2016年01月03日 10:21 弁護士ドットコム
性的マイノリティに関する専門家の研究チームの意識調査で、同性同士の結婚を認める「同性婚」に賛成する人が5割を超えた。
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報道によると、研究チームは、国立社会保障・人口問題研究所や大学の研究者らで構成。今年3月、全国の20代~70代の2600人にアンケートして、1259人から回答を得た。同性婚の賛否について、「賛成」「やや賛成」が合わせて51%で過半数を超えた。「反対」「やや反対」は合わせて41%だった。
東京都渋谷区など一部の自治体では、同性パートナーの証明書を発行しているところもあるが、国が定める「法律」の改正に向けた具体的な動きは出ていない。もし法律を改正して、日本でも同性婚を認めようとした場合、どんなハードルがあるのだろうか。家族の法律問題に詳しい高木由美子弁護士に聞いた。
「まず、最初に問題となりうるのは、日本国憲法です。日本国憲法24条1項は、『婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない』と規定しています。
ここの『両性の合意』や『夫婦が同等の権利』の部分から、日本国憲法は男女間での婚姻しか想定していないという考えをする人もいます。
しかしながら、日本国憲法の13条には幸福追求権が保障されており、そもそもの憲法の趣旨が少数派の人権保護にあることから考えると、憲法が同性婚を否定していると考えることはできません。日本国憲法については、改正することなく、同性婚が認められると考えます」
高木弁護士はこのように解説する。では、民法はどうだろうか。
「民法739条では『婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってその効力を生する』と、婚姻の方法を規定していますが、婚姻の当事者が同性か異性かについては、触れていません。
しかし、他の条文、たとえば、養親の夫婦共同縁組(817条)、夫婦の婚姻費用分担(760条)など、『夫婦』を前提とした条文が多数存在しています。また過去に、同性婚は婚姻の要件を定めた民法742条の『婚姻をする意思がないとき』にあたり無効である、とした家庭裁判所審判もあることから、民法は異性間の婚姻を前提としていると考えられます。ですから、『夫婦』ではなく『配偶者間』にするなどの改正が必要です」
戸籍法については、どのような改正が求められるのだろうか。
「戸籍法74条で、婚姻届に記載しなければならない事項として、『夫婦が称する氏』があり、異性間の婚姻を前提としているので、『婚姻当事者が称する氏』などに変更する必要があります。
これ以外にも、所得税の配偶者控除、相続税の配偶者控除、労災補償の遺族補償、厚生年金など、条文上は『配偶者』と書かれ、同性間・異性間を問わないように読めますが、解釈で、民法上の配偶者、つまり異性婚を前提としているので、同性婚が導入される場合は、これら全てについて、条文上、同性婚か異性婚を問わないことを明確にする必要があります。
たとえば、日本人と外国人が外国で同性婚をしていて、日本で婚姻生活を送る場合、現在、このような外国人配偶者は『特定活動』の在留資格で在留できる運用になっています。この点、もし、日本に同性婚が導入されたら、同性の配偶者は、『特定活動』の在留資格ではなく、異性間の婚姻と同じように、『日本人配偶者等』の在留資格を取得できることになるでしょう」
高木弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属。米国・カリフォルニア州弁護士
事務所名:さつき法律事務所
事務所URL:http://www.satsukilaw.com/