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ジャニーズの時代劇先駆者=東山紀之は、『信長燃ゆ』でどんな「織田信長」像を提示するのか

2016年01月04日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

勧修寺晴子【かじゅうじはれこ】(栗山千明)

 東山紀之が、1月2日放送の新春時代劇『信長燃ゆ』(テレビ東京)で、主人公の織田信長役を演じる。直木賞受賞作家・安部龍太郎の小説を原作とした同作は、本能寺の変の史実にフィクションを織り交ぜ、武家VS朝廷という新しい視点で、天下統一を志した信長の野望の真実に迫る歴史大作だ。


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 織田信長は戦国武将の中でも特に人気の高い偉人だ。その野心的で斬新な思想と、劇的な最期を迎える生き様は、ドラマや小説の題材としても秀でており、これまで様々な大物俳優が演じてきた。古くは、片岡千恵蔵や中村錦之助、市川雷蔵といった時代劇俳優の名優たちを始め、NHK大河ドラマだけでも『徳川家康』('83)の役所広司、『秀吉』('96)の渡哲也、『功名が辻』('06)の舘ひろし、『利家とまつ~加賀百万石物語~』('02)の反町隆史、『江~姫たちの戦国』('11)の豊川悦司、『信長 KING OF ZIPANG』('92)の緒形直人、『軍師官兵衛』('14)の江口洋介。他にも渡辺謙や鹿賀丈史、最近では小栗旬や、トヨタのCMで木村拓哉なども演じてきた。新春時代劇の枠でも、『織田信長』('94年)で高橋英樹が、『国盗り物語』('05年)では伊藤英明が務めている。その時代の顔とも言うべき一流の俳優が、満を持して演じるのが、織田信長という人物なのだ。


 今回、信長を演じる東山紀之の年齢は49歳。織田信長が亡くなったのが49歳なので、まさに運命とも言うべきタイミングでの配役といえよう。信長が数多くの新しきものを取り入れ時代を開拓していったように、東山はテレビ朝日のドラマ『新選組』('87年)において沖田総司役を演じ、ジャニーズ事務所のタレントとして初めて本格的な時代劇に進出、新たな道を開拓してきた俳優だ。


 東山は、『新選組』後に出演した『名奉行 遠山の金さん』シリーズで、時代劇の師匠となる松方弘樹と出逢い、その所作をすべてを教わり、萬屋錦之介や若山富三郎、里見浩太朗という名だたる名俳優たちの鞭撻も受けた。この交流が、東山の俳優人生において大きな財産となったことは想像に難くない。


 その後、東山は数々の時代劇に出演。中でも、『源氏物語』('91年)の光源氏役は橋田壽賀子ドラマだけあり、長台詞が多く難易度の高い脚本で、初めて逃げようとさえ思ったそうだが、結果として見事に演じきった。そして『琉球の風』('93年)で、ジャニーズで初めてNHK大河ドラマの主演を勝ち取るのである。俳優としての才覚が世間に認められた結果だ。現在、数々のジャニーズのタレントが大河ドラマで主役を張っているのは、東山の功績があってこそだろう。時代劇は視聴者以上にスタッフの目が厳しい世界というが、映画畑出身ではないアイドルが主役の座を得るまでには、相当な努力があったに違いない。いまや時代劇の中でも特に人気の高い『必殺仕事人シリーズ』と『大岡越前』の主演を任されている東山は、すでに一流の時代劇俳優といっても過言ではないだろう。


 数多くの時代劇を経験している東山だが、信長を演じるのはこれが初めてだ。ビジュアル的には申し分ないが、信長のイメージは野心的な部分が強いので、誠実でストイックな雰囲気を持つ東山がどう演じるのかが気になるところである。『信長燃ゆ』の山鹿プロデューサー曰く、「信長の絶対的なカリスマ性、スター性、残虐性を描いていますが、そこに東山さんが人間的な一面を入れていただいたことで、人物により深みが出まして、観る者の心に残る決定版となっています」とのことだ。また、今回は信長と対立する朝廷側の勧修寺晴子を栗山千明が演じ、ロミオとジュリエットのような恋愛劇も描かれるようで、東山にしかできない新たな信長像を見ることができそうだ。


 ジャニーズからは他に、森蘭丸役で中島裕翔(Hey! Say! JUMP)と、森坊丸役に神山智洋(ジャニーズWEST)がキャスティングされている。ふたりとも重要な役どころなので、偉大なる先輩との掛け合いも含めて期待したいところである。


 東山の時代劇俳優人生において、極点となりうる『信長燃ゆ』。時代劇ファンなら、これを見逃す手はないだろう。


(文=本 手)