2016年01月03日 08:41 弁護士ドットコム
離婚や別居をする際、夫婦の間でトラブルが起こりやすいのが、子どもの問題です。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある男性からこんな相談が寄せられました。「妻と離婚前提で別居中です。先日、妻が連れて行った八歳の息子と久しぶりに過ごした時に、『ママよりパパと暮らしたい』と言われました。私が引き取ることができるのでしょうか?」
父と母のどちらが子どもと暮らすかを決める際、子ども本人の意思はどのくらい考慮されるのでしょうか。浮田美穂弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A.子ども本人の意思は判断材料の一つになる。
離婚をする時、「子どもをどちらが引き取るか」をめぐって、夫婦でもめることは少なくありません。
ご相談者のように、離婚を前提とした別居中に、子どもが父と母のどちらと暮らすかは、「子の監護者指定・引き渡しの審判・保全処分」を家庭裁判所に申し立てて決めることになります。「監護」とは簡単に言うと、「子育て」のこと。つまり、別居中、父と母のどちらが子どもを引き取って育てるべきか、裁判所に決めてもらうという審判です。
この手続きでは一般に家裁の調査官が、別居中の両親への聞き取りや、自宅を訪問して生活状況をチェックするなど、様々な調査を行います。家裁の調査官は、子の年齢と発達の程度に応じて、意思を考慮しなければならない、と定められています。
小学生以上であれば、調査官が家庭訪問をして調査する際に、子ども本人の意思を聞くことが多いと思います。どの程度考慮されるかはケースバイケースですが、判断材料の一つにはなるでしょう。
調査が行われる前に、審判を申し立てた方の親が家裁の調査官と話をする機会があります。息子さんは、「パパと一緒に暮らしたい」と言ったということですから、その時の息子さんの様子などを、事前に調査官に話しておくといいでしょう。調査官が息子さんの意思を聞き取る際に、色々な角度から話を聞き出してくれると思います。
妻が子どもを連れて別居してしまったけれど、父親である自分も子どもと暮らしたい、というケースは少なくありません。
ただ、子どもが幼い場合は、母親が監護者として優先されることが多いです。別居するまでの間、主に母親が世話をしていた家庭が多いためです。
しかし、父親が主として世話をしてきた場合や、母親の育児が不適切な場合、父親の生活状況や、面接交流についての考え方などから、監護するのが適切だと判断されれば、父親が監護者になれます。
もっとも、子どもがある程度の年齢に達している場合は、父母の事情よりも子の意思が占めるウェイトが大きくなります。
「子の監護者指定・引き渡しの審判」で父親が監護者と決まれば、親権を決める時にも、父親が親権者となる可能性が高いです。
【取材協力弁護士】
浮田 美穂(うきた・みほ)弁護士
2002年、弁護士登録。2010年、度金沢弁護士会副会長。2011年から、石川県子ども政策審議会児童福祉部会委員。著書に 「ママ弁護士の子どもを守る相談室」(2013年、一万年堂出版)。
事務所名:弁護士法人兼六法律事務所
事務所URL:http://kenroku.net/