妙かつコミカルに、時折、SFや哲学的要素を散りばめながら展開していくストーリーにファンも多い。見終わったあとに不思議と残るノスタルジックな余韻も木皿作品の醍醐味のひとつだ。


 小泉は『すいか』で、自分の人生を変えようと、勤めていた信用金庫から3億円を横領して逃亡する、馬場万里子というストーリーの要となるキャラクターを演じた。これまで出演してきたドラマでは、どちらかというと「主演・小泉今日子」の要素が色濃かったものの、『すいか』ではごく普通のOL役として物語そのものに馴染みながら、女優としての存在感を打ち出したという印象が強い。


 一方、薬師丸は『Q10』で、主人公・深井平太とQ10という少女ロボットが通う高校に住み込んでいる工学部の大学教授・柳栗子を演じた。他人と変わった角度から物事を捉え、自由で柔軟な発想で周囲を巻き込んでいくという柳教授のキャラクターには、近年、等身大でありながら、その役柄さえも取り込み、新たな個性を打ち出し続ける薬師丸の姿が見事に重なっていた。


 木皿作品について、小泉は「『みんなが平和でありますように』と子どもの字で書いたような、不器用なメッセージが感じられる」といい、薬師丸は「潜在的に感じているようなことを、言葉に表してくださる」と、愛着がにじみ出たコメントを寄せている。木皿も2人を「時代を背負いながらも彼女たちは、古びることなく、今を表現できる稀有な女優」と評す。


 そんな2人の共演、人気脚本家の最新作ともあって、ドラマ『富士ファミリー』には注目が集まっているのだ。


 今作のテーマは、「家族」。富士山のふもとにある小さな街の、コンビニとは名ばかりの商店・富士ファミリーを舞台に、長女・鷹子(薬師丸ひろ子)、次女(故人)のナスミ(小泉今日子)、三女・月美(ミムラ)という美人三姉妹を中心に物語が繰り広げられる。


 長女・鷹子は、早くに両親を亡くし、仕事をもちながら店の手伝いをして家計を切り盛りしている。長女とは正反対に、自由奔放な性格の次女・ナスミは20代で東京に出て行き結婚。その後、夫・日出男(吉岡秀隆)と共に実家に帰ってくるも、6年前に病気で亡くなってしまう。三女・月美は面倒な店の経営から逃れるために要領よく早くに嫁いだものの、すでに夫婦間には溝が出来始めている。そんな「富士ファミリー」には、長女・鷹子と、笑子バアさん(片桐はいり)、ナスミの夫・日出男が暮らしている。そこに、住み込みのアルバイトカスミ(中村ゆりか)がやってきた。


 年の瀬せまったある日、突如、富士ファミリーは一家離散、閉店の危機に陥ってしまう。その時、笑子ばあさんの前に、ナスミの霊があらわれる。そして7つのバラバラの言葉が書かれた1枚のメモを託す。この言葉の謎を富士ファミリーの面々が追うことで大騒動が巻き起こるという展開だ。


 ドラマ『富士ファミリー』について小泉は、「撮影時に、家族に匹敵するような関係性を、誰かと築いていけたら老後が楽しいと思った」という感想をもち、薬師丸は、「血縁関係でなくとも、お互いに認め合えるひとの優しさやあたたかさがこの作品にも流れている」と評した。


 木皿はこの作品について「正月ドラマと聞いたとき、過去のものとなったホームドラマを今一度やってみたいと思った。家族がいない人でも家族のイメージがある。富士山のように家族もみんなの心のなかにある。他人同士でも家族になれる。偏見もない他人同士で家族をやる事のほうが、私にとっては書きやすかった」と語っている。


 笑って、泣ける、現代の家族像描いた人気脚本家と、2人の実力派女優を中心に味のある役者陣が織りなすホームドラマは、2016年のお正月、私たちに大切なものを思い出させてくれそうだ。(内藤裕子)